(本記事は、2月16日に本社で掲載されたものです)
Royal Greenland 社および、グリーンランドやカナダ大西洋岸に位置する 40 以上の拠点・工場にとって、目指す方向は明確です。それは、複雑性を大幅に低減した、より標準化されたクラウドベースのIT環境を構築し、将来の AI 活用を支える技術的基盤を確立することです。
ヌークに本社を置き、グリーンランド政府が 100%出資する Royal Greenland 社は、コアプロセスの将来性を確保し、SAP ビジネスアプリケーション全体で組み込み型 AI を活用するため、SAP プラットフォームの刷新と、オンプレミスからクラウド ERP への移行を進めています。
「私たちは、クラウドプラットフォーム上で提供される機能を活用したいと考え、既存の構成から SAP® Cloud ERP および SAP® Business Data Cloud への移行を進めています」と、25 年以上にわたり Royal Greenland 社の CIO を務めるラルズ・ボ・ハッシングガード(Lars Bo Hassinggaard)氏は述べています。
同社は、北大西洋および北極海で漁獲された高品質な天然魚介類を、世界中の消費者に届けています。1998 年から SAP を導入してきた同社は現在、過去最大規模となる重要な転換期を迎えています。SAP® ERP Central Component(ECC)を SAP Cloud ERP へ移行すると同時に、ビジネスインテリジェンス(BI)環境を SAP Business Data Cloudへと高度化し、将来的には SAP® Datasphere へと進化させる計画です。
本プロジェクトは、RISE with SAP の構造化されたフレームワークに基づいて進められています。これは、プラットフォームの変革、運用、そしてイノベーションサイクルを単一の契約に集約して実現するものです。
無駄のない選択的データ移行:移行するデータを90% 削減
移行プロセスの一環として、Royal Greenland 社は「無駄のない選択的データ移行」手法を採用し、データ量を大幅に削減しています。
「私たちは直近 10 年分のデータのみを保持し、それ以外はクリーンアップしています。 価値を生まない古い会社コードや履歴データは引き継ぎません」と、ハッシングガード氏は説明します。
「これにより、移行および保存の対象となるデータを 90%削減することができました。この手法は、データ分析、対象範囲の定義、標準化されたマッピングを単一のガイド付きプロセスとして組み合わせたものです。これにより、真に必要なデータのみを次期システムへ引き継ぐことが可能となり、変革に伴うコストの見通しを立てやすくすると同時に、不必要な複雑化を回避できます。」
まずはテクノロジー、次にイノベーション
新システムの本稼働は 2027 年 3 月 1 日に予定されています。2026 年はプラットフォームの移行そのものに専念する年となります。そして 2027 年からは、標準化されたコアシステム上で、現場のニーズに合わせた業務改善に着手する計画です。具体的には、新しいユーザーインターフェースの導入や、財務・管理部門における小型 AI エージェントを活用したプロセス最適化などを進めていきます。
「Royal Greenland と SAP は 1998 年以来のパートナーであり、この 1 月からプラットフォーム移行という技術的な工程に着手できることを楽しみにしています」と、ハッシングガード氏は語ります。
「現時点では、この変革を可能な限りシンプルに保つことを重視しています。そして 2027 年を、データ分析の高度化、ユーザーエクスペリエンスの向上、業務プロセスの効率化といった効果を具体的な成果として実現する年にしたいと考えています。」
Royal Greenland 社は、従来型のウォーターフォールアプローチを採用しており、今後の設定変更や機能改修の基盤となる「ゴールデンシェル」をすでに構築しています。
SAP は、Microsoft Azure 上で稼働するクラウドソリューションの導入を担当します。データセンターは当初スウェーデンに設置されますが、将来的にはデンマーク国内のデータセンターへ移行できる選択肢も確保されています。また、外部アドバイザーである Spektra Analytics 社が、契約内容の検証を支援しました。
試行錯誤しながら作る AI から、標準化された「利用する」AI へ
Royal Greenland 社はこれまで、生産現場における画像解析プロジェクトなど、自社開発による AI ソリューションで成果を上げてきました。しかし今後の戦略としては、AI を内製することに重点を置くのではなく、SAP Business Data Cloud およびそのセマンティックデータレイヤーを基盤とした、SAP が提供する組み込み型で標準化された AI データプロダクトやモデルを活用する方向へと舵を切っています。
「当社は、AI を一から自社で開発するのではなく、既存の AI ソリューションを活用するという選択をしています。」とハッシングガード氏は語ります。「その方がはるかに効率的だからです。SAP がすでに提供しているものを、あらためて自分たちで作り直す理由はありません。まずは、財務などのバックオフィス部門におけるプロセス最適化、すなわち日々の業務を効率化する小規模な AI エージェントの活用から取り組んでいきます。」
他社へのアドバイス:十分な時間を確保し、手法を深く理解すること
ハッシングガード氏は、RISE with SAP の契約、方法論、そして事前準備には、相応の時間と組織としての成熟度が求められると明確に述べています。同様にクラウド ERP への移行を検討している企業に向け、次のようにアドバイスしています。「徹底的に取り組むこと、そして想定している以上に時間を確保することです。方法論や価格体系、契約内容を詳細に検討してください。そして、信頼できる有能なアドバイザーをチームに迎え入れることが重要です」


