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SAPジャパン Talent Attractionチームによる本企画では、SAPでの仕事内容や印象深いエピソードなどを幅広くお届けします。活躍する社内メンバーの話から、SAPで働く魅力をお伝えできればと考えています。

第28回のインタビュイーは、クラウドサクセスサービス事業本部イノベーションサービスチームリードの小栗俊太郎さん。AIを活用したSAPとしての支援事例や、業務外でのご活躍の様子についてお聞きします。

SAPの新しいソリューションを形にしていくチーム

今のポジションのミッションや、ソリューション事例を教えてください。

「私の部署では、これからマーケットに出ていく新しいソリューションの導入コンサルティングを行っており、私はSAPの最上位サポートであるSAP MaxAttention®で提供しているイノベーションサービスのチームリードを務めています。

イノベーションサービスの役割としては、二つあります。一つは、AIや機械学習を活用したSAPの新しいソリューションについてお客様にご説明し、検証や評価、本番稼働の支援をすることです。

もう一つは、お客様が既に持っている『こういうビジネス課題を解決したい』というアイデアについてデザインシンキングを通じて具現化し、『SAPではこういうアーキテクチャで実現できますよ』と、アーキテクチャデザインとプロトタイプを構築し、本稼働への計画を含めてご提案することです」

クラウドサクセスサービス事業本部イノベーションサービスチームリード 小栗俊太郎さん

 

AIを使えば、基幹業務が大幅に効率化できる

「AIを活用したSAP S/4HANA®の組込み型のソリューションの事例として、大手総合商社のお客様で、海外での取引に関する入金消込に係る売掛金管理の作業を効率化した事例があります。

入金消込とは取引先からの入金情報を確認し、対象となる売掛金を消し込む作業です。もともと売掛金消込のルールベースの処理はSAPの標準機能としてあったものの、自動で処理できる対象には限界がありました。

SAPでは、標準機能では自動で消込みができなかった取引をAIで処理する仕組みがあり、こちらを導入する支援をしました。AIの力を使うと、自動化により作業効率化がより一層進みます。

こちらの事例では手作業で行っていた作業全体の8~9割の自動化が可能となり、この仕組みをグローバルに展開して導入していただくことになりました」

ビックデータをAIに学習させ、渋滞予測をシステム化

「特殊なケースですが、公共サービスのお客様での面白い事例があります。高速道路には2キロごとにセンサーが設置され、『時間別車種別」の『交通量」や『速度」などの情報を管理するデータが存在します。このデータを基に交通渋滞を予測するシステムを構築しました。

大量のデータをAIで学習させて『この区間は渋滞が発生する可能性がある』とあらかじめ予測するシステムです。もともとは、完全に属人化されたノウハウでしたが、システム化し、結果的には自動化されてマニュアル作業と同程度の精度へ高めることができました

基幹業務を支えるSAPだからこそ、ビックデータ活用のソリューションに強みを発揮できる

「公共サービスの渋滞予測をお手伝いした事例では、裏ではSAP S4/HANAという基幹業務に利用されているSAP HANA®というインメモリデータベースに紐づく、機械学習ライブラリを使って実装した背景があります。

SAPが機械学習のライブラリによってアルゴリズムを提供していることはお客様にとってもメリットがあります。世の中にはオープンソースで提供されているライブラリもありますが、メンテナンスや製品対応保証の面では欠けるため、ビジネスで長く活用するには製品サポートのある堅牢な仕組みを使ったほうが良いと考えています。

またSAPの基幹システムを土台としながら、派生する業務プロセスの部分にデータの連携性を生み出せるところが、SAPの大きな強みです」

AIを活用した事例は興味深いですね!そもそも小栗さんがSAPに転職を決めた背景を教えてください。

自分が作るシステムをもっと広く役立てたい。グローバルに展開するSAPの魅力

「もともとは日本のソフトウェア会社に所属していて、警視庁や警察庁等のシステムをスクラッチで作っていました。ですが、『毎回ゼロから作るよりも、パッケージで効率的に展開するほうが良いのでは』と思ったことが転職を考えたきっかけです。

確かに、一から要件を聞いてスクラッチでシステムをつくることにもメリットはあります。公共システムなどは業務内容が特殊ですし、業務に合わせたオーダーメイドのシステムを作っていくことは重要だと思います。ただ、一度作ったシステムは他には転用が難しいケースが多いので、正直『もったいないな』と感じていました。

その点、SAPは世界標準の業務に合わせたソフトウェアを開発しているだけでなく、それをグローバルに展開している点にも魅力を感じました」

スタートアップで技術を試し、SAPでのミッションとの相乗効果を生み出す

「2007年に入社し、SAPのカルチャーとして感じるのは、皆で協力する文化が非常に色濃いところ。そして、自分のやりたいことを実現できる社風があるところです。

 

本業以外でやりたいことができた際、当時の会長は親身に相談に乗ってくれて、オフィシャルに兼業申請を認めてくれました。個人がやりたい事を応援してくれる文化があることに驚きましたし、当時の日本の企業文化から考えると難しそうなことも、皆さんが支えてくれる風土があるのは非常に魅力的だと思います。

