(本記事は、6月24日に本社で掲載されたものです)
顧客は今や、ブランドが自分を理解し、ニーズを先回りして把握したうえで、あらゆるチャネルやタッチポイントを通じて、一人ひとりに適した体験を提供することを当然のように期待しています。ブランドにとって課題となるのは、その理想に共感することではありません。課題は、その理想と、それを体系的かつスケーラブルに実現するための実行との間にあるギャップを埋めることです。
多くの SAP® Commerce Cloud および SAP® Engagement Cloud のお客様にとって、このギャップは身近な課題として現れています。例えば、顧客行動データが十分に連携されていないため、レコメンデーションエンジンが画一的な提案しか行えないケースがあります。また、個々の顧客の行動習慣ではなく配信スケジュールに基づいて送信されるEメールキャンペーン、顧客との関係性よりも取引実績を重視したロイヤルティプログラム、さらには大規模運用において維持・管理に多大な手作業を要するパーソナライゼーションルールなどが、よく見られる課題として挙げられます。
目指す姿は明確です。しかし、それを実現するための基盤はまだ十分とは言えません。整備されたデータはサイロ化され、AI機能も十分に活用されておらず、継続的な実験と改善を支える組織的な体制も確立されていないのが実情です。
SAP® Customer Experience ソリューション向け Advanced Success Planは、まさにこうした課題を解決するために設計されています。
ハイパーパーソナライゼーションの実現に真に必要なもの
真のハイパーパーソナライゼーションとは、単に機能を有効化するだけで実現できるものではありません。それは、「データ」「意思決定」「デリバリー」という相互に連携する3つのレイヤーを横断しながら、体系的に構築していくべきケイパビリティです。
「データ」は、すべての基盤となります。ハイパーパーソナライゼーションを実現するには、購買取引、エンゲージメント履歴、サイトの閲覧行動、カスタマーサービスでの対応、ロイヤルティ活動にいたるまで、さまざまなデータを統合した、リアルタイムかつ同意管理に対応した顧客プロファイルが不可欠です。この基盤がなければ、どれほど高度なAIモデルであっても、不完全な情報をもとに判断せざるを得ません。
「意思決定」は、AIがそうしたシグナルを具体的なアクションへと変換する領域です。次に表示すべき最適な商品、提示すべき適切なオファー、あるいはアプローチすべき最適なタイミングなどを導き出します。ここで求められるのは、モデルの正確性だけではありません。アルゴリズムをどこまで信頼し、どの場面で人間の判断を優先すべきかを見極めるガバナンスも重要です。
「デリバリー」は、パーソナライズされたエクスペリエンスを顧客に届ける領域です。オンラインストア、Eメール、モバイルプッシュ通知、ロイヤルティプログラムでのやり取りなど、あらゆる顧客接点がその対象となります。ここでは、顧客の現在のコンテキストに応じて、一貫した体験を提供するためのチャネル横断的なオーケストレーションが不可欠です。
SAP Customer Experience ソリューション向け Advanced Success Planは、この3つのレイヤーすべてに対して包括的な支援を提供します。エキスパートによるガイダンス、ガバナンスの枠組み、そして導入・活用を加速するための支援を通じて、個別機能の活用にとどまらない、統合された運用モデルへの移行を実現します。
SAP Commerce Cloud のハイパーパーソナライゼーション
SAP Commerce Cloudは、大規模なパーソナライゼーションを実現するためのストアフロントの実行レイヤーを提供します。ソリューションに組み込まれたAI支援型の商品レコメンデーション機能により、トレンド商品や関連商品、さらにはクロスセルやアップセルを促進する補完商品にいたるまで、ショッピングジャーニーの最適なタイミングで、訪問者一人ひとりに最も関連性の高い商品を提示できます。これは、従来の手動によるマーチャンダイジングルールの枠を超えるものです。リアルタイムの行動シグナルに動的に対応することで、コンバージョン率の向上や商品との新たな出会いを促進します。こうした取り組みは、マーチャンダイジングチームが手作業で実現できる規模をはるかに超えて展開できます。これは、手動で設定されたマーチャンダイジングルールの枠を超えるものです。リアルタイムの行動シグナルに動的に応答しながら、コンバージョン率の向上や商品との新たな出会いの創出を支援します。こうした取り組みは、マーチャンダイジングチームが手作業で再現できる規模をはるかに超えて実現できます。
しかし、多くの SAP Commerce Cloud のお客様は、これらの機能の価値をまだ十分に引き出せていません。その背景にある課題は明確です。レコメンデーションモデルの性能を左右するデータ品質の問題、コマースレイヤーと顧客プロファイルデータとの連携に伴う複雑さ、そしてモデルを継続的に改善・最適化していくために欠かせない実験・検証の運用体制が整っていないことなどが挙げられます。
SAP Customer Experience ソリューション向けAdvanced Success Plan は、こうした課題の解消に向けた的確なガイダンスを提供します。例えば、データレディネス評価を通じて、SAP Commerce Cloud のパーソナライゼーションエンジンに信頼性の高いシグナルを供給するために必要なデータ品質の基準や連携パターンを明確にします。また、アダプションアクセラレーターを活用することで、仮説の立案、A/Bテストの実施、その結果を設定改善へ反映するといった実験・検証プロセスを組織的な運用として定着させることが可能になります。その結果、ストアフロントは初期設定の状態にとどまることなく、継続的に学習し、改善を重ねていくことができるようになります。
