SAPジャパン Talent Discoveryチームによる本企画では、SAPでの仕事内容や印象深いエピソードなどを幅広くお届けします。活躍する社内メンバーの話から、SAPで働く魅力をお伝えできればと考えています。
第34回のインタビュイーは、Adoption Services Center – Public Cloud ERP担当、ビジネスプロセスコンサルタントの武笠衛(むかさ まもる)さん。チームのミッションやお仕事の魅力を伺います。
SAPのコンサルタントの組織、武笠さんが属するチームの役割を教えてください。
クラウドカンパニーを目指し、牽引するスペシャリスト
「SAPは現在『クラウドファースト』の戦略を掲げ、新製品開発やお客様への提案においてクラウドを最優先し、積極的な投資を行っています。私たちPublic Cloud ERPの導入支援を担う部門はAdoption Services Centerに所属しており、その方針をリードする、社内で最も注力されているチームのひとつです。
※Adoption Service Centerのインタビューはこちらから
SAPのコンサルティング部門は、大きく分けてSAPジャパンに属するチームと、グローバルに属するチームがあります。
私たちPublic Cloud ERPチームは、アジアパシフィック地域に属するグローバル組織で、上司はシンガポールやオーストラリアに在籍していますいます。特徴としては、私たちが扱う製品はSAP S/4HANA Cloud Public Editionのみ、というパブリッククラウド専門の部隊であるということです。他にも、SAP Aribaに特化したチームや、SAP Fieldglass専門のチームなど、製品ごとに編成された専門チームがあります」
武笠衛(むかさ まもる)さん Adoption Services Centre – Public Cloud ERP – APJ Business process consultant, Principal
クラウドの世界の基本思想 ― Fit to Standard
「パブリッククラウド製品はSaaS(Software as a Service)型で提供され、オンプレミス型のように一からシステムを構築するのではなく、あらかじめ完成されたシステムをサービスとしてお客様に提供する前提に立っています。
SAPでは、ソフトウェアを実際に導入する際に必要な意思決定の内容や順序をガイドラインとしてまとめた『Activate』という方法論を製品ごとに定義していますが、パブリッククラウド製品の『Activate』では、プロジェクト開始前に必ず『Discover』フェーズを設けていることが特徴です。
このフェーズでお客様には、“製品が想定している業務プロセス”を理解いただき、自社の業務をそのプロセスに適応させられるかを見極めていただきます。このフェーズは非常に重要です。このように、業務をシステムに合わせる、適応するという考え方を“Fit to Standard”と呼びます。
Fit to Standardでの導入を根底としているパブリッククラウドのプロジェクトでは、オンプレミスのように『Implementation』や『Delivery』というワードはあまり使われず、多くは『Adoption(適応)』と表現されます。
そのため、従来の開発プロジェクトに必ず存在した『要件定義』や『ブループリント』といったフェーズはありません。代わりに、『Explore(評価)』と呼ばれるフェーズにおいて、Fit to Standard ワークショップを通じて、SAPの標準ソフトウェアを活用して業務をどのように回していくのかを評価・検討していきます」
パブリッククラウドはお客様にとって、どのような良い点があるのでしょうか?
将来を見据えて、常にシステムが最適化される仕組み
「SaaS製品では、従来の手組システムやオンプレミスのSAP製品のように時間をかけて業務要件を洗い出し、開発・テスト・ドキュメント作成・保守を行う必要がありません。パラメータの変更のみで業務に即したシステム設定が可能です。
また、お客様はSaaS製品として出来上がっているシステムを確認しながら導入を検討できるため、導入前に具体的な運用イメージを持てる点も大きな利点です。
ソフトウェアのバージョンアップについても、オンプレミスでは数年ごとにお客様主導で行う必要がありますが、パブリッククラウドでは年2回、SAPが定めたスケジュールで自動的に実施されます。これにより、最新の技術やプロセス、機能を早期に利用することが可能で、かつ、作業負荷の軽減やトラブル回避にもつながります。
さらに、SAP側でソフトウェアを一元管理しているためシステムトラブル時にも早期発見ができ、問題の早期対応が可能なのです」
クラウドが主流になっていくことで、求められることは何ですか?
時代の変化とともに必要不可欠となるクラウドの知見
「このクラウドシフトに順応するために、一番大事なのはマインドセットの切り替えです。
コンサルタントは、『お客様の要件を実現しよう』と考える傾向が強くあります。これは、決して悪いことではありません。
しかし、お客様のご要望が必ずしも最適解であるとは限りません。また、お客様が効率的だと思うことでも、ベストプラクティスの観点から考えると非効率であるケースも少なくないのです。
SAPが考えるベストプラクティスを反映した製品を適用し、いかにお客様の業務を合せていくのかを考えていただく。これがクラウドのコンサルタントの根底にあり、従来のオンプレミスとの一番大きな考え方の違いです。
つまり、従来の”Fit Gap”から“Fit to Standard”へ考え方をシフトすることが求められます。
場合によっては、ある程度の業務をスコープアウトしてもらう方が期間を早められたり予算を抑えられたりもすることもあります。ベストな選択へ導くことも、コンサルタントの大事な役割です。
頭ではわかっていても、現状の業務を変えたくなかったり、周辺のシステムが絡んでいて一部の業務だけ変えることが難しかったりします。ただ、できない理由を探すのは簡単です。そうではなく、『どのように変えていくか』に焦点を当てることが私たちの仕事です」
クラウド製品を扱うコンサルタントとして、大事なことは何ですか?
変化に追いつき、逆境も楽しみながらお客様をリードする
「クラウド製品は技術革新のスピードが非常に早い分野なので、コンサルタントとして常に勉強し続けることが大切です。お客様の要望を理解するためには業務プロセスもよく理解する必要があります。そして、それらの知識を前提にしながら、お客様に分かりやすく伝えるスキルが非常に重要です。
また、それらのスキルに付け加えるとするならば、『とにかく仕事を楽しめる力』も大切だと私は考えています。
例えば、お客様の上層部では『グローバル基準』を目指して業務改革を現場に指示したが、実際にプロジェクトが始動すると、現場の人たちは目の前の仕事のやり方が変わるので抵抗がある、ということもあります。ネガティブな反応を示す人がいたり、ときには関係者間で衝突することもでてきます。
このような例も含めて、確かに様々な状況に悩むこともありますが、うまく状況が好転するようにコンサルタントとして誘導し、困難も含めて仕事を楽しく前向きに取り組めるかどうかは非常に大切だと思います。個人的には、いつも笑顔でお客様に接することを大事にしていますし、新しい分野ならではの挑戦があるからこそ、この仕事にやりがいがあると感じています」
今後の展望を教えてください。
SAPが掲げるゴールは、このチームが叶えていく
「SAPに入社して以来、アプリケーションコンサルタント職から始まり、その後は様々な知見を養うため、約30名のチームメンバーを統括するマネジメント職を経験したり、お客様を担当するアカウントマネジメントの一環としてサービスセールス職にも就きました。
そして、いま私が所属するSAPの中でも最も新しい部署の一つであるパブリッククラウドのチームに異動しようと決意したのは、この変化の時代に最先端の領域で挑戦したい想いがあったからです。
SAPは、世界でも有数のソフトウェア企業です。グローバルで実績を積み上げている会社が『これからはクラウドの時代だ』と明確なメッセージを出し続けている。これから間違いなく、大きな変化が起こっていくと確信しています。
特にERPをクラウド化していく流れは、今まさに世の中に求められています。SAPはERPに強みを持つ会社ですから、この流れに一番合っているのがSAPのクラウドERP製品であると考えています。
私たちの部門は、この時代の潮流をダイレクトに支える部門です。お客様に対しては『支援する』立場ではあるものの、自分たちの視点で言えば、世の中の変革をけん引していく役割のある部署なのです。
世界中のお客様がクラウド製品を導入していく中で、SAPはおそらく一番シェアが大きいと思いますし、今後さらにSAPのクラウド製品で染まっていきます。むしろ、私たちがクラウドを主流とする世界へ染めていかなければいけないと強く感じています。
この大きなミッションを担っているのが私たちであり、自分たちが世の中を変革していく力のひとつになっていく。それがこの仕事のやりがいであり、大きな魅力なのではないかと考えています。
実際の仕事においては、日々勉強が必要であり、また、お客様とクラウド製品の狭間で葛藤する場面もまだまだでてくるでしょう。だからこそ、そうした困難も含めて、前向きに、そして楽しく取り組んでいける方々と共に協業していきたいと思います」
最先端の領域で挑戦を続け、活躍される武笠さんの想いが伝わってきました。これからもSAPのクラウドカンパニー化に向け、大きく貢献してくれることを期待しています。
■SAPジャパンのキャリアサイトはこちらから:SAP Careers
■前回の記事はこちらから:LifeAtSAPJapan vol.33未来へ向けた指針を示す。Adoption Services Centerが注目される背景とは