中期変革プログラム「Japan2026」 における4カテゴリーにフォーカス Vol.2 「Customer Success」―お客様の成功を、ずっと

フィーチャー

SAPジャパンは2023年、中期変革プログラム「Japan2026」を始動。2026年のゴールであるNo.1クラウドカンパニーを目指す上で欠かせない3つの成功「Customer Success(顧客)」「People Success(人)」 「Society Success(社会)」と、SAPジャパンの「Growth(成長)」という計4カテゴリーを設け、カテゴリーごとのメンバーのボトムアップでの変革を推進している。
今回は「Customer Success」。クラウド時代における顧客との持続的かつ長期的なパートナーシップを築くためのアプローチについて話を伺った。

「Customer Success」では、日本企業の国際競争力強化を図るべく、戦略的施策の展開を行う3つのフォーカスチームを設定

 

<取材対象者>

佐野 太郎…戦略顧客事業本部 / Strategic Customer Program 常務執行役員エグゼクティブカスタマーオフィサー兼 戦略顧客事業担当

佐々木 陽光…カスタマーサービス&デリバリー事業本部 エンタープライズカスタマーサクセス本部 部長

長谷川 直美…カスタマーサービス&デリバリー事業本部 エンタープライズカスタマーサクセス本部 部長

小泉 和久…カスタマーサービス&デリバリー事業本部 エンタープライズカスタマーサクセス本部長

 

―― SAP Japan 2026におけるCustomer Successの位置づけと目指すものについて教えてください。

佐野: Customer Successでは「お客様の成功を、ずっと」というビジョンを掲げています。“ずっと”という言葉には、お客様との関係性が一時的なものではなく、持続的かつ長期的なパートナーシップとして捉え、信頼関係を構築・醸成していくというというメッセージが込められています。
このビジョン策定の背景として、国内の顧客サービスの現状に対する課題意識があげられます。例えば、お客様満足度の指標であるNPS(ネットプロモータースコア)、こちらは取り組むべき事項として認識しており、このスコアを2026年にはプラス5まで改善することを目標に掲げています。

―― NSPは文化や国民性が反映されやすい指標で、日本人や日本企業の特性としてポジティブな評価を出すことへの控えめな姿勢があるともいわれており、「+5」はなかなか高いハードルだと感じますが…。

佐野: その通りで、例えると日本のプロ野球の二軍でくすぶっているような選手があと2年後にはでメジャーで大活躍する、くらいの難易度とも表現できるかもしれません(笑)。
とはいえ、これを我々には到底無理だ、成し遂げられない、諦めようとは思いません。実現させるため、私たちは3つのフォーカスチームを立ち上げました。1つ目がOutcome Success Plan(以下OSP)、2つ目がClean Core、そして3つ目がMid-term Engagementです。

チームの役割については各FTリーダーから説明しますが、2024年は準備期間として、チーム体制の構築とアクションプランの策定に注力しました。2025年からは具体的な成果を出していく段階に入ります。各リーダーが高い意識を持って取り組んでおり、徐々に成果も見え始めています。
特に心強いのは、この活動が単なるプロジェクトではなく、SAPジャパン全体の組織全体のトランスフォーメーションを加速させ、新たな企業価値の創造につながっていることです。社員の参画も増えており、新しい視点や発想も加わることで、より良い変革が進むことを期待しています。

 

―― 各フォーカスチームの2024年の活動と実績について、具体的にお聞かせください。まず、OSPチームからお願いします。

佐々木: 我々はお客様のビジネスゴールを理解し、それに対してSAPとしてどのような支援ができるかを、お客様と合意の上で進めていくチームです。単なるシステム導入ではなく、お客様のビジネス成功に焦点を当てた長期的な取り組みです。

2024年は、OSPの「型」の確立に注力しました。これは、全てのCSPが一定の品質でサービスを提供できるようにするためです。具体的には、お客様のライフサイクルに応じた3段階のOSPを策定しました。プロジェクト開始時、進行中、稼働後といった各段階で、何をどのように提供するかを明確化しています。

