(本記事は、7月16日に本社で掲載されたものです)

AIの進化により、次に取るべき最適なアクションを見極めることは、これまでになく容易になりました。一方で、多くの企業では、そのアクションをチームやチャネル、さまざまな業務システムを横断して一貫して実行することが、依然として大きな課題となっています。

顧客接点の連携が進み、カスタマージャーニーが複雑化するなかで、実行面でのギャップは、顧客体験の一貫性を損ない、対応の遅れや機会損失につながる可能性があります。顧客体験(CX)の次なるフロンティアは、より多くのインサイトを生み出すことではなく、そのインサイトを組織全体で連携したアクションへと転換し、一貫して実行できるようにすることです。

SAP® Customer Experienceソリューションの最新リリースは、マーケティング、コマース、営業、サービスにわたるワークフローを連携させることで、こうした基盤の強化を支援します。これにより、あらゆる顧客接点で、より一貫性があり、組織全体で拡張可能なアクションの実行を実現します。

2026年第2四半期リリースの主なハイライトをご紹介します。各ソリューションの詳細なアップデートについては、 SAP Commerce CloudSAP Sales CloudSAP Service CloudSAP Enterprise Service Management、および、SAP Engagement Cloud のリリース総括をご覧ください。

 

 顧客の意図を確実なアクションへ

あらゆるチャネルや顧客接点において、顧客とのコミュニケーションは、より対話的でシームレスかつリアルタイムなものへと進化しています。同時に企業には、顧客とのエンゲージメントやキャンペーン管理、変化するビジネスニーズへの対応など、あらゆる場面で必要な情報に迅速にアクセスし、スムーズにアクションへ移せる環境が求められています。

  • モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)サーバーを介した対話型AIショッピング: SAP® Commerce Cloudと、顧客をサポートしたり顧客に代わってアクションを実行したりするAIエージェントとの安全な連携を実現します。AIアシスタントは、チャットや音声インターフェース上でリアルタイムの商品情報の照会や在庫状況の確認、ショッピングカートの管理、購入手続きの完了までを行うことができます。これにより、従来のECサイトの枠を超えた、よりインテリジェントで対話型の購買体験を提供します。
MCP サーバーを活用した対話型 AI ショッピング

 

  • SAP® Engagement Cloud における JouleSAP ® Early Adopter Care プログラム): SAP の会話型 AI「Joule」をキャンペーンワークフローに直接組み込むことができます。チームは複数のシステムを横断して検索することなく、製品やキャンペーンに関する質問を自然言語で行うだけで、必要な回答を迅速に得られます。また、成功したキャンペーンをゼロから作り直すことなく複製できるため、戦略立案や創造的な施策の検討、カスタマーエンゲージメントの強化に、より多くの時間を充てることが可能になります。
SAP Engagement Cloud におけるJoule

 

  • SAP Engagement Cloud における Rich Communication Services (RCS): Google がサポートする RCS を活用することで、スマートフォン標準のメッセージアプリ上で、画像や動画などのメディア、カルーセル、アクションボタンを備えたリッチなメッセージを配信し、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。企業ブランドが明示された認証済みメッセージは顧客の信頼感を高め、追加のアプリを必要とすることなく、認知から購買に至るまで顧客をスムーズに導くことができます。
RCS チャットの統合

 

パーソナライズされたエンゲージメントの大規模展開

顧客の意図を把握することは、出発点に過ぎません。エンゲージメントチャネルが拡大するなかで、マーケティング担当者には、顧客一人ひとりに最適化された関連性の高い体験を大規模に提供しながら、迅速に対応することが求められています。そのためには、スムーズなキャンペーンの実行、タイムリーなインサイトの活用、そして顧客ごとのニーズや嗜好に応じてあらゆる顧客接点を最適化できることが不可欠です。

  • AI 支援によるコンテンツ作成(パイロット版): SAP Engagement Cloud内で、ブランドの一貫性を保ちながら高品質なキャンペーンコンテンツを生成できます。オーディエンス、製品、キャンペーンのコンテキストを反映した Gemini モデルを活用することで、マーケティング担当者はさまざまなコンテンツバリエーションを迅速に作成・改善できます。これにより、パーソナライズされたキャンペーンをより迅速に立ち上げることが可能になり、コンテンツ作成にかかる手作業の負担を軽減できます。
AI 支援によるコンテンツ作成

 

  • 組み込み型オーディエンスビルダー: マーケティング担当者は、SAP Engagement Cloud 内から直接 SAP® Customer Data Platformの豊富なデータにアクセスし、活用できるようになります。この機能により、システムを切り替えたりデータアナリストの支援を待ったりすることなく、自身で高度な顧客セグメントを作成できます。行動データ、購買・取引データ、アカウント情報、顧客プロフィールデータを、事業全体のオペレーショナルデータと組み合わせることで、オムニチャネルキャンペーンの精度と関連性を高めることが可能になります。
SAP Engagement Cloud のオーディエンスビルダー

 

一貫性のある営業活動を大規模に実現

成功の鍵は、インサイトを、予測可能な収益成果につながる規律ある再現可能なアクションへと転換することにあります。営業環境がますます複雑化するなかで、データや優先順位、実行プロセスにおけるわずかな不整合であっても、売上予測の精度を損ない、商談機会の逸失につながる可能性があります。より高い一貫性と確信を持って行動するには、データの整合性を高め、組織全体で行動の方向性を揃え、より明確な指針を提供することが求められます。

