One日立戦略を資金面から支える日立製作所のグローバル財務資金リスク管理変革の旅路 ~年間100億円以上の真水の効果創出とグローバルアワードを受賞した業務変革の考察~

フィーチャー

 株式会社日立製作所は、デジタルをコアにした「新のOne Hitachi」への変革を実現し、デジタルセントリックな企業として社会イノベーション事業の成長を継続的に加速化させるための事業体制を強化し、変革施策を着実に推進しています。

2008年に国内製造業最大の7,873億円の赤字を計上した後、不採算事業の抜本的な見直しを行い、社会イノベーション事業でグローバルに戦うための事業ポートフォリオ改革を推進する中で、上場子会社の再編を完了し、ABB傘下のパワーグリット事業やGlobal Logic社の買収などエネルギーインフラ・IT領域で大型M&Aを実行してきました。

ノン・コア事業を切り離し、社会インフラ・IT系へシフトする事業変革の中、コーポレートの財務部門は、リーマンショック後の傷んだバランスシートの修復を進めると共に、経営の基盤である「カネ」の流れを管理することで、経営陣による事業ポートフォリオ変革の意思決定を財務面からサポートしてきました。

本稿では、「カネ」領域で企業価値最大化に寄与するためのグローバル財務資金リスク管理変革に焦点を当て、デジタルを活用した変革の軌跡を日立製作所財務本部資金部長神谷氏、グローバル・トレジャリーグループ部長代理三上氏の体験談をベースに考察します。

日立製作所 財務統括本部財務本部 資金部長 神谷 昌豊氏(写真右)日立製作所 財務統括本部財務本部 資金部 グローバル・トレジャリーグループ部長代理 三上 佳代子氏
日立製作所 財務統括本部財務本部 資金部長 神谷 昌豊氏(写真右)
日立製作所 財務統括本部財務本部 資金部 グローバル・トレジャリーグループ部長代理 三上 佳代子氏

 

■取組背景

日立グループには、長らくグループ会社毎の自主独立性こそが成長を牽引するとの考え方があり、資金運用や調達についても上場会社が各社の利益の最大化の観点から独自のリスクリターンの目線を持って取り組んでいる状況で、全体最適と個別最適で言えば、後者が優先される状況が続いていました。

こうした状況の中で、財務部門が掲げる「Cash belong to corporate」の考え方を浸透させ、国内外グループ600社の資金集中と連結ベースでの資金効率最大化を推進するのは容易ではありません。

大きな転機はリーマンショックでした。毎日多額のキャッシュが口座から消えていくのを目の当たりにし、このままでは会社が危ういと経営陣が身をもって体感したことが起点になったといえます。

2000年代初頭から国内グループ会社を対象としたキャッシュプーリング導入など先進的な取組みを行ってきた同社ですが、リーマンショックを契機に子会社配当政策の見直しを段階的に行い、2019年には子会社配当100%に舵を切ると同時に、同年グローバル財務管理規程(以下、トレジャリーポリシー)の大幅な刷新に踏み切りました。各社個別最適からグループ全体で資金効率を最大化するためにはグループ共通の理念が必要であり、それをトレジャリーポリシーとして取引毎の基本方針のみならず本社・グループ会社の役割分担と責任、事前承認を必要とする例外事項などとして明確化しました。

トレジャリーポリシーにより、グループ企業の銀行口座の開設には本社承認が必要なこと、グループ各社による資金運用と資金調達は法令・規制等による特殊事情がある場合を除いてトレジャリーセンター経由で行うこと、為替取引についてもグループ内外貨入出金のネッティングと先物予約のトレジャリーセンターへの取引集中化、そしてグループ各社のキャッシュプーリング参加義務付けなどが、外国人にも分かるよう明文化されたことになります。

ただ、新たなトレジャリーポリシーを制定しただけでは不十分で、財務取引に関する業務手順をグローバルで統一してシステムに実装しないと月に何千件もある取引を纏めて効率良く執行することはできません。また、財務ガバナンスの観点からもトレジャリーポリシーに沿った活動が各社で行われているかを監視していく必要があることから、企業グループ全体での資金状況をグローバルに把握できる統合的なプラットフォームが必要でした。そこで、トレジャリーポリシーと合わせて同社が推進したのがSAP S/4HANA財務資金リスク管理システム(以下SAP S/4HANA、*1)の導入になります。

