SAPジャパン Talent Attractionチームによる本企画では、SAPでの仕事内容や印象深いエピソードなどを幅広くお届けします。活躍する社内メンバーの話から、SAPで働く魅力をお伝えできればと考えています。
第27回は、テクニカルクオリティマネージャー(TQM)として活躍されるお二人の対談企画です。インタビュイーは、髙木幸子さんと鈴木雄介さん。お仕事のやりがいや魅力、今後のTQMに求められる役割についてお聞きします。
SAPの窓口、リーダーを務める”TQM”
お仕事の役割を教えてください。
鈴木:テクニカルクオリティマネージャー(TQM)は、お客様のIT部門やプロジェクトの組織内に入り、SAPのフロントオフィスのリーダーを務めるお仕事です。
具体的には、お客様のニーズを聞いてサービス実行の計画を立て、その内容を実行し、サービス品質を担保し、向上させるための活動を指揮します。スーパーバイザーとして、システムの導入時だけではなく、アップグレードや運用改善のサポートも行います。
TQMとして一番重要なことは、お客様とSAPの間に相互信頼のある良好な協力関係を築いていくことです。ここが、単なるエンジニアとは違う部分です。
それがなぜ重要なのかというと、将来的にもSAPを使い続けていただき、お客様自身が改善を繰り返していくことで、お客様のビジネスを成長させていくことに繋がると考えているからです。
SAPの製品やサービスは、世の中を良くするためのものであると自負しています。これからも広く提供し続けたいですし、そのためにはSAPがお客様に選ばれ続ける存在であることが必要です。その土台となる信頼関係の構築は、何よりも重要と考えています。
シニアテクニカルクオリティマネージャー 鈴木雄介さん
髙木:TQMとして、私たちが目指しているお客様との関係性については鈴木さんと同意見です。補足をすると、お客様がTQMに対して求めることや期待することは、お客様によって異なります。
例えば、今私はアメリカのお客様と仕事をすることもありますが、日本のお客様とは期待値が全く異なります。したがって、TQMのアプローチは、お客様によって調整することが必要です。
ただし、全てをお客様に合わせれば良いということではありません。TQMが描く「本来あるべき姿」は、私たちの「芯」としてお客様にご理解いただきながら、フロントとして具体的なアクションやアドバイスに繋げられたらと考えています。
未来を見据えたアドバイスにより、視座を高めてもらう
TQMの仕事をする上で大事なことは何でしょうか?
髙木:今目の前で起きている問題だけでなく、将来的にお客様が取り組んでいきたいことや、進むべき方向性を考えることが大切です。私たちはその実現に向けて、アドバイザーとして一緒に歩むため手助けをしていきたいと思っています。
お客様は目の前の課題解決に時間を取られがちですが、TQMは全体を俯瞰し、長期的な視点でアドバイスをする必要があります。
鈴木:具体例で話すと、以前、あるシステムの仕様変更の際、お客様から「発注業務のコア部分にアドオンをしたい」とのご要望がありました。しかし、よくよく話を聞いてみると、その仕様変更でメリットを得られる会社は全世界70社の中、たったの1社だけだということがわかりました。
システムを変更したい理由を伺うと、「過去のシステムと同じようにしたいから」ということでした。システム稼働後は高頻度にバージョンアップを行う方針でしたので、この仕様変更によって標準機能に手を加えてしまうと、バージョンアップのたびに同機能のリグレッションテスト(変更により他所に不具合がないかを確認するテスト)をしなければならず、メンテナンスが余計に煩雑になってしまいます。
その仕様変更はほぼ実行が決まっていたため、伝えるべきか迷ったのですが、「長期目線で考えれば絶対に伝えるべき」と判断し、見直しをご提案しました。
お客様は、Go Live(システムの稼働スタート)を重視するため、短期的な目線になることがあります。ときには一歩引いて、「後々、負の技術資産になることは避けたほうが良いです」「改めて原点に戻って考えましょう」と、お客様が気づかれていない角度からお話するスタンスは非常に大切だと考えています。
髙木:「あのときは大変だったけど、今考えれば良かった」と思っていただけるアプローチが大切ですよね。
別の事例ですが、当初は社内においてシステム導入によるデジタル化への不満があったけれども、実際に取り組んでみたら領収書などの証憑も全部デジタル化でき、「紙がなければ、そのためだけに会社に行く必要もない。在宅の従業員に大変好評だった」との声をいただいたこともあります。
お客様自身も、「以前は良い仕組みだったとしても、ずっと良いとは限らない。時代に合わせて変えていきたいから、指摘してほしい」と考えられる方も多いようです。鈴木さんの事例ように、伝えるべきか迷うような場面でも、結果的には伝えることで「そういう意見を聞きたかった!」と、良い反応をいただけることも多いです。
お客様のマインドを高めるため、TQMだからできる効果的なアプローチ
お客様に「将来を見据えたあるべき姿」を理解して進めていただくためには、TQMとしてどのようなアプローチが求められますか?