  • エージェント機能による商談サマリー: 営業チームが商談の状況を迅速に評価するために必要な情報を提供します。SAP® Sales Cloudのこの機能は、顧客エンゲージメントのシグナル、営業活動の状況、進捗指標をリアルタイムに集約・可視化します。これにより、営業担当者はリスクを早期に把握し、効果的に優先順位を付けながら、商談の勢いを維持することができます。
  • SAP Sales Cloud フィールドセールスアドオン: 売上の最大化を実現するAIで強化されたインテリジェントなプロセスにより、小売店舗での実行力を高め、営業活動のスピード向上と適切な商品配置を支援します。営業担当者は、訪問計画や店舗での活動を最適化できるほか、インサイトを活用して営業パフォーマンスを向上させ、顧客や店舗とのやり取りを最適化できます。消費財企業においては、商品の欠品防止や販促施策の徹底、マーチャンダイジングの効果向上に貢献します。また、現場の営業チームは店舗ごとの実行状況を可視化できるため、ブランド展開の一貫性を高め、店頭での販売実績の向上につなげることができます。
SAP Sales Cloud フィールドセールスアドオン

 

  • SAP® Incentive Management 営業パフォーマンス管理ソリューションの一部である SAP Incentive Management は、営業チームのパフォーマンス向上を支援します。リアルタイムな業績インサイト、異議申し立て管理、モチベーション向上につながる報酬制度を提供するとともに、売上拡大と事業成長を支える収益性の高い行動を促進します。柔軟なツールを活用することで、インセンティブ報酬管理を効率化し、プランの設計・検証・導入を迅速に行うことができます。さらに、プランの最適化や成果の最大化、実行につながるインサイトの発見を支援する AI 推奨機能も利用できます。
SAP Incentive Management

 

  • Consumer Products Intelligence(SAP Early Adopter Care プログラム):消費財企業が保有する膨大な売上データや販促関連データを、より的確な意思決定に活用できるよう支援します。アナリティクスと AI を活用することで、販売促進費の費用対効果を高め、売上と利益率を向上させるとともに、手作業の負担を軽減します。

 

 組織全体でサービス提供プロセスを標準化

チャネルの増加や問い合わせの多様化により業務が複雑化するなか、サポート部門にはこれまで以上に迅速で確実な対応が求められています。これを実現するには、サービスの利用手順をシンプルにし、組織全体で統一されたプロセスを確立することが不可欠です。

  • セルフサービスカタログ:裏側の処理プロセスを意識することなく、従業員が必要なサービスや情報を素早く見つけられるようにします。SAP Enterprise Service Management の直感的でわかりやすいカタログ機能により、リクエストは必要な情報とともに自動的に適切な担当部署へルーティングされ、対応の遅延を抑えて解決までの時間を短縮します。
セルフサービスカタログ

 

  • コンテンツパッケージフレームワーク: SAP Enterprise Service Management のフレームワークを活用することで、各部門向けサービスを迅速かつ柔軟に展開できます。問い合わせタイプ、ワークフロー、カタログなどの事前構築された再利用可能な設定を活用することで、サービスをより迅速に展開できるとともに、全社的な導入をシンプルに進めることができます。このアプローチにより、導入・運用の複雑さを軽減し、関係部門の主体的な運用を支援するとともに、組織全体への定着を加速できます。なお、人事サービス向けのコンテンツパッケージも今後提供予定です。
  • SAP Service Cloud および SAP Enterprise Service Management のメールエディタ: 顧客とのやり取りの品質を高く保ちながら、メールの作成・編集・管理をより効率的に行えます。直感的でモダンなメールエディタは、AI 活用を前提とした設計になっています。
SAP Service Cloud のEメールエディタ

 

  • 顧客ハブからの営業オブジェクト作成: SAP Service Cloud の作業画面から、見込み顧客、案件、アポイントメント、受注などを直接作成・管理できます。この機能により、一つひとつの顧客対応を、新たな価値創出の機会へとつなげることができます。
Agent Desktop での新規案件の作成

 

連携された受注管理の迅速化

インサイトをアクションにつなげるには、ビジネスの変化に応じて柔軟に対応できるシステム連携が欠かせません。受注チャネル、フルフィルメントネットワーク、テクノロジー環境が拡大する中、企業には、それらの変化に対応できる統合基盤と受注管理機能が求められています。これにより、各チームは変化に迅速に対応できるようになります。

  • フローコネクターSAP® Order Management Servicesと他の SAP ソリューション、およびサードパーティー製品との間でスムーズなデータ連携を実現します。この事前定義済みの機能により、ビジネスユーザーは IT 部門の関与を最小限に抑えながら、独自の業務フローや連携を設定できます。これにより、企業全体にわたる連携されたオーダーマネジメントプロセスを構築できます。
SAP Order Management Services のフローコネクター

 

大規模な実行:顧客体験における次なる優位性

AI が日常業務に組み込まれるなか、競争力の源泉は、インサイトを生み出すことから、それを確実に実行へ移すことへと移りつつあります。

先日発表された Parloa社および Google Cloudとの戦略的パートナーシップは、AI を活用したサービス、コマース、カスタマーエンゲージメントを、業務システムやビジネスデータと直接連携させることで、この実行重視のアプローチをさらに推進するものです。これにより企業は、個別の対応やインサイトの活用にとどまることなく、それらを連携したアクションへとつなげられるようになります。そして、課題解決の迅速化、顧客体験の向上、さらにはビジネス成果の拡大を実現できるようになるのです。

 

2026年第2 四半期:SAP CX 新機能のご案内

新機能の詳細やご活用方法については、以下の SAP Help Documentationをご覧ください。


バラジ・バラサブラマニアン (Balaji Balasubramanian) は、SAP Customer Experience および消費財業界担当プレジデント兼最高製品責任者です。