SAPとCohere社、信頼性とスケーラビリティを兼ね備えたエンタープライズ向け生成AIを提供へ

フィーチャー

(本記事は、5月20日に本社で掲載されたものです)

生成AIは、業務の進め方、意思決定の方法、価値創出のあり方を根本から変革し、企業を再定義しつつあります。しかし、企業が試行段階を終え本格導入を進める中で、リスクや責任も増しています。企業への導入には、強力なモデル以上のもの、つまり、信頼性、スケーラビリティ、実用性が不可欠です。

SAPは、セキュリティとエンタープライズ対応に優れたAIリーダーであるCohere社とのパートナーシップ拡大を発表しました。

両社は、Cohere社の強力な生成モデルおよび高度な検索モデルを、まずはRerankモデルからSAPエコシステムに導入し、さらに、CommandEmbedといったモデルの評価へと拡張することで、製品スイートを強化し、エージェント型AIエクスペリエンスを支える重要な役割を果たしていく計画です。

これらのモデルは、SAPの他の主要なAIモデルや、SAP AI Core内の生成AIハブにおけるサードパーティ製AIモデルと並んで提供される予定です。これにより、お客様は、自社のビジネスニーズに合ったAIを活用したソリューションを構築するための選択肢がさらに広がります。

SAP の信頼に応える AI モデルポートフォリオの拡大

SAP Business AIは「信頼」を基盤としています。お客様は、データプライバシーを尊重し、業務ワークフローに適合し、業界の文脈と複雑性を理解する AI を期待しています。Cohere 社のセキュリティ、効率性、エンタープライズ対応への注力は、SAPのビジネス AI へのアプローチや生成 AI ハブと完全に一致しています。

Cohere Command モデルは、複雑なビジネスタスク向けに最適化された軽量で高性能な言語モデルで、エージェント型ワークフローや多言語対応機能をサポートします。EmbedおよびRerankモデルは、強力なエンタープライズ検索および情報検索機能を提供し、構造化データと非構造化データの両方を横断した正確で文脈に即したRAG(検索拡張生成)パイプラインの構築を支援します。

Cohere社のモデルは、エンタープライズのプライバシー要件や計算リソースの制約を尊重しながら、本番環境での運用に対応できるよう設計されています。また、Cohere 社はSAP と同様にプライバシーを最優先した設計にコミットしているため、これららの機能は金融、医療、公共部門といった最も規制の厳しい業界にも対応できるよう構築されています。

SAPCohere 社の推論モデルのローンチパートナー 

今回のパートナーシップの一環として、SAP は、Cohere社 の新たな推論モデル(エージェン型ユースケースを強化するために設計された高効率モデル)を最初に提供するパートナーの一社となる予定です。

私たちはここに非常に大きな可能性を見出しています。SAPが目指す「コラボレーション型AIエージェント」のビジョン――つまり、複数のシステムをまたいで複雑な多段階のタスクを自動化できるAI――を実現するには、単なるスケーラビリティだけでなく、「推論力」が求められます。例えば、コンサルタントによるシステム設定の支援や、カスタマーサービスによるシステム横断の課題解決をする場合、この次世代の AI には、推論、計画、そして安全に実行できるモデルが必要です。そして Cohere の推論モデルは、まさにこの目的に適したモデルなのです。


SAP とパートナーシップを締結し、当社のセキュリティを最優先にした最新モデルとソリューションを SAP の顧客企業に提供できることを嬉しく思います。特に、SAP が当社の次期「推論モデル」を最初に提供する最初のパートナーの一社となることに期待しています。SAP と Cohere は、実用的な AI イノベーションに対する共通のビジョンを共有しており、今回の協業は、グローバル企業に新たな効率化と成長をもたらす重要なマイルストーンとなります。

マーティン・コン(Martin Kon)氏、Cohere社プレジデント兼 最高執行責任者(COO)

業界横断での実用的なAI活用を推進

この協業により、SAPのお客様はCohere社のモデルを活用して、業界を問わず差し迫ったビジネス課題の解決に取り組むことができるようになります。例えば:

  • エージェント型タスク自動化:企業内のツールやシステムを横断してアクションを実行できるAIアシスタントを実現
  • 多言語対応のRAGアプリケーション:グローバルなポリシーマニュアル、コンプライアンス文書、社内ナレッジベースから情報検索・ランク付け・要約
  • 機密性に配慮した文書解析: 財務開示資料、M&Aレポート、技術マニュアル、医療画像などの長大で構造化されたマルチモーダルファイルを理解・処理
  • コンテキスト認識型エンタープライズ検索:メール、表、契約書などの非構造化コンテンツに対する検索精度を向上

SAPの生成AIハブを通じて、お客様はこれらのモデルに簡単にアクセスし、テストし、本番環境でシステムを拡張することができるようになります。

妥協のない選択肢の拡大

Cohere社とのパートナーシップにより、SAPはオープンで安全、かつビジネスに対応可能なAI機能のエコシステムをさらに拡充しています。お客様は自社のユースケースに最適なモデルを選択できると同時に、SAPの品質、信頼性、コンプライアンス基準に準拠しているという安心感を得ることができます。

SAPとCohere社は協力して、ナレッジアシスタントの構築、業務プロセスの自動化、あるいは新たなインテリジェントサービスの提供など、企業が生成AIを安心して活用できる環境を実現していきます。

SAPのエンタープライズ対応AIへの取り組みの詳細については、sap.com/aiをご覧ください。


ウォルター・サン(Walter Sun)はSAPのAI部門のシニアバイスプレジデント兼責任者です。