SAP Japan プレスルーム

SOCIAL INNOVATION CONNECT Vol.2 ー大企業が取り組むソーシャルイノベーション 旭化成およびSAPジャパン事例ー

Portrait of a group of confident businesspeople working together in a modern office

※旧ブログサイトよりの転載ブログです。部分的にリンクが機能しない箇所があります。予めご了承くださいますようお願い致します。


ナショナルアジェンダ編集部の緒方です。2022年3月17日(木)にVenture’s Cafe Tokyoで開催された「SOCIAL INNOVATION CONNECT」のブログ第二弾は「コーポレートから起こすソーシャルイノベーション」についてレポートします。このセッションでは、Venture Café Tokyo の藤田さんをモデレーターに、大企業が取り組むソーシャルイノベーションについて、SAPジャパン吉元さんと旭化成の奈木野さんからそれぞれの企業での具体的な取組みについて紹介いただきました。

セッション1: コーポレートから起こすソーシャルイノベーション

· 奈木野 豪秀氏 旭化成株式会社 デジタル共創本部 共創戦略推進部 部長
· 吉元 宣裕 SAPジャパン株式会社 SAPイノベーションフィールド福島 所長
· 藤田 勝利氏 Venture Café Tokyo 戦略ディレクター | 桃山学院大学ビジネスデザイン学部 特任教授 | PROJECT INITIATIVE 株式会社 代表取締役

 

社会ファーストを重視する企業の時代へ

まずは、SAPジャパン吉元さんのお話。SAPジャパンは、会津若松市のスマートシティを支援するSAPイノベーションフィールド福島」にて「ものづくり」「教育」「イノベーション」の3つの分野で取り組んでいます。

「ものづくり」では、会津地域の70社以上の中小製造業が構成する会津産業ネットワークフォーラムとともに、これらの企業が共通で活用できるERPを提供する中小製造業務プラットフォームを構築、運営し、デジタル活用による中小企業の生産性向上を目指しています。

「教育」では、会津地域で活動する「寺子屋方丈舎」「Coder Dojo Aizu」および「会津産業価値フォーラム」と共同で「寺子屋Hana」という教育拠点をたちあげてプログラミング教室を提供しています。SAPはノウハウなどを提供し、地元の方々が地元の方々のためにプログラミングを実施できる状況を実現することで地方における教育格差の解消を目指しています。

「イノベーション」では一例としてエネルギー領域を取り上げました。地産地消でカーボンニュートラルの実現をめざすために、電力、石油、モビリティ、テクノロジーなどの異なる企業が参画して取組みを推進しています。会津若松地域は、再生エネルギーの資源が豊富で、多様な業界や規模の企業が集っている貴重な地域なのでその利点をフルに活用した活動を行っています。

いずれの取り組みも社会が抱える課題に対してさまざまな企業や団体と取り組む例でした。21世紀型経営モデルを考えると、GAFAがユーザーファーストに注力して大きく急速に成長した時代のあとにくるのは、社会ファーストを重視する企業の時代ではと吉元さんは考えています。社会をより良くすることで、企業のビジネスも成長するという循環を作る時代を目指していきたいと熱い思いを語られていました。

多種多様な企業と共創で推進するイノベーション

次に旭化成 奈木野さんのお話。旭化成は全社をあげてDXを推進中で、デジタル導入期(2018年~)、デジタル展開期(2020年~)、デジタル創造期(2022年~)、デジタルノーマル期(2024年~)の4つのフェーズに分けて、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3つの事業領域で持続可能な社会の実現に向けた価値提供を目指しています。今回はデジタル創造期における取組みについてお話いただきました。

1に真正品のみがエンドユーザーに届くサプライチェーンの実現について。旭化成が保有する微細加工技術とブロックチェーン技術を組み合わせることにより、偽造品の流入を防止し、真正品だけを消費者に届けるためのプラットフォーム構築に取り組んでいます。