 

■ SAP S/4HANA導入により何が変わったか? ~Before / After~

SAP S/4HANA導入前は、分散型かつ部分的・地域的に統合されたキャッシュマネジメント業務を実施しており、データのマニュアルでの取得、地域毎に異なるワークシートでの資金繰り見通しの収集、金融機関毎に異なるプラットフォームからの口座残高情報と入出金明細のマニュアル取得など多くの手作業とエクセルバケツリレーが発生しており、本社で地域・各社横断で資金状況を一覧するのが難しい状況でした(図表1)

 

図表1 SAP S/4HANA導入前のトレジャリーシステムのシステム構成図

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

そこで、新しいトレジャリーポリシーの制定と合わせてポリシーに沿った業務要件を組み込んだSAP S/4HANAのグローバル共通利用により、業務標準化と可視化・自動化を進めました。SAP S/4HANA導入にあたっては「ありたい姿」全体像をデザインした上で、チェンジマネジメントに配慮しながら必要な機能を段階的に導入しています。

 

【導入機能と導入ステップ】

Step1 銀行口座開設本社承認ワークフロー化、銀行残高の可視化

Step2 資金予測、外部資金調達及び運用取引・残高管理、為替取引・残高管理、

内部貸付及び預金取引・残高管理、キャッシュプーリング、自動会計仕訳、

外部為替電子取引プラットフォームとの為替取引自動連携、市場情報取得

Step3 内部為替取引、内部為替オーダー集約、ネッティング(為替予約決済)

Step4 ネッティング(グループ内AR/AP決済)、支払代行

日本と海外6拠点(シンガポール、インド、英国、米国他)にあるトレジャリーセンターがSAP S/4HANAを共通利用することにより、グループ連結ベースでの資金と為替の集中管理を行い、財務オペレーションの標準化と集約化を推進することで、資金やリスク情報のリアルタイムモニタリングが地域横断で可能になりました(図表2)

地産地消モデルを前提に地域/グローバルでの2層管理など複雑な管理要件に柔軟に対応する必要がありましたが、この柔軟性を支える土台となったのがSAP S/4HANAの社内銀行(*2)と仮想口座を活用した仕組みになります。

図表2 SAP S/4HANA導入後のトレジャリーシステムのシステム構成図

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

「為替集中」と「支払代行」については、その取組みの秀逸さがグローバルに認められる形で、2024年度Alexander Hamilton Awardを受賞しました。

■Alexander Hamilton Award受賞業務:「為替集中」と「支払代行」

2024年度Alexander Hamilton Award ファイナンスリスクマネジメントカテゴリで受賞した「為替集中」、運転資本&支払カテゴリで受賞した「支払代行」に焦点を当て、その具体的な取組について考察します。


【為替集中】

従来各社個別に外部金融機関に為替予約を行っていましたが、各社は外部金融機関ではなくトレジャリーセンターに対して内部為替予約依頼するプロセスを導入しました。内部為替予約依頼を受けたトレジャリーセンターが、ネットポジションに対して外部金融機関に為替予約を行う為替集中を、SAP S/4HANAを活用して実装したことになります。国内グループ企業の為替予約は日本のトレジャリーセンター、海外グループ企業の為替予約はシンガポールのトレジャリーセンターの2拠点に集中して運用する体制を構築しています。

 

図表3 為替集中の仕組み

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

 

ヘッジ方法は、主にキャッシュフローヘッジとプロジェクトヘッジの2種類があります。

キャッシュフローヘッジは、各社の通貨別資金予測に基づいて内部為替予約ポジションが導出され、SAP S/4HANA上で内部為替予約取引が各社およびトレジャリーセンター双方で自動計上され(ミラー取引)、社内予約レートで社内銀行の仮想口座を通して決済が完結することになります。