 

そして2018年に兼業でスタートアップの事業を始めました。当時、AIや機械学習の技術をBtoCのアプリケーション上でも試してみたいと考えたのが発端です。

 

当時のSAPのメンバーと二人で共同創業し、AIでペットの犬とチャットボットで会話できるワンちゃんのお散歩アプリをリリースしました。いまのChatGPTのような高度なものではなく、少しライトなものを作り、ペットの犬と疑似的な会話が楽しめるようにしました。

 

事業のマネタイズという観点では、アプリ上で課金すると機能が追加されるサブスクリプション機能を実装して導入しました。当時SAPもクラウドへの移行が進んでおり、サービスをサブスクリプションで提供するSaaS企業として事業展開しようとしていたので、BtoCの世界でのサブスクリプションを試してみたいと思ったのです。ユーザーから様々な反応が得られて、勉強になりましたし、面白かったですね」

 

行政の立法業務でAIが活躍!テキストに基づく高度な検索結果を出すには

「スタートアップを手掛けた際のご縁で、たまたま総務省行政管理局の方から『技術支援をしてくれないか』という話があり、技術顧問という立場で支援させていただくことになりました。

行政では誰でも法律を検索できるというe-Gov法令検索という仕組みを展開しているのですが、その裏にある各省の立法業務を支援する仕組みである法制執務業務支援システム(e-LAWS)のお手伝いをしています。

立法業務自体、一般の方は馴染みがない分野だと思いますが、この世界では一つ一つの言葉をすごく重視します。揺らぎがない文言にしなければ違った解釈をされる可能性があるため、意図した通りに捉えられるように具体的に条文の文言を詰めていく段階では、既存の法令において類似する言い回しである『用例』を調べる作業があり、こちらを元に法制局が厳しく審査をするのです。

そこで、立法業務において過去に施行された法令からどのように表現されているかを検索して抽出できるように、検索システムにAIの要素を取り入れ、類似性検索の仕組みを使って運用することになりました。この仕組みを構築するため、計画から技術検証、および構築のご支援をしました。

似たような類似性検索の仕組みは、SAPでもSAP HANAデータベースの新たなベクトル検索のソリューションとして展開しているので、技術顧問としての経験は、SAPの業務でも非常に良い影響を得ています

本業でも業務外でも、AI技術のエキスパートとして大活躍の小栗さん。今後AIを取り巻く世界はどのように進化していくと思いますか?

AI技術進化の流れは不可逆。SAPがエコシステムを作り、この世界での連携を深めていく

AI技術自体は、世の中のトレンドであり、ニュースに取り上げられる頻度はどんどん高まり、技術進化も著しい。この流れ自体は完全に不可逆であり、AIの無い時代には戻らないし、確実に進んでいく未来だと思っています。

どこまで行き着くのかというのはまだわかりませんが、今のスピード感を見ていると、非常に著しく進化していくことになるので、世の中の様々なことが変わっていく可能性は非常に高いと思っています。

進化した未来が訪れたときに、いまはAI技術のコアとなるエンジンそのものにフォーカスされていますが、それを『どのように活用していくのか』が主眼となります。そして、より一層価値の高いデータにアクセスできるAIが求められていくと思います。それはまさにSAPが取り組もうとしていることであり、私も興味を持って着目していることです。

ビジネスのデータは全部AIが読み込み、仕事の大半をAIが処理してくれる世界…。これは夢物語ではなく、きっと訪れると思います。今後もこの変革に向けた支援をしていきたいです。

SAPの立場として興味深いのは、外資系大手のIT企業のみならず、生成AIのスタートアップ企業とも手を組んでいて、SAP自体がエコシステムを提供していることです。

生成AIを提供している企業も自身のAIが活用されるプラットフォームを探しているため、『SAPというプラットフォームの中で、生成AI技術をどのように使って、どのような価値を提供できるか』を一緒になって模索しています。従って、生成AIを提供している企業とは、うまく連携しながら、最終的には一緒に進化していくことができるのではないかと考えています

最新のAI技術を駆使したシステムを世界に輩出していきたい

「私自身は技術全般に興味があり、それを形にして実現化し、世の中に価値を残せることにモチベーションを感じますし、楽しみを見出しています。相手が企業でも、BtoCでも、行政であっても、これからも伴走型でお客様と一緒に価値を作り上げていきたいと思っています。

それが成功体験として積み重り、グローバルを含め、どこか他の場所でも役に立つような良い影響を波及させられるような仕事ができる人になりたいと考えています。同じマインドを持つ方がチームに入ってくれて、一緒に仕事ができたら嬉しいです」

変化が著しい技術革新の最前線で、多くのクライアントをリードする小栗さん。これからも世の中のたくさんの課題をAI技術を活用しながら解決に導いてくれることを期待しています。

 

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■前回の記事はこちらから:LifeAtSAPJapan vol.27 TQM対談企画