鈴木:私は、なるべく数字を用いてお伝えするようにしています。「システムの変更は面倒くさい」と考えているうちは、数値での変化が見えていないことが多いのです。従って、その「面倒くさい」を可視化することが重要です。
さきほどの例で言うならば、「この仕様変更によって70社が影響を受け、バージョンアップの際にはこれだけ多くのテストをすることになります。逆に、この方法であれば1社にとっては大変かもしれないけれども、全体で見れば負担は少なくなります」という内容を、かかる時間や影響度を算出して数字で明確に比較していく。誰から見てもわかるデータを用いることで、訴求しやすくなります。
髙木:私の場合は、お客様が何かに取り組む際に、やらなければいけない理由を深く聞き、取り組むことによるメリット・デメリットを明確にしていきます。その過程で、鈴木さんのようにシンプルにわかりやすく伝えるために数字を用いることもあります。
それから、お客様の組織内で「誰と会話をするか」も重要です。長期的な視点で会話をすべき場面で、「今」にフォーカスしているプロジェクト担当者の方に、「10年後を一緒に考えてほしい」と訴えるのはなかなか難しいものです。
或いは、プロジェクトメンバーと業務オペレーションをするのは社内でも別チームであったり、システムのメンテナンスコストを気にする担当者とは異なることもあります。それでも、結局は上層部で組織が統合されていて同じマネージャーであることもあります。
従って、お客様の組織構造を理解する必要があります。それぞれの各担当者の関心事に合わせて検討材料や情報を提供してあげて、その方がジャッジしやすいように促していくことが大事だと思います。
プリンシパルテクニカルクオリティマネージャー 髙木幸子さん
鈴木:確かにそうですね。プロジェクトの中で、なかなか担当の方に動いていただけないこともあります。そういうときは、相手の組織の力学を理解して、意見を受入れてくれる別の方に情報を共有して進めていただくことも必要です。
もちろん、組織を横断することで不義理にならないように気を付けることは前提ですが、誰か一人のマインドが変わるのをずっと待っていてもプロジェクトはどんどん進んでしまいます。それなら、例えばプロジェクトのオーナーにも共有して、トップダウンで取り組んでもらうような働きかけも時には必要です。
髙木:大きなテーマやプロジェクトの全体像は、お客様の上層部と共有するために、4半期ごとに会議を設けさせていただくケースが多いです。現場レベルでなかなか意思決定できず、それでも誰かが決めて進めなければいけない場面においては、「現場でA案とB案で迷っているようなので、決めてください」と、意思決定者へ働きかけることはありますね。
SAPのフロントとして活躍のチャンスを作れる
TQMの仕事の魅力は何ですか?
鈴木:このポジションの魅力は、大きく2つあるかなと思っています。1つは、仕事の柔軟性が高いことです。
TQMは日々関わる人が多く、さまざまな情報を入手する機会に恵まれます。お客様の現場担当者からCIOレベルの人まで話す機会がありますし、「現場の人がこの部分で悩んでいるということは、こういうソリューションのニーズがあるのではないか」と、SAPの営業と一緒にディスカッションすることもあります。それがお客様の社内にインパクトを与えるような提案に繋げられる点は、魅力的だと思います。
TQMは、お客様の「かかりつけ医」のようなイメージです。事態が深刻になったら、SAP社内にいるエキスパートのような「専門医」を呼ぶわけです。私たちはかかりつけ医としては、「この人は胃が悪そうだな」など、日々のコミュニケーションの中から様々な兆候を把握する。そして、「胃もたれがします」となったら「この人を呼ぼう」と判断ができる。
だからこそ、お客様からリクエストされたことに応えるだけではなく、現状から予測される事態を見越してプロアクティブに動いていくことが大切です。ここができてくると、より仕事が面白いと感じられると思います。
髙木:仕事の柔軟性が高いという意味では、本当にボーダーレスですね。「ボーダーレス」というのは、良い意味で自分の仕事に制限が無く、何をしようと誰も止めない、ということです。今まで誰かからの指示を基に仕事をしていた人からすると、戸惑うことが多いかもしれませんが、誰かに「これ以上はやらなくて良いよ」とは言われないので、自由度は高いと思います。
自分がやりたいと思うことに関して、どこまでの準備をして、どこまでの勉強をするかもすべて自分次第。もちろん、「こうすると良いよ!」というガイドは周りから得られますが、自分がやってみたい方向性に対しての周囲の許容度は高いです。