また、プロジェクトの価値実現に焦点を当てた高度な「型」も開発しました。
例えば、人事部門向けには、人材のリスキリングや能力管理といった具体的な業務課題に対して、SAPのソリューションがどのように貢献できるかを示すテンプレートを作成しています。
具体的な成果としては、年末には、CSPコミュニティの活動発表会を開催し、他部門のメンバーを含む50名以上の参加がありました。この場では、OSPの実践例や成功事例を共有し、活発な議論が行われました。特に、お客様のビジネス価値をどのように可視化し、測定していくかという点で、多くの知見が共有された手ごたえを感じています。

 

――では次に、Clean Coreチームの2024年の活動と成果について、具体的にお聞かせください。

長谷川: Clean Coreは、SAPが提唱しているERPシステムの戦略で、お客様がクラウドの最大のメリットを享受できるようシステムをシンプルに保つという考え方です。従来、日本企業は独自のカスタマイズを多用する傾向がありました。カスタマイズは短期的には業務にフィットする一方で、システムの進化や最新テクノロジーの導入を妨げる要因となっています。この点において、社内での認識・理解を統一させながらパートナー企業へ発信・啓蒙していくアクションは欠かせないと感じ、積極的にイベント展開をしました。

2024年は、Business as UsualでのClean Core推進がメインとなりました。具体的な活動としては、パートナー向けに「RISE with SAP Methodology + Clean Core」と「TechEd Clean Coreセッション」を開催し、59社・256名という多くの参加をいただきました。このセッションでは、Clean Coreの考え方だけでなく、実際の導入方法や、お客様の成功事例なども共有しました。

グローバルとの連携強化にも取り組みました。
SAP Global Board & ExecutiveであるCS&DのThomas Saueressig氏やAugust SPINELLI氏との協働により、グローバルのベストプラクティスを日本市場に適応させる取り組みを進めています。
また、「CIOラウンドテーブル@SAP Select」や「パートナーラウンドテーブル」を開催し、経営層との直接的な対話も実現しています。ここでは、Clean Coreがビジネスにもたらす価値、特にシステムの進化や保守性の向上、そして将来の拡張性について、活発な議論が行われました。
さらに、グローバルで展開されているClean Core戦略やRISE with SAP Methodologの日本での展開方法について、パートナー企業との連携も強化しています。特に、日本企業特有の課題に対する解決アプローチを、パートナー企業と共に検討しています。

 

――では次にMid-term Engagementチームの小泉さんお願いします。

小泉: Mid-term Engagementチームが目指しているのは、SAPジャパンとお客様との関係性の本質的な変革です。従来のSAPはプロダクトアウト型で、ライセンス販売や導入支援が終わると顧客との関係が希薄になりがちでした。しかし、クラウド時代においては、システムは常に進化し続けます。新しい機能やAI技術の活用など、お客様のビジネス価値を継続的に実現していく必要があります。

2024年は、このパートナーシップモデルの抜本的な変革に向けた基盤構築に注力しました。特に重視したのが、お客様の事業課題に対する本質的な理解と解決策の提示です。例えば人事領域においては、タレントマネジメントやパフォーマンス評価といった経営課題に対して、SAPソリューションによる価値創出プロセスを具体化したリファレンスモデルを確立しました。また、パートナー企業とのエコシステムも再構築を進めています。従来型の「システム導入完了型」のビジネスモデルから、お客様のビジネス価値の継続的な向上をサポートし、その成果に基づく新たな収益モデルへの転換を推進しています。

 

