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去る2022年6月29日(水)、「第一人者が語る人的資本経営の本質と開示への挑戦」と題し、人的資本に関する有識者様にご登壇いただき、人的資本経営が重要視されている背景や本質、その意義について学ぶウェビナーを開催しました。総勢160名以上の方にご参加いただいたことから、人的資本経営への興味・関心の高さがうかがえました。
ご登壇者
本記事では、当日のウェビナーのハイライトをお伝え致します。
本ウェビナーはオンデマンドでもご視聴いただけますので、見逃した方はぜひご覧下さい。
オンデマンド視聴はこちら
第一部 “人的資本”開示にどのように向き合うべきか(基調講演)
人的資本の開示のポイントは「法定(強制)開示」項目よりも「自発開示」項目
有価証券報告書に、すべての企業が開示すべき「①ガバナンス」「②リスク管理」と、各企業が重要性を判断し開示する「③戦略」「④指標と目標」の4つを一体的に開示する記載欄が創設された。 “人的資本”は「③戦略」と「④指標と目標」に記載が求められる。
開示のポイントは、自発開示項目である。「戦略」と「指標と目標」の策定を各企業の言葉で説明することが求められている。
人的資本開示において、各企業に最も求められている本質は何か?
コーポレートガバナンスが求めている事は、事業ポートフォリオの再構築(≒非連続な成長)。事業ポートフォリオの再構築(≒変革)に合わせ、資産である従業員の再配置・再教育(リスキル)をどう実現していくか、である。
一方で、現状のスキルの可視化も、将来必要なスキルの明確化もされていないのが各企業の現状であり、どの人財に対し、どのスキルを身につけてもらうかが明確でない。これらを明確化・可視化することは、企業の将来性を判断する材料となり、投資家の投資機会にもつながる。
企業と投資家が重要視している情報にギャップあり
企業が重要視している投資は「設備投資」。一方、投資家が重要視しているのは「人材投資」であり、認識ギャップが大きい。
また、投資家は、投資が損益計算書や株価にいつ反映されるか、“未”財務情報を求めている。残念ながら、現在、日本企業の人材投資に関する開示はガラパゴス化している。
ガラパゴスを美化してはいけない、日本企業の価値が世界の中で落ち続けている
世界においてもアジアにおいても、日本企業の価値は低くなっている。日本固有の慣習や価値観に基づいて“ガラパゴス化”された情報開示は、もうグローバルの投資家には通用しない。
いつまでも“美化された”日本固有の情報に拘っているがゆえに、日本企業の価値を下げていると言ってもよい。
では、どのように開示していけばよいか?
理想としては、役員から将来世代(新卒など)までに関する情報を体系的に、かつ一気通貫の“人的資本”として開示していくことが求められる。
欧米をはじめ海外企業の事例としては、各役職のジェンダーや人種、また従業員1人にかけた総費用(給与、トレーニングなど)を詳細に開示、また自社結果だけでなく他社比較として従業員エンゲージメントの優位性を開示するなど、先進的な取り組みが見られる。
第二部 人的資本経営の本質や意義、またスキル定義の重要性や日本における標準化活動について(パネルディスカッション)
情報開示の中でも“女性”に焦点が当たることが多いことに対し、女性から見てどう思うか?
小澤氏:女性のキャリアに焦点が当たることは良い事。ただ一方で、主要ポストに“女性”を登用する際、“男性”と同じような役割や期待値を求めるのではなく、今一度女性リーダーの価値を見直してもよい。また、女性本人へのメンタルケアやサポートなども同時に担保していくべき。
近年の人事資本に関する企業の取り組みについて
加藤氏:統合報告書について、人件費など基本的な情報すら可視化されていない。そんな中で人的資本が議論されていることに疑問を感じている。
小澤氏:一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会のワークグループを通じ、実態や課題を見つけながら研究を深めている。関心は高まっているものの、どの企業もまだまだ悩み中である。
円谷氏:今は日本でも手探りのところが多いが、まずは数値化していくことが大切。早期に取り組むことをお奨めしたい。先んじて取り組んだ企業は、世間からの評価を得ていく。
小澤氏:最近の人的資本に関する企業の報告書を見た際、人財への投資について書いているのはほんの4分の1程度だった。
円谷氏:日本は人的資本=ジェンダーに偏りがちで、欧米に比べても大きく偏っている。もっと多角的視野で経営に結びつくものは何か、という観点から項目を整理したほうがよい。
人的資本に関る情報開示をしないことによるデメリットは何か?
加藤氏:現状は、コンプライアンス違反件数など、自分達はひどい会社ではない、といったトーンの発表が多い。また、自社には素晴らしい人財がいて素晴らしい製品やサービスを提供することができる、との発表が多い。なぜ、それらが企業の強さに結びつくのか?の理由が一切ない。
円谷氏:例えばESG投資について、投資家はAIを使って、どの企業がどれくらい投資しているかを見て投資判断をしている。そのため、そもそもESG投資の記載がない企業は、投資対象にすらされなくなっている。
金森:海外のブルーカラーと日本の技能員と言われる従業員の質は全く違う。それが同じ“ブルーカラー”と表現される事には違和感を感じる。本当の人財の力を可視化・開示する事は非常に大事。
経産省が進める日本におけるスキル標準化活動について
加藤氏:どういう特徴を持ってどんなスキルを持っていて何ができる人なのか?また、将来どんな人が必要なのか?といった情報がほとんどない中では、企業の価値を正しく説明できないのでは?ディスカウントされるのでは?と金融庁も経産省も心配をしている。
円谷氏:学生から教授になる為に必要なスキルを聞かれた際に、明確なスキルについて答えられなかった。ある意味、多くの企業で職の定義が曖昧化されていると思う。これは海外から見たら考えられない。
小澤氏:近年の若い人たちは、そもそもどんなスキルをつけるべきなのかが理解できないと、その環境を魅力的に思えないことがある。若手育成という観点でも、やはりスキルの可視化は重要。
スキルマネジメントを実現していく為には
金森:まずは、将来と現在の人財ギャップを量と質で可視化することが重要。そのうえで、そのギャップを埋めるアクションを明確にすることが大切。そして、然るべきステークホルダーが常にそれらの進捗を確認しながら、将来の事業ポートフォリオを実現するための、人財のポートフォリオを構築していくことが重要。
いかがでしたか? こちらのウェビナーはオンデマンドでご視聴いただけますので、是非ご利用下さい。