人的資本経営が経営アジェンダとして定着する中、人事に求められる役割は大きく変化しています。従来の制度運用や人事オペレーションにとどまらず、グローバル全体の人材を可視化し、最適に配置し、育成し、戦略実行につなげる“経営機能”としての進化が求められています。
一方で、多くの企業では地域ごとに構築されてきた制度やシステムが分断され、人材データの統合やボーダーレスな登用が十分に進んでいないのが現状です。標準化と地域特性の両立、透明性の高いグローバル登用、AI を活用した人材分析――これらを同時に実現することが、グローバル企業共通の課題となっています。
本ウェビナーでは、SMBCグループが推進するグローバル人事体制の高度化に向けた取り組みをご紹介しています。海外拠点を含めた人事制度の統合やデータ管理基盤の整備を通じて、グローバルでの人材マネジメントの最適化を目指す同グループ。さらに、現地採用リーダーの積極登用や、国籍や拠点を越えたグローバル人材の登用・育成、AI 活用の推進などを通じて、人的資本経営の実践にも踏み込んでいます。
ジョエル氏・山端氏が、これまでの取り組みの背景や狙い、実践の中で得られた示唆、そして雇用地にとらわれない最適なタレントマネジメントという今後の展望について具体的に語ります。
〇ご登壇者

株式会社三井住友フィナンシャルグループ
Executive Officer, Head of Global Human Resources
Joel Fastenberg(ジョエル ファステンバーグ)氏
Goldman Sachs における NY・東京での勤務からスタートし、金融業界での経験は 25 年に及ぶ。SMBCグループへの入行前は、Citigroup において、東京・シンガポールで 13 年勤務。直近は、APAC 地域の人事ヘッドとして、17 カ国・地域における 65,000 人の人材戦略、カルチャー醸成、育成などを所管。2024 年 4 月より現任。グローバル人事機能の高度化をリード。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ
人事部 グローバル人事室長
山端 大輔氏
2003 年に三井住友銀行に入行。支店並びに法人営業部での勤務の後、経営企画部、国際統括部などで企画業務に従事。直近は、英国において、欧阿中東地域の経営戦略・業務推進をチームヘッドとしてリード。2023 年 4 月より現任。グローバル人事機能の高度化、及びグローバル人材育成を担当。
SMBCグループが進めるグローバル人材改革
「Project Horizon」が支える次世代人事戦略
SMBCグループは、海外事業の拡大を背景に、グループ全体の人材マネジメントをグローバルで一体化する取り組みを進めています。地域ごとに最適化されてきた人事体制やデータ基盤を見直し、統一されたガバナンスのもとで、国や拠点を越えて人材が活躍できる環境づくりを目指しています。その中核となるのが、組織改革とシステム統合を同時に進める「Project Horizon」です。
グローバルCOE設置で、人事機能を横串で統合
SMBCグループは過去 20 年で海外展開を加速させ、海外従業員数は 7 万人を超える規模へと拡大してきました。その結果、地域ごとに運用されていた制度やプロセス、人材データの分散が課題として顕在化し、グローバルで一貫した人材戦略を実行する体制づくりが求められていました。
こうした背景を受け、2025 年 4 月に 5 つのグローバル COE(Center of Excellence)を設置しました。タレントマネジメント、報酬、人事システムなどの機能をグループ横断で統合し、戦略性と一貫性のある運営を実現する狙いです。COE の任命では専門性に加え、グローバル視点、地域特性の理解、変化への適応力、レジリエンスを重視し、すべて社内公募で選出しました。
特徴的なのは、COE の中核に現地採用リーダーを据えた点です。ニューヨークやロンドンなどの現地採用人材が COE ヘッドを担い、グローバルと地域の双方に責任を持つ体制で段階的な統合を進めています。
Project Horizon:グローバル人事基盤の統合を推進

組織改革と並行して進められているのが、グローバル人事システム統合プロジェクト「Project Horizon」です。2027 年秋をターゲットに、地域ごとに分散していた人事システムとデータの統合を進め、グローバル全体の人材情報をリアルタイムに把握できる基盤の構築を目指しています。
制度設計の考え方としては「80 : 20」を採用しました。8 割をグローバル標準とし、2 割を各国の法規制や文化などの事情に合わせて調整することで、標準化と現地適応の両立を図っています。HRBP は現時点では地域体制を維持しつつ、ビジネスのグローバル化に合わせて段階的に統合していく方針です。
展開はビッグバン型で、2027 年秋をターゲットにまずオーガニック拠点を一斉に統合し、インオーガニック拠点はフェーズ 2 で追加する計画です。将来的には国内も含めた全社統合を視野に入れています。
グローバル人材登用を加速し、ボーダーレスな配置へ
Project Horizon が目指すのは、システム統合にとどまりません。雇用地に縛られないタレントマネジメントの実現に向け、グローバル人材登用の仕組みづくりも進めています。
具体的には、透明性の高い共通アセスメントを導入し、シニアポジションへの現地人材登用を加速させています。あわせて、グローバルでの新卒採用も強化し、多様な人材が早期から挑戦できるパイプラインの整備を進めています。
統合データを活用し、AI で意思決定を高度化
今後は、統合された人材データを活用し、AI による採用高度化や人材分析など、戦略的意思決定の加速を見据えています。グローバル人事データ&アナリティクス責任者を新設し、AI 搭載の採用プラットフォーム「SmartRecruiters」の導入も進めることで、より高度な人材マネジメントの実現を目指しています。
おわりに

SMBCグループの取り組みは、人事制度の見直しにとどまりません。ガバナンス、データ、登用を一体で整備し、グローバル人事機能そのものを高度化することで、人事を経営インフラへと進化させようとしています。目指すのは、雇用地にかかわらずグローバルでリーダーを惹きつけ、育成し、活躍を後押しできる体制の確立です。
ジョエル氏は、「グローバル化を目指す人事にとって重要なのは、完璧な計画を待つことではなく、まず一歩を踏み出すこと」と語りました。山端氏も、「取り組みは始まったばかり。課題は多いが、他社や異業種とも学び合いながら理想を追求していきたい」と述べています。
グローバル人事変革は長期的な挑戦です。しかし、簡素化や効率化、連携強化、適切なガバナンス構築を積み重ねながら、行動と対話を重ねて前進し続けることこそが、真にボーダーレスな人材マネジメントを実現する鍵となります。
SMBCグループの経営を支えるインフラとしてのグローバル人事体制の確立に向け、これからも SAP は支援してまいります。
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