(本記事は、7月31日に本社で掲載されたものです)

ドイツ・レーゲンスブルクにあるBMWグループの工場では、57秒ごとに新しい車両が組立ラインから出荷されています。しかし、この工場は、単に魅力的な自動車を生産するだけにとどまらず、同社が進めるSAP S/4HANA®へのクラウド移行においても、先進的な取り組みを牽引する重要な拠点となっています。

BMWグループはRISE with SAPを活用し、工場の業務を最新のクラウドベースのソフトウェアへと刷新しました。これにより、AIとの高度な統合も可能となっています。この複雑な業務移行が無事に稼働開始できたのは、卓越したチームの尽力、30年以上にわたる戦略的パートナーシップ、そしてBMWとSAPによる7年間に及ぶ共同イノベーションの成果です。 

パートナーとして新たなstandardを創出

英国オックスフォードにあるBMWグループのMINI工場で新ソリューションの初期導入が行われたのに続き、レーゲンスブルク工場は、SAP S/4HANAへの移行を果たしたBMWグループ初の本格的な製造拠点となりました

部品プロセスチェーン(ドイツ語略称:PKT)向けに導入された新たなクラウドソリューションは、車両生産における部品供給のデジタル管理に関する物流プロセス全体に影響を及ぼしました。これには、必要な部品のサプライヤーへの発注から、納品、倉庫保管、そして生産ラインへの供給に至るまでの一連の工程が含まれています。

このソリューションは、単に物流プロセスにとどまらず、工場における品質管理や保守業務のプロセスにも対応しています。SAP S/4HANA向けに導入された新しいPKT templateにより、車両製造に必要なあらゆる生産技術にわたって、部品供給の一元的な管理が初めて実現されました。

このプロジェクトの成功は、企業の垣根を越えて共通の目標に向かって協力したチームの力に支えられています。SAPのカスタマーサービス&デリバリーおよびプロダクト&エンジニアリングのチームは、BMWと連携し、プレス・ボディ・塗装工程から最終組立に至るまで、生産物流全体の包括的なデジタルトランスフォーメーションに向けた青写真を共に描きました。

この変革プロジェクトの重要性は、SAPの関係者全員に明確に認識されていました。SAP戦略的カスタマーイノベーション部門のチーフプロジェクトエキスパートであり、BMW向けプログラムのリーダーを務めるカローラ・シェーンフェルダー(Carola Schoenfelder)は次のように述べています。「私たちはチーム全員にこう伝えました――『一台一台の車が大切なのです』と。このプロジェクトは、単なるITの取り組みではなく、工場、従業員、そしてその成果に深く関わるものでした」 

一歩一歩進化を遂げるトランスフォーメーション

レゲンスブルクのBMW工場では、従業員の約3分の1がSAP S/4HANAの各種コンポーネント、特にSAP® Transportation Management やSAP® Extended Warehouse Managementを日常業務で活用しています。こうした変革において、実際に影響を受ける現場の声を取り入れることが、プロジェクト成功の重要な要素となりました。また、成功の背景には、過去の経験を活かした取り組みもあります。先行して本稼働を迎えた、より小規模なオックスフォードのMINI工場での知見が、レゲンスブルク工場でのより大規模な導入プロジェクトを円滑に進める上で、大きな助けとなりました。

変革の取り組みを、安全装備なしで「岩壁」を登るような困難な挑戦としてではなく、一歩ずつ着実に進める「階段」として捉えることで、チームは段階的かつ計画的な移行を進めました。さらに、工場内には、いつでも支援を受けられるサテライトサポート拠点が設置されました。 

最適化の可能性を特定

本稼働から半年が経過し、SAP S/4HANA® Cloud Private Editionへの移行は、単なる技術的な更新にとどまらず、日々の業務に目に見える変化をもたらしていることが明らかになりました。中でも、新たに導入されたSAP Extended Warehouse Managementアプリケーションは、重要なデータの提供と業務最適化の可能性の特定において、主要な技術としての役割を果たしていることが示されています。

新たなデータ基盤の導入により、連結台車の活用や構内輸送距離の削減といった具体的な取り組みを通じて、業務最適化の可能性をより正確に見極めることが可能になっています。

標準化は効率性だけでなく、柔軟性の向上にも寄与します。 従業員は高度な専門知識を必要とせずに、作業間や工場間での業務切り替えが容易になります。 これにより、プロセスは一層合理化され、可視性も高まります。

BMWグループの生産ネットワークおよびロジスティクス責任者であるマイケル・ニコライデス(Michael Nikola)氏は次のように述べています。「生産ロジスティクスのグローバルなデジタル化により、透明性と標準化が飛躍的に向上し、需要の変動や供給不足にも迅速に対応できる体制が整いました」 

AIが牽引する未来に向けた備え

戦略的な観点から見ると、新しいITインフラの導入は大きな変革をもたらしました。 クラウド環境により、ユーザーは技術的な背景を気にすることなく、高速かつ柔軟な運用が可能になります。 さらに、標準化されたクラウドソリューションの導入は、将来的にAIの可能性を最大限に引き出すための重要な一歩です。 AIの恩恵を持続的に享受するためには、新機能を迅速に取り込める標準化されたソフトウェアソリューションが不可欠です。

BMWグループITのCIO兼シニアバイスプレジデントであるアレクサンダー・ブレッシュ(Alexander Buresch)氏は次のように述べています。 「統一されたデータ構造とstandard process templateの導入により、生産ロジスティクスのデジタル化は次の段階へと進み、BMWグループのAI活用は飛躍的に進展しました」

BMWは7年にわたる共同イノベーションを通じて、自動車業界特有の要件をSAPと共有し、SAPはそれらの多くをSAP S/4HANAおよび製造ロジスティクス向けの業界特化型ソリューションに反映させました。「SAPとのパートナーシップのもと、当社は主要な業務プロセスをサービス指向のクラウド基盤と移行し、効率性、品質、そして自動化の面で新たな次元を実現することができました」と、ブレッシュ氏は語っています。

共通のstandardを使用することで、関係者は解決策を共同で見つけ、共有し、ソリューション設計を共に開発することが可能になります。将来的に他の自動車メーカーが同じstandardを採用すれば、BMWもSAPの新しいリリースによる恩恵を受けることができます。

PKT templateの開発に向けた戦略的協業は、卓越した専門性と強いコミットメントによって推進されたプロジェクトとして、2018年に指導しました。レーゲンスブルクでの本稼働は、SAP S/4HANA Private Cloudが大規模な自動車生産拠点の高度で複雑なニーズに対応できることを示す重要な指標です。BMWとともに、SAPのコンサルティングチームは、徹底した準備を通じて、複雑なシフト体制下でも損失のないスムーズな本稼働が可能であることを実証しました。この展開プロセスは確立されており、各工場の特性に応じて柔軟に適用・拡張することが可能です。

SAPの中東欧地域におけるカスタマーサービス&デリバリー部門のシニア・バイス・プレジデント兼ゼネラルマネージャーであるヘンドリック・ハース(Hendrik Haas)は次のように述べています。「当社の主要顧客であるBMWとの協業は、市場に大きなインパクトを与えており、生産物流分野におけるデジタルトランスフォーメンションの成功事例として注目されています。レーゲンスブルク工場での取り組みは、両社の並々ならぬ努力と献身によって実現した重要なステップでした。今夏には、BMWとともにミュンヘン本工場にて「RISE with SAP」による変革をさらに推進してまいります」

トップ画像提供:BMWグループ