(本記事は、7月9日に本社で掲載されたものです)

SAPのミッションは、世界をより良くし、人々の生活を向上させることです。世界中の数多くの企業や組織が、財務、人事、サプライチェーン、プロジェクト遂行といった重要業務の管理に、SAPのERPをはじめとする各種ソリューションを活用しています。

さらに、お客様にとって重要なのが、定期的なアップデートや技術サポートを通じてソフトウェアの安定した稼働とレジリエンスを支え、事業継続性を確保するオンプレミス環境向けの保守・サポート体制です。

当社はポートフォリオ全体でイノベーションを推進し続けるとともに、お客様が求める柔軟性と透明性を当社の商取引のあり方に反映できるよう取り組みを進めています。また、世界各国の規制当局との建設的な対話も継続しています。

欧州委員会との建設的な対話を経て、SAPは今回、お客様にとっての柔軟性、透明性、予見可能性をさらに高めるため、これらポリシーの見直しに合意しました。これらの措置は、お客様のビジネス環境やテクノロジー環境の変化に応じて、より良いサービスを提供できるよう、商取引を継続的に改善していくという当社のコミットメントを示すものです。

今回の新しい方針は、世界中のすべての既存および将来のSAPのお客様を対象に、SAPのすべてのオンプレミス製品に適用されます。これらは、ビジネスソフトウェア業界における極めて柔軟な保守・サポート体制であり、お客様がSAPに期待できる価値を示す先進的な事例となるものです。もちろん、この柔軟性の向上によって、ビジネス継続性、信頼性、そしてシステムの拡張性が損なわれることはありません。

具体的には、SAP は以下の見直しを実施します。 

保守・サポートにおける選択肢の拡充

SAPは、オンプレミスソフトウェアを利用するお客様が、自社の事業運営に合わせて保守・サポートのあり方を柔軟に選択できることを重視しています。そのためSAPは、お客様がSAPシステム環境をより柔軟に構成できるよう、その仕組みをさらに強化します。具体的には、SAPシステム環境を「コマーシャルインストレーション」と呼ばれる個別の単位に分割するための明確で分かりやすい枠組みを提供します。これにより、お客様は単位ごとに異なるSAPサポートレベルを選択したり、特定の単位についてはSAPサポートを利用しないことを選択したり、あるいはSAPサポート以外の選択肢を採用したりできるようになります。その結果、お客様はSAP環境内の各領域について、運用上および商業上の優先事項に最も適した形でオンプレミス環境向けのサポート体制を構成できるようになります。また、自社の戦略的な方向性や事業の見通しに合わせて、保守・サポート戦略を策定できるようになります。

未使用ライセンスに対するさらなる柔軟性の提供

SAPは、使用していないオンプレミスライセンスをクラウドサブスクリプションへ移行したり、他のオンプレミスライセンスへ再割り当てしたり、あるいは解約したりすることで、未使用ライセンスを有効活用できる魅力的なプログラムをすでに提供しています。

さらに今回の取り組みにより、客観的に正当な理由がある場合には、お客様がライセンスをより柔軟に解約できるよう支援します。対象となるのは、大幅な人員削減、カスタマースペシフィックメンテナンスが唯一の対象 となっているソフトウェア製品、破産、事業売却、および導入失敗といったケースです。

また、SAPは単一メトリック契約の適用範囲を拡大します。これは、保守・サポート費用の算出基準となるライセンス料を、よりシンプルに計算できる代替的な方法を提供するものです。この契約がより広く利用できるようになることで、お客様は継続的なコストをこれまで以上に透明性が高く、予見可能な形で管理できるようになります。単一メトリック契約の保守・サポート費用は、その単一指標に連動して変動するため、変化するビジネス環境にもより柔軟に対応できます。 

契約条件とポリシーの簡素化

お客様が長期的なテクノロジー投資の意思決定を行う上で、契約条件やポリシーの明確さは不可欠です。こうした取り組みの一環として、SAPは主要な契約規定および適用ポリシーの一部をさらに明確化します。これにより予見可能性がさらに高まり、お客様はSAP環境を拡大する際にも、保守・サポートに関する計画を、確信を持って立てられるようになります。 

