(本記事は、1月5日に本社で掲載されたものです)
数十年にわたり、Bosch、Siemens、Gaggenau といったブランドを擁する BSH Hausgeräte GmbH(BSH社) は、世界中のキッチンを静かに支えてきました。 そして今、同社は『レシピ』を書き換えようとしています ── それは料理のためではなく、財務のためのレシピです。
SAP と協業しながら、BSH社 は IT ランドスケープをクラウドファーストの構造へと刷新し、従業員を手作業から解放し、意思決定の中心にインサイトを据えることを目指しています。
BSH 社のガバナンス・メソッド・システム担当責任者であるハイコ・シュレッツ (Heiko Schletz) 氏は、インタビューにて、同社がどのように財務機能を再構築しているのか、そしてクラウド移行が AI を活用した将来の成功にとってなぜ重要な要素となるのかを語りました。
テクノロジーはビジョンに従う
世界 50 カ国以上で展開するBSH 社は、世界各地の 39 の工場で家電製品を製造しています。シュレッツ氏のチームはグループ全体の管理会計を統括しており、ERP などの基幹システムからグループ連結レベルに至るまで、財務データが円滑に流れるx仕組みを構築する責任を担っています。同チームは、世界中の全拠点の財務データがどのように構造化され、統合されるかを管理し、それらが全社的なレポート作成や意思決定に効果的に活用されるよう支えています。
現在、BSH 社はリアルタイムのデータと分析を活用し、会計と管理会計を一体化した統合プロセスの実現を進めています。この変革を導く原則はただひとつ── 「テクノロジーはビジョンに従うのであって、その逆ではない」 という考え方です。変革の道のりの中で、BSH 社は自らのビジョンを実現するために新たなテクノロジーをテストし、変化を積極的に受け入れています。
例えば、レポート作成の負荷を軽減するため、BSH 社は現在、SAP の次世代データ管理プラットフォームである SAP® Datasphere のパイロット運用を行っています。これは、すべての SAP データを統一および管理し、サードパーティデータともシームレスに接続できるプラットフォームです。
直近の活用事例では、SAP Datasphere 上で、会計管理の残高データ、管理会計の P&L データ、そして市場指標を自動的に連携させました。これにより、スプレッドシートや手作業を介さない連結レポートの作成に成功しています。シュレッツ氏は「これこそが、私たちが目指す旅の目的地――つまり、バラバラなデータソースを一つに繋ぎ合わせ、統合することの姿なのです」と述べています。
サイロを打破し、AI の真価を引き出す
財務領域における BSH 社の長期的な目標は、会計管理、管理会計、そして財務/資金管理の間に存在するサイロを撤廃することです。シュレッツ氏が描き出しているのは、単体決算とグループ連結の両方を同時にサポートするパラレル会計アーキテクチャーであり、これによりバリュー・ドライバー・ツリーのような高度な分析が可能になります。SAP S/4HANA® Cloud Private Edition に移行し、それを SAP Datasphere や SAP® Analytics Cloud と統合することで、BSH 社は子会社の補助元帳からグループ全体の連結決算に至るまで、財務における唯一の正しい情報源を構築することを目指しています。
シュレッツ氏は、クラウドベースの同期されたツールセットを導入することで、財務チームが手作業による連結作業を減らし、意思決定に必要な最新の数値をより迅速に提供できるようになると確信しています。「SAP のAI 進化は、私たちが向かおうとしている方向性そのものです。そのテクノロジーは私たちのビジョンと合致している。だからこそ、完璧なフィットなのです。」とシュレッツ氏は語ります。
同社は数十年にわたり SAP ソリューションに信頼を寄せてきました。SAP R/3 の導入に始まり、現在は SAP S/4HANA®、SAP® Business Warehouse、そして SAP Analytics Cloud を運用しています。次なるマイルストーンは、クラウドへの移行、すなわち RISE with SAP の導入です。シュレッツ氏は「今後 2 年以内にクラウドへ移行します。包括的なビューを提供する同期ツールセットが必要なのです」と述べています。
アナリティクスと AI の機能を最大限に引き出すため、BSH 社は現在、広範なビジネスアプリケーションランドスケープの統合と簡素化を進めています。同社の目標は、6つに分かれていた個別ERPソリューションを、すべての子会社と地域をカバーする単一のグローバル SAP S/4HANA 環境へ集約することです。
SAP S/4HANAへの移行に向けた準備の進め方
RISE with SAP への移行を検討している企業へのアドバイスとして、シュレッツ氏は、『明確なビジョンを持つこと』を挙げています。「会計と管理会計の統合コンセプトがない状態では、SAP S/4HANA を始めるべきではありません」また、財務変革は独立したITプロジェクトではなく、ロジスティクス、販売、カスタマーサービスといった領域を横断した整合性が必要であると指摘し、「SAP S/4HANA への移行は、まさに部門横断の冒険なのです」と同氏は語ります。
BSH 社の変革は現在も進行中ですが、進むべき方向性はすでに定まっています。それは、RISE with SAP によるクラウド移行、データの統合、そして手作業ではなくインサイトを得るために設計された財務機能の実現です。「機械が得意なことは機械に任せ、人は付加価値の創出に集中できるようにしたいのです」と、シュレッツ氏は締めくくりました。