第2にサーキュラーエコノミーの実現について。ブロックチェーンを活用したプラスチック資源循環プラットフォームを開発しています。富山環境、メビウスパッケージ、ライオンなど業界を超えた企業との共創を通じて、消費者の行動変容を促す仕組みづくりに注力しています。

第3にカーボンフットプリントの最小化について。旭化成の工場で排出されるCO2の現状把握のために、カーボンフットプリントの見える化と削減に取り組んでいます。削減したら終わりではなく、削減のノウハウをほかの化学企業に提供したり、削減して得たメリットを地域に還元したり、アジア地域にもノウハウを共有したり、先を見据えた取り組みも検討しています。

第4に高齢化が進む中で自分の足で歩ける健康長寿のまち「延岡」を実現するために産学連携の取組みを実施しています。

第5に、蛍が飛ぶ「あさひ・いのちの森」というセンシングの技術を活用したプロジェクトを富士支社で行っています。

第6に、地震計と地盤データ、建物構造情報を組み合わせた先進防災システムの構築です。へーベルハウスに取り付けた地震計と国土地理院の地盤情報を組み合わせて、50メートル四方のメッシュでの震度を推定し、建物の構造情報から地震発生の際に建物の被害の大きさを推定し、優先的な災害時支援を可能とする仕組みを目指しています。

いずれの取り組みとも旭化成1社でできることは限界があり、「共創」をキーワードに旭化成のDXを推進する上で必要なことは多種多様な企業と共に創り上げていくというメッセージが印象的でした。

「ソーシャル・イノベーション」とは?

モデレーターの藤田さんからの「ソーシャルイノベーションとは?」という問いかけに対して、吉元さんは、企業内だけに閉じず、企業間で取り組むこと、奈木野さんからはどういう社会でありたいのかをお客様やパートナー企業と描いていくことという回答があり、二人ともほかのステークホルダーとの連携がカギとのメッセージがありました。

さらに、藤田さんからの「2人とも2002年に就職後、社会で起きた大きなパラダイム変化についてこられた背景は?」との鋭い質問に、吉元さんは自分のパーパス実現のために会社を利用すること、会社もそれを懐深く受け止めてくれたとの回答。奈木野さんはグリーン水素のプロジェクトにかかわり、社会に貢献できるすごい力が旭化成にあることを実感し、自分の観点が大きく変わったことをあげていました。

「大企業でソーシャルイノベーションを推進する人材をどのように育成しているのか?」という藤田さんの問いかけには、吉元さんはSAP10年前からデザインシンキングという新たなアイデア創出のための手法を全社員に推進していることと、現在社内で吉元さんが推進している社会をテーマにした中期変革プログラムでボトムアップで社員に働きかけて人材育成に取り組んでいるとのこと。奈木野さんは、社内でデジタル人材4万人計画を推進するとともに複数のプロジェクトでDX推進中。プロジェクトでは、現場の社員にデジタルやデザイン思考を学んでもらうと同時に、プロジェクトメンバーは現場を学ぶと双方にとって学ぶ機会になっているとのことでした。

 

VUCAの時代を生き抜く働き方とは

今回、登壇いただいたのは、奇しくも同じ2002年に新卒で大企業に入社したお2人。社会人になって20年の歩みの中で、社会の急速な変化のうねりに直面し、企業のビジネスも大きく変革してきました。そのような中で、お2人は常に自らのパーパスを見極めながら、企業のみならず社会に寄与する活動をリードされてきました。先行きが不透明で予測不能なVUCAの時代を生き抜く働き方の形を提示してくださり、大変刺激になりました。今回は、久方ぶりに対面でのイベントでした。カジュアルに設営された会場では多くの参加者が非常に熱心に本セッションに聴き入っていました。さらに後半の質疑応答のパートでは会場からも積極的に質問が出て、とても盛り上がりました。

ナショナルアジェンダ編集部 緒方 麻弓子

モバイルバージョンを終了