保守・サポートへの復帰条件の緩和

お客様がSAPの保守・サポートに復帰される際には、その解約期間中に提供された最新のイノベーションや修正の恩恵を受けることができます。今回の取り組みの一環として、一定期間の解約後にSAPの保守・サポートを再開されるお客様に向けて、契約条件を大幅に改善します。

具体的には、復帰の際の再開手数料を一切請求いたしません。また、解約期間中の遡及保守料については、「6カ月分」または「解約期間に相当する保守料の50%」のいずれか低い方の金額を上限とします。さらに、対象となる一部の旧製品については、遡及保守料を一切請求いたしません。これらの改善により、SAPの保守・サポートへの復帰が、よりスムーズかつ費用対効果の高いものとなります。

これらすべてのコミットメントは、欧州委員会との緊密かつ建設的な協議だけでなく、ドイツ語圏SAPユーザーグループ(DSAG)をはじめとするSAPの顧客代表組織との対話を通じて策定されました。

DSAGの会長であるイェンス・フンガースハウゼン(Jens Hungershausen)氏は、次のように語っています。「DSAGの会員企業にとって、これは正しい方向への重要な一歩です。今回提供される柔軟性により、より多くのお客様が自社のSAPシステムアーキテクチャに関して、正しい決断を下せるようになるでしょう。たとえSAPがクラウド戦略を推進しているとしても、自社にとって依然として有益であり、廃止する必要のないシステムを今後どう扱っていくかは、企業自ら判断することが重要です。私たちは、今回の進展を、SAPと私たちユーザーの間でこうした制度の改善に向けて対話を重ねてきた成果であると捉えています。これらのコミットメントはユーザー企業に具体的なメリットをもたらし、ユーザー側の選択肢と柔軟性を中心に据えながら、信頼関係を強化することになるでしょう」

 SAP の担当チームが皆様をサポートします

すべてのお客様にスムーズにお手続きいただけるよう、SAPの営業担当者やサポートチームは今回の変更点について十分な説明を受けています。詳細のご案内やご質問への回答を通じて、これらのコミットメントを公平かつ透明で、見通しの立てやすい形で適用できるよう万全の準備を整えています。システム構成の見直し、単一メトリック契約の検討、未使用ライセンスの解約、あるいは保守・サポートへの復帰条件の確認など、どのようなご要望にも、SAPの担当チームがプロセス全体を通じてご案内します。なお、これらの新ルールの適用についてお客様から異議申し立てがあった場合に備え、SAPは適切な審査・調整を行うための体制を整備します。

今後に向けて

SAPは、お客様がそれぞれのペースで、AIを活用した自律型エンタープライズへと変革を遂げていくために必要な、企業向けソフトウェアとサービスの提供に取り組んでいます。私たちはお客様自身の選択を尊重し、パートナー企業やお客様の双方にとってオープンで活気あるエコシステムを維持できるよう、継続的に努めてまいります。今回のコミットメントは、欧州委員会との建設的かつ協調的な協議の成果であり、世界中のお客様に実質的かつ有意義なメリットをお届けすることを目的として策定されました。

なお、これまでに述べたとおり、今回のコミットメントはオンプレミス製品の保守・サポートサービスに関連するものです。SAP S/4HANA CloudやRISE with SAPをはじめとするクラウド製品群は、継続的なイノベーションを通じて進化を続けており、今回の変更による影響は受けません。しかし、今回の決定によって透明性と柔軟性が向上したことは、お客様がそれぞれのペースでAIを活用した自律型エンタープライズへの変革を進めていく上での支援となります。

私たちは、今回のコミットメントがエンタープライズソフトウェア業界におけるお客様本位の取り組みの新たな基準になるものと確信しています。

適用条件を含むコミットメントの全容については、こちらをご覧ください。

また、欧州委員会によって採択されたコミットメントの全文は、欧州委員会の競争政策ウェブサイト(事案番号:AT.40823)でもご確認いただけます。

私たちは、これからもお客様のビジネスの成功を支援してまいります。

 


ステファン・スタインレ (Stefan Steinle) は、SAP のエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼グローバルカスタマーサポートの責任者です。