そして、グループ全体の内部為替予約取引がマリーされ、SAP S/4HANA上で導出されたネットポジションに対する為替予約を日本およびシンガポールのトレジャリーセンターが外部金融機関に対して行うことになります。外部為替予約はSAP S/4HANAから外部為替電子取引プラットフォームに自動連携され、トレジャリーセンター担当者が当該プラットフォームより提示される複数金融機関のレートから最適なものを選択・約定すると、確定約定としてSAP S/4HANAにデータ連携され為替予約ポジションとして反映される仕組みになります。

グループ会社との内部為替予約から金融機関との外部為替予約までエンドツーエンドでプロセスの整流化と自動化が図られています。

為替集中と為替マリー、並びにグループ会社向け外国送金のネッティング利用により、同社はグループ全体の外部為替取引を3割削減することに成功しており、為替レートの日々の変動幅が高まっている折、取引コストのみならずオポチュニティロスの最小化にも大きく寄与しているといえます。

プロジェクトヘッジは各社の為替予約依頼を日本・シンガポールのトレジャリーセンターが、当日相殺できる他社/他事業部からの為替予約オーダーが無ければ、そのまま外部銀行に繋いで各社に返すオペレーションをしています。

 

図表4 為替集中ワークフローの流れ

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

 

【支払代行】

従来、外国送金は日本国内などの業務シェアードセンターがある地域や会社を除き、各社単位で支払実行しており、統一的な仕組みがなく、財務部門からは見えない状況でした。

そこで、各国各社の支払い依頼をSAP S/4HANAで集中管理し、トレジャリーセンター名義で代行支払いを行う新たな支払集中プロセスの導入と展開を進めました。

支払代行は従来の支払いプロセスや周辺システムへの影響が大きいため、特定国でパイロット導入を行った後、チェンジマネジメントや取引先への周知、仕入先マスターのクレンジング、関連システムの改修など慎重かつ段階的にグローバル展開しました。

 

図表5 支払代行の仕組み

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

 

同社はキャッシュプーリングを地域単位で実施していますが、支払代行はシンガポールのトレジャリーセンター名義で行うため、クロスボーダーで仮想口座の付け替えが必要になりますが、この複雑な管理要件をSAP S/4HANAが支えています。

また、支払代行導入にあたり、SAP S/4HANAの最新支払管理機能(*3)をアーリーアダプターとして導入しています。この支払機能活用により、銀行国・支払通貨などの組みあわせに基づく最適ルーティング(仕向け銀行、支払方法統の支払経路の選択)やそれに基づく支払依頼伝送用の銀行フォーマット(pain001)の選択、支払期日管理、特定国で必要となる送金目的コードの付加などの複雑かつ高度な管理要件に柔軟に対応することができたといいます。

支払代行の導入と合わせてグループ共通の支払日のルール化を行い、本社財務主導によるプロセス統一化とグループ各社のガバナンス強化および資金コントロール改善を実現しました。また、支払代行の仕組みを利用して外国送金の内国送金化(シンガポールのトレジャリーセンターが各国に送金代金を引き落とす為の非居住者口座を各国に開設することによって、従来、SWIFTに基づく外国送金により対応していたAP支払いを、SEPAやACH等のローカルクリアリングによる口座振込に変更)を実装することができ、グループ内資金効率の最大化や取引手数料最小化に大きく寄与しています。

なお、支払い実務はグループ会社が直接SAP S/4HANAに支払連携しているケースもありますが、多くのケースでは各拠点のシェアードサービスセンターがSAP S/4HANAを共通利用して運用しています。

図表6 「支払代行」「ネッティング」のデータ連携フロー

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

 

図表7 「2024 ALEXSANDER HAMILTON AWARDS」を2部門で受賞

 

■TMS選定基準と導入効果

財務資金リスク管理変革を支えるシステムはどのように選定されたのでしょうか。

TMS (=Treasury Management System) はRFPプロセスを経て複数の選択肢中からSAP S/4HANA が選定されました。重要視した選定基準は主に下記4点になります。

 

・企業文化・ビジネスモデルに基づく管理要件に対応する柔軟性と拡張性

・資金の可視化、資金・為替取引集中、流動性・市場リスク管理、支払ソリューションまでの一連の業務をシームレスにカバー

・600社超のグループ会社の財務業務を支える安定性・信頼性

・グループ内企業で広く利用されているSAPシステムとの親和性(特に支払いデータ連携)

