ナショナルアジェンダ編集部の村越です。2022年5月30日(月)に、第一部はオンライン(Zoom)、第二部はSAP Experience Centerにてオンサイトで、ハイブリット形式で「日本酒を盛り上げて地方創生に貢献しよう!」が開催されました。

SAPジャパンではナショナルアジェンダ活動として、イノベーションによる社会課題解決を推進しています。多くの社員に社会課題解決に積極的に取り組んでもらうために、身近で