鈴木:具体例を挙げると、あるときお客様が、「SAPは(金額が)高いね。次の検討は3年後だけど、どうしようかな…」という声をチラッと聞いたとき、私がもしエンジニアという立場に固執するのであれば自分の役割ではないので特に何もする必要はないですよね。
しかし、「なぜその提案が刺さっていないのか」を調べて、「価値訴求が弱いのか」「機能の一部分しか使えていないのか」、或いは「製品に間違った認識や期待値を持たれているのか」など、いろんな点を考慮して、「もっと価値を訴求できるようなワークショップをやりましょう」と企画をしたり、営業に「この部分をもう1度プレゼンしてもらったほうが良いですよ」と伝えたりすることもできます。
そういう働きかけをするか否かも、自分の意思次第。どちらかといえば、そういった自主的な動きはSAPでは奨励されるので、やりがいを感じますね。
多国籍、多文化に触れながらビジネスカルチャーを学べる
鈴木:この仕事の魅力のもう1つは、グローバルを感じられることです。今のSAPでは、日本のお客様であっても、実際にサービスを提供しているメンバーは日本のメンバーだけではないですし、最適なエキスパートが海外にいればその人をアサインすることも多々あります。世界中のいろんな社内外のメンバーと一緒に仕事ができて、異なる考え方に触れることができる点はすごく面白いなと思います。
髙木:私は現在8~9割をグローバルのメンバーと一緒に取り組んでいて、1日の中で英語を使う場面は多いです。
仕事の仕方や考え方の違いなど、海外のSAPに在籍して色々な国で仕事をしていたときも実感しましたし、今自分が日本を拠点にしていても、それは全く変わらないですね。
自分の強みを発揮して、アイデアの種を育てる。こらからも高まるTQMへの期待
今後のTQMは、どんな役割が求められていくと考えていますか?
鈴木:プロジェクトは多種多様なので、これからはお客様の状況を加味した上で、自分の得意なことを生かして自由に動き、お客様の信頼を勝ち取っていくことがより重要になっていくと思います。
例えば髙木さんの場合は英語を使っていろんな人と最新のグローバルの事例を提供したり、私の場合は少し営業に近い動きも入れてバリューを発揮したり。
前提としてTQMのやるべきことを果たしながらも、自分の得意なこととの掛け算をして、アディショナルな価値を発揮していくことが求められていくと思います。良い結果が伴うのであれば、いろんなやり方があって良いと考えています。
髙木:お客様には、「良いね」とばかり言うのではなく、違うと思ったら「それは違います」と伝えられる関係性が大事だと思います。嫌われる可能性があったとしても、心からそう思うのであれば、伝えることが一番の優しさだと思うからです。
もちろん良好な関係構築は必須ですが、大事なことや辛いことも伝えられることが本当に良好な関係だと思います。
また、お客様が会社として進んできたい将来の方向性を示されたときに、「こういうアイデアもありますよ!」と応援できる関係になれたらと思っています。目の前の進行中のプロジェクトだけではなく、プラスアルファでその先に目指す道に関してインスパイアさせることができたり、寄り添ってあげることができたら、すごく素敵な関係になれると思います。
鈴木:プロジェクトは大変だったり辛いことが多いかもしれませんが、将来的には「仕事をしていて良かった」と思えて、周りの人のモチベーションを高めることができたら良いなと思っています。これからも仕事を通して、メンバーと一緒にお互いに楽しみを見出していきたいです。
髙木:これから10年の間にも、どんどんITの最新トピックは変わっていくと思います。そんな中でも、常に先を思い描いて仕事をしていくことを今後も継続していきたいです。
10年後には、今お客様と一緒に取り組んでいることが、将来「あのとき頑張って良かった!」と感じていただけるようになれたらと思いながら、日々の仕事に楽しく取り組もうと思っています。
お二人の仕事への熱い想いや、TQMの仕事の魅力がよく理解できました。
今後もSAPのフロントラインとして発揮できる強みを生かして、グローバルに活躍されることを期待しています。対談企画にご協力いただき、ありがとうございました!
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■前回の記事はこちらから:LifeAtSAPJapan vol.26 PM対談企画