 

SAP S/4HANA導入を契機に「資金集中化」に対する意識が高まり、財務取引に関するオペレーション効率化やグループ・グローバル共通の理念の浸透、共通プロセスの導入がよりスムーズになりました。

また、同社によれば銀行口座見直しは道半ばとは言うものの、集中化と見える化による連結ベースの資金効率向上と為替ヘッジの最適化、オペレーションプロセスの標準化・効率化、各拠点独自システム廃止による運用コスト削減などに繋がっているといいます。

まだ、変革の旅の途中ではあるのもの、現時点での主な効果として以下4点が挙げられます。

 

・トレジャリーポリシー実装によるグループガバナンス強化

・資金/為替集中の実現によるグループ資金効率向上とリスク管理高度化

・グループ共通基盤整備とプロセス標準化・自動化による生産性と変化対応力向上

・総じて、グループ全体で年間100億円以上の真水の効果創出

 

 

■今後の方向性

プロジェクト開始からの約4年半、SAP S/4HANAの構築と運用の安定化に多くの時間を費やしてきましたが、ここからはSAP S/4HANA上に構築したBest in Classのソリューションを、より多くの社内ユーザーに利用してもらうことで、資金集中化によるキャッシュフローの改善効果と、リスクマネジメントによるボトムライン安定化の効果をさらに高めていく必要があります。

まずは、支払代行など各機能のグローバル展開の完遂と、まだフル活用できていないTMS機能の更なる利活用を進めたいと考えています。

そして、財務部門が日立グループ全体のコントロールタワーとして適切なアクションを起動的に実施していくために、今回構築したSAP S/4HANA上に為替リスク、与信リスク、オペレーションリスク等のリスク管理に必要なデータを集め、一極で集中管理したいと考えています。さらにその先には資金管理の高度化に向けて、AIを活用した資金見通し予測や、資金流動性リスクや市場リスクの分析を図っていく方向性になります。

 

*******

グローバル全体最適と地域個別最適のバランスを目利きしながら、トレジャリーポリシーとグループ共通言語が組み込まれたシステム(SAP S/4HANA)の導入を活かして横串を通すグローバルトレジャリートランスフォーメーションの旅路は、財務組織のビジョン(図表8)の実現のみならず、One Hitachiを資金領域で具現化した取組といえます。

 

図表8 企業価値最大化に寄与する財務組織ビジョン

(出所)株式会社日立製作所 財務本部 資金部提供資料

 

■TMS関連テクノロジーアップデート

最後に、日立製作所のグローバル財務資金管理変革を支えた財務資金リスク管理関連最新テクノロジー(*4)を概観していきたい。

財務資金リスク管理ソリューションの全体像が図表9になります。

 

図表9 財務資金リスク管理システム全体像

 

クラウドERP(基幹システム)にシームレスに統合されたシステムであり、外部の市場データや金融機関との接続性を確保しながら、財務資金リスク管理の効率化、高度化を包括的に支援する以下のような機能を提供しています。

 

■財務分析ダッシュボード(*5):財務・運転資産(資金)管理の分析機能を提供

■財務リスク管理(*6):各種金融商品の取引管理、残高管理、評価、会計処理などの機能を提供

■社内銀行/ペイメントファクトリー(*2/3):企業グループの全ての支払い処理を一元化して銀行の手数料・費用を最適化する「社内銀行(仮想口座)」の管理をはじめ、支払い代行、支払い転送、支払いモニタリング/スクリーニング/エラーハンドリング、グループ内取引ネッティングなどの機能を提供

■資金管理(*7):企業グループ全体の銀行口座と資金残高の可視化と管理、銀行報告書の管理、資金管理ポジション、資金予測、流動性予測などの機能を提供

 

加えて、同ソリューションが統合されているクラウドERPは、財務資金リスク管理の前後のプロセスを幅広くカバーしている点も特徴になります。よって、販売や、購買、会計などの業務と合わせて財務資金リスク管理ソリューションを利用すれば、「受注・売掛金」が計上されたタイミングで、それをリアルタイムに資金繰り表の入金予定に反映させるといった、シームレスなプロセス連携、データ連携が実現できます。

