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政府、人的資本情報の有報記載を2023年度から義務付けへ

5月14日の日本経済新聞の記事によれば、政府は今夏にも企業に対し、人材への投資にかかわる19項目の経営情報を、開示するよう求める方針とのことです。

対象情報は、従業員の育成、多様性や健康など多岐にわたります。うち一部は2023年度にも有価証券報告書への記載が義務付けられます。

今回の記事に限らず、人的資本に対する注目度は日々高まっており、関係する記事や報道を目にしない日はありません。

本稿では、人的資本経営をめぐる国内外の動きを振り返りながら、その動きの背景を正しく理解した上で何をすべきか、考えていきたいと思います。

 

企業の価値を人が左右する

21世紀型のポスト大量生産・大量消費社会では、企業の価値の大部分が無形資産によって占められるようになりました。

無形資産とは、特許などの知的資産、従業員の持つ技術などの人的資産等、人によって作り出されるものであるため、いまや企業の価値を評価するためには、その企業の人的資本の状況を評価する必要があります。

時価総額に占める無形資産の割合

(出典:内閣官房 非財務情報可視化研究会(第1回)基礎資料

これを反映して、人的資本の状況は投資家が企業価値を評価する基準としても重要性を増しています。企業が競争力を高め価値を創造できるかどうか、将来の成長を推し量る指標として、人的資本情報が期待されているのです。

機関投資家の注目

(出典:内閣官房 非財務情報可視化研究会(第1回)基礎資料

2020年以降の人的資本情報の開示をめぐる動き 

直近2年ほどの間に、代表的なものだけを見ても以下のように多数、人的資本情報の開示に向けた動きが国内外で見られました。(以下、時系列で記載)

2020年8月 米国証券取引委員会が、上場企業に対し人的資本情報の開示を義務付け

2020年9月 人材版伊藤レポートにおいて、人的資本を企業価値の源泉と位置付け、経営戦略の下で人的資本の価値を引き出す施策の必要性が説かれた。

2021年6月 改訂版コーポレートガバナンスコードにおいて、「人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである」と付記された。

2022年4月 岸田総理が文藝春秋寄稿文「私が目指す「新しい資本主義」のグランドデザイン」の中で、人的資本への投資の重要性と、人的資本価値の評価方法をまとめる方針に言及。

2022年5月 人材版伊藤レポート2.0において、人的資本経営の実現に向けた具体的な取り組みを例示。

 

人事の現場はスキルの可視化やアップデートに課題感

一方で、企業の中で人事を担っている担当者へのアンケート調査では、自社の人的資本の状況把握やデータ化が課題となっている実態が明らかになっています。

情報開示と、それに続く人的資本の価値を高める施策のために、人財情報のデータ化は避けて通れないステップと言えます。

人的資本経営を実践していく上での課題

(出典:リクルート 人的資本経営の潮流と論点 2022

 

第一人者が語る人的資本経営の本質

以上のように人的資本情報への関心は高まり、企業にとって情報開示の義務化は差し迫った課題となっていますが、この流れをどう理解し、企業の経営陣や人事部門がどのように準備していけばいいのか、入手できる情報は多くないのが現状です。

この度SAPは、6月29日(水)に人的資本経営の第一人者3名をお招きし、オンラインセミナーを実施します。

各企業が対応を模索する中で、そもそも人的資本経営が重要視される背景や本質、またその意義とは何か。また、開示に向けて日本が目指す人材データの標準化とは何か。これらについて、最新の動向を押さえながら、みなさまと紐解いていきます。