(本記事は、6月3日に本社で掲載されたものです)
レコードは音楽業界における最も古いフォーマットの一つですが、近年、再び力強い復活を遂げています。2025年には、今世紀に入って初めてレコードの売上高が 10 億ドルを超え、フィジカルメディアや高品質なリスニング体験に対する顧客需要の再燃が改めて示されました。
この成長の勢いは、オーディオブランドであるVictrola社の歩みとも軌を一にしています。1906年の創業以来、同社は象徴的なレコードプレーヤーをはじめとする多様な製品を展開し、最新のオーディオ製品でも知られるグローバル企業へと進化してきました。「すべての人に、生涯にわたる音楽の記憶を届ける」というミッションの下、その価値を提供し続けています。
新たな販売チャネルや流通網の拡大に伴い、同社は既存のERPシステムの限界に直面するようになりました。SAP® ERP Central Component(SAP ECC)は長年にわたり安定的に稼働し、事業を支えてきましたが、こうした成長を支えるには、より高い拡張性と柔軟性が求められていました。Victrola社のデジタル戦略担当SVPであるアダム・シュナイダー(Adam Schneider)氏は、目標は単なる業務の維持ではなく、イノベーションを支える基盤の構築にあったと述べています。「Victrolaの創造性を引き出す仕組みが必要でした」。こうした要件に適合したのが、SAP® Cloud ERPです。
「Let’s go」に象徴されるVictrola社の企業文化
パブリッククラウドへの移行は、単なるシステムのアップグレードにとどまらず、Victrola社に柔軟な適応力をもたらしました。こうした考えのもと、同社はクラウドファーストのアプローチを採用し、システム全体を再構築する視点で変革に取り組みました。
アダム・シュナイダー氏は次のように述べています。「私たちはあらゆる会議で『Let’s go』という考え方を大切にしています。当社では、メンバー同士が軽く拳を合わせて称え合う場面が日常的に見られるなど、こうした姿勢が組織文化として根付いています。この文化が、変革を常に意識の中心に据える原動力となっています」
アナログの魅力とデジタルの力を融合:
Victrola社、スケーラブルな成長を見据えSAP Cloud ERPへ移行
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プロジェクトチームはチェンジマネジメントを重視し、クラウド移行の背景や期待される効果をオープンに共有しました。シュナイダー氏は、「なぜ取り組むのか」を明確に示したことが大きな違いを生み、全員が「新たな取り組みに前向きな姿勢を示していた」と述べています。
また、Victrola社のリーダー層の理解と支持を得ることも重要でした。リーダー層は、販売のピーク四半期における業務への影響を懸念していました。こうした懸念に対応するため、チームは本変革をビジネス主導の取り組みとして位置づけ、約75%のリーダー層が関与する体制を整えました。
また、業務への影響を抑え、新システムの安定性を高めるため、チームはSAP Cloud ERPに関する深い専門知識を持つパートナーの参画も重視しました。さらに、そのパートナーには、率直で音楽志向という同社ならではの企業文化にも自然に適合することが求められていました。シュナイダー氏は、こうした要件を満たすパートナーとしてReply社が選ばれたと述べています。
「パブリッククラウドに関するビジネス知見を十分に提供できるパートナーを求めていました。スケジュール面でも、プロジェクトに参画しながら手探りで進める余裕はなく、パブリッククラウドに関する専門性が重要な要素となっていました」
強固なチーム体制が整ったことで、同社のパブリッククラウド移行は、社内に加えSAPやReply社を含むステークホルダーの幅広い支援と関与のもとで推進されました。
基盤の最適化
Victrola社のSAP Cloud ERP の変革は、受注から入金までのプロセスや財務業務に加え、大規模な倉庫業務を対象としました。導入は、重要な第4四半期の販売ピークにおけるチームへの過度な負荷を避けるよう戦略的に計画され、全体で約6カ月で実施しました。シュナイダー氏は、新システムへの適応は段階的に進み、導入初期から信頼が高まり、稼働開始から約4カ月後には継続的な調整を行いながら業務が安定したと述べています。
データ管理における組織構造の変更と、クラウドシステムがグリーンフィールドで導入されたことから、同社は過去データの移行を行わない選択をしました。この判断により、技術的負債やシステムの複雑化を回避しています。さらに、従来のカスタマイズの多くは、Fit-to-Standardワークショップを通じて大幅に削減されました。
シュナイダー氏は、「私たちは、自社の変化に柔軟に対応できる仕組みを求めていました。また、必要に応じてシンプルにも複雑にも対応できるシステムであることも重要でした」と述べています。
新たなクラウドシステムの導入により、データの正確性に対する信頼が向上し、レポーティングの俊敏性も高まりました。とりわけ財務プロセスにおける改善は顕著であり、損益計算書の作成時間は従来の4時間から、わずか10〜15分へと短縮されています。月次決算の迅速化や利益率分析の容易化は、同社の俊敏性の向上、意思決定の高度化、そしてビジネスパフォーマンスの強化に寄与しています。
シュナイダー氏は、「データに対する信頼が高まったのは、システム全体の構成や基盤を見直し、再設計したことにあります」と述べています。このようなデータとトランザクションの再設計により、同社は財務関連業務において250時間以上の工数削減を実現しました。
次なるステップ
パブリッククラウド上で稼働するVictrola社は、成長とイノベーションの可能性を大きく広げています。シュナイダー氏は、「AI戦略を検討するにあたり、システムに対する不安はもはやありません。SAPが強力に支援する最新のシステムを基盤に、AI戦略を推進できるようになりました」と述べています。
クラウド移行を検討する企業への助言として、シュナイダー氏は「最適なタイミングは存在せず、変革を恐れるのではなく受け入れることが重要です」と述べています。
さらに同氏は、「このような変革に取り組む上で、常に最適なタイミングがあるとは限りません。しかし、一度取り組み始めると、その価値を実感し、前向きに受け止めながら変革を推進していけるようになります」と述べています。
SAPがSAP ECCからSAP Cloud ERPへの移行をどのように支援しているかについての詳細は、こちらをご覧ください。
写真提供:Victrola