 

また、クラウドERPに組み込まれたAI(*8)を活用できるという利点も見逃せません。

例えば、デジタルアシスタント(資金管理AIエージェント, *9)は、日次のキャッシュポジションを自動で分析し、資金の過不足や対応が必要な口座をリアルタイムかつプッシュ型で教えてくれると同時に、財務ポリシーに沿った形で資金余剰の口座から不足している口座への資金の振替処理案を複数提示してくれます。担当者は、その中から最適な案を選択して実行指示を出すと、後続の資金移動処理が承認プロセスを経ながら自動で実行されるという具合になります。

これにより、担当者は資金移動の判断から送金依頼の実行までをスピーディーに完結でき、資金効率と安全性を大幅に高めることができます。

こうしたクラウドERP組込型AIが今後多くの業務領域で標準リリースされる予定になります。

 

図表10 資金管理者を助けるAIエージェント

資金管理担当者を助けるクラウドERP 組込み型AI Agent

運転資本管理やCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)改善という観点では、FinTechソリューションの活用も考慮したいところです。

例えば、SAP社が2022年に買収した運転資金管理プラットフォーム「Taulia」は、300万社を超えるサプライヤーの利用実績を持つソリューションで、その活用により「サプライチェーンファイナンス(*10)」や「ダイナミックディスカウント(*11)」を同一プラットフォーム上で自社資金状況に応じて柔軟に選択し、サプライヤーの早期現金化を通したサプライチェーン網強靭化や自社キャッシュフローの最適化を実現することができます。

 

AIやTauliaのような革新的なFinTechの活用は、今後の財務資金リスク管理の効率化・高度化に欠かせないものになります。その取り組みを進める上では、共通ルール(ポリシー)と標準プロセスを制定して共通システムに組込み、共通システムの利用を通してルールとプロセスが遵守される仕組みを作り、共通システムの共通利用による均質化されたデータを蓄積することが土台になります。そして、共通システム組込型AIが蓄積されたデータを利用することで、更なる自動化と高度化を図る好循環を作ることが重要になります。この循環をエンドツーエンド業務プロセスで実現する土台として優れた選択肢がクラウドERPといえます。この土台作りが今後も変化するであろうCFOの課題に柔軟に対応し、サステナブルな企業価値向上を実現する鍵となるといえます。

 

ここまで、One日立戦略を資金面から支える日立製作所のグローバル財務資金リスク管理変革の旅路について、その土台となるテクノロジーの最新動向を織り込んで考察してきました。

グループ各社個別最適から舵を切り、財務ガバナンス強化を現場の納得感の醸成を図りながら着実に進める日立製作所の歩みは、多くの日本企業にとって示唆に富む取組みになるのではないかと期待しています。

本稿が、各社におけるグローバル財務資金リスク管理の更なる高度化に向けた施策立案・検討の一助になれば幸いです。

 

(注釈)

*1:SAP S/4HANA TRM(Treasury Risk Management), IHC(In-House Cash), CM(Cash Management)、APM(Advance Payment Management), TPI(Trading Platform Integration) などから構成される財務資金リスク管理ソリューション

*2: SAP S/4HANA IHC (In-House Cash)

*3: SAP APM (Advance Payment Management)

*4: SAP S/4HANA財務資金リスク管理ソリューションを例にご説明

*5: SAP Analytics Cloud (SAC)

*6: SAP S/4HANA TRM (Treasury Risk Management)

*7: SAP S/4HANA CM (Cash Management)

*8: SAP Business AI

*9: SAP Joule

*10: バイヤーの高い信用力を反映した優遇割引率で、ネットワーク上の金融機関を通してサプライヤーに早期現金化プログラムを提供

*11: バイヤー自身の余資を活用して、優遇割引率でサプライヤーに早期現金化プログラムを提供 (バイヤーは市場で運用するよりも良い利回りを得ることができ、サプライヤーは自身で早期現金化するよりも良い割引率で現金化できる)

(/了)