―― 各チームにおける2025年の展望をお聞かせください。

佐々木: OSPチームの2025年の最大の目標は、全社的な展開です。現在はCSPが中心となって活動していますが、営業、コンサルティング、サポートなど、すべての部門がOSPの考え方を理解し、実践できるようにしていきたいと考えています。
そのために、各事業領域(LoB)別のOSPテンプレートを作成していきます。例えば、ERPチーム向け、CXチーム向けなど、それぞれの特性に応じたテンプレートを用意することで、より実践的な活用を促進します。
また、OSPを活用した成功事例を積極的に創出し、リファレンスカスタマーとして市場に発信していく計画です。お客様自身が価値を実感し、その声を発信していただくことで、OSPの有効性をより説得力のある形で示していきたいと考えています。

長谷川: Clean Coreが真価を発揮するには、継続的な啓発と実践が不可欠です。2025年は四半期に1回程度の頻度で「CIOラウンドテーブル」や「パートナーラウンドテーブル」を開催し、より多くのステークホルダーとの対話を実現していきます。
特に注力したいのは、具体的な成功事例の創出です。すでにいくつかの企業でClean Coreの導入を進めていますが、2025年はこれらのプロジェクトを確実に成功に導き、その効果を市場に示していきたいと考えています。
また、グローバルとの連携もさらに強化する必要があると感じているため、日本市場での実践から得られた知見をグローバルに発信し、逆にグローバルのベストプラクティスを日本市場に適用するという双方向の取り組みを進めていきます。

小泉: 2025年は、パートナー企業のビジネスモデル変革を本格的に支援し、継続的な価値創造の実現を目指します。具体的には、新たなパートナーエンゲージメントモデルを確立し、お客様との長期的な関係構築を通じた収益モデルへの転換を推進したいと考えています。
また、業界・業務領域ごとのカスタマーコミュニティの形成も強化していきます。要は、共通の経営課題を持つお客様同士が知見やベストプラクティスを共有し、相互に学び合える場の構築です。既存のカスタマーイベントでも、参加企業間の対話から具体的な価値創出につながっていますから、これをさらに発展させていきたいですね。

佐野: OSPチーム、Clean Coreチーム、Mid-term Engagementチームの連携も深めていきます。Mid-term Engagementチームが掲げるお客様との持続的な関係構築においてOSPは重要な役割を果たし、Clean Coreの考え方はシステムの継続的な進化に不可欠だからです。

 

―― 最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。

佐々木: 我々の道のりはまだ半ばですが、この1年で確実に前進していることを実感しています。この変革は一部の担当者だけでは成し遂げられません。社員の皆様一人ひとりがお客様の成功に向けて何ができるかを考え、行動に移していただきたいと思います。

長谷川: クラウド時代において、システムをシンプルにすることは避けて通れない課題です。かつ、これは単なる技術的な要件ではなく、お客様のビジネスの持続的な成長を支える基盤づくりだともいえます。この考え方を社内外に広めていくために、皆様のご協力をお願いいたします。

小泉: お客様から「SAPと一緒に仕事ができて良かった!」という言葉をいただくこと。これが私たちの最大の喜びです。短期的な成果も大切ですが、それ以上に、お客様と共に成長できる関係づくりを目指したい。そのためには、ともすると従来の仕事の進め方を見直す必要があるかもしれません。その変化を恐れずポジティブに受け止め、一緒にチャレンジしていきましょう。

佐野: 日本企業の競争力向上。これが私たちの最終的なゴールです。それは営業、コンサルタント、サポート、すべての部門が関わり、オールSAPジャパンで向き合うべき取り組みです。一人ひとりが一歩を踏み出し、お客様に最善の提案、提供をする。それが結果として、お客様の成功につながり、日本企業の競争力向上につながっていくのです。
そして、この変革を確実に成功させるためには、若い世代の力が必要不可欠です。私含めFTリーダーは経験豊富なミドル世代が中心ですが(笑)、デジタル時代に求められる新しい発想や視点を持った若手の皆さんの存在が欠かせません。日本のお客様に、世界で最高のサービスを提供できる組織になりたいーー。この志に共感していただける方、ぜひ一緒にこの変革を進めていきましょう!参画を心待ちにしています。