SAP Engagement Cloud におけるハイパーパーソナライゼーション
SAP Emarsys を基盤とする SAP Engagement Cloud は、パーソナライゼーションの対象をストアフロントの枠を超えて広げ、顧客との関係性全体にわたるライフサイクルへと拡張します。ここでは、SAP Commerce Cloud が捉えた購買取引のシグナルとエンゲージメント履歴を組み合わせることで、従来のセグメント単位ではなく、顧客一人ひとりに最適化されたクロスチャネルのパーソナライゼーションを実現できます。
このソリューションに搭載されている AI 支援型の送信時間最適化機能は、まさにこの考え方を体現する好例です。あらかじめ決められたスケジュールに基づいてキャンペーンを配信するのではなく、各コンタクトの行動パターンを分析し、タイムゾーンや言語、地域に左右されることなく、一人ひとりが最も反応しやすいタイミングでメッセージを配信します。これは、単なる概念としてのパーソナライゼーションではありません。自動化され、かつスケーラブルに運用できる仕組みとして実現されたパーソナライゼーションです。
SAP® Emarsys の AI支援型キャンペーン翻訳機能とオムニチャネルオーケストレーションを組み合わせることで、SAP Engagement Cloud は、マーケティングチームが個別のキャンペーンを構築する段階から、顧客ジャーニー全体をオーケストレーションする段階へと移行できるよう支援します。システムは、どのシグナルがどのインタラクションを引き起こすべきかを継続的に学習し、顧客の反応を促す要因に基づいて、そのインタラクションを継続的に最適化していきます。
SAP Commerce Cloud と SAP Engagement Cloud のネイティブ統合は、こうした取り組みを加速する重要な推進力となります。コマース行動データとエンゲージメントデータを統合することで、企業はコンバージョン率、購入頻度、平均注文金額の向上を実現でき、単独のシステムでは得られない価値を創出できます。SAP Customer Experienceソリューション向けAdvanced Success Plan は、単一の統合されたエンゲージメントモデルのもとで、両製品にわたる統合アーキテクチャー、データガバナンス、導入・活用のマイルストーンを整合させることで、お客様がこうした相乗効果を最大限に引き出せるよう支援します。
Advanced Success Plan が継続的な改善を可能にする仕組み
ハイパーパーソナライゼーションの取り組みは、一度限りの導入プロジェクトとして扱われることが少なくありません。しかし、SAP Customer Experience ソリューション向けAdvanced Success Plan は、そうした取り組みを再現性があり、継続的に改善を重ねるプログラムへと発展させるために設計されています。具体的には、次のような取り組みを通じて、その実現を支援します。
- 成果に基づくガバナンス: コンバージョン率の向上、リピート購入率、エンゲージメント開封率、平均注文金額など、重要なKPIをお客様と共同で定義し、それらの指標を着実かつ測定可能な形で改善するためのワークストリームを構築します。
- 実践的な導入・活用プレイブック: AI支援型の商品レコメンデーション、送信時間最適化、ネクストベストアクション・ロジックを有効化するための体系化されたプレイブックを提供します。明確なマイルストーンと測定可能な評価基準のもとで、導入・活用を着実に進めます。
- 継続的なイネーブルメント(活用支援): データ、プロダクトオーナーシップ、キャンペーン運用を担う各チームに対して、役割に応じたコーチングを提供し、パーソナライゼーション施策の停滞や後退につながるスキルギャップの解消を支援します。
- 先回り型のテレメトリー: 定期的なアダプションチェックを実施し、ビジネス成果に影響が及ぶ前に、パフォーマンスの低い設定を特定します。さらに、AIが導き出すベストプラクティスを活用することで、継続的なチューニングと最適化を支援します。
ビジネス価値を具体的に示す
SAP Commerce Cloud を利用するお客様にとって、ハイパーパーソナライゼーションの運用化がもたらす価値は、ストアフロントの主要指標に明確に表れます。例えば、AIが提示するレコメンデーションによるコンバージョン率の向上、インテリジェントなクロスセルによる平均注文金額の増加、そして商品との新たな出会いの創出による直帰率や離脱率の改善などが挙げられます。
一方、SAP Engagement Cloud を利用するお客様にとって、その価値はエンゲージメントの質に表れます。例えば、リスト全体への一斉配信ではなく、顧客一人ひとりとの関連性に基づく開封率やクリック率の向上、AIによって最適化された配信によるキャンペーンROIの改善、そして取引量ではなく顧客との関係性の深さを反映したロイヤルティプログラムのエンゲージメント向上などが挙げられます。
両ソリューションに共通するのは、統合されたデータとオーケストレーションされた意思決定がもたらす相乗効果です。この相乗効果こそが、ハイパーパーソナライゼーションを単なるPOC(概念実証)から、持続的な成長を支える仕組みへと発展させる原動力となります。そして、その仕組みは時間の経過とともに学習と改善を重ねながら、測定可能な形で継続的に成果を高めていきます。
パヤル・サチデヴァ (Payal Sachdev) は、Advanced Success Plan for SAP Customer Experience のプロダクトマネージャーです
タラ・トレイシー (Tara Tracey) は、Advanced Success Plan for SAP Customer Experienceのグローバル・プロダクト・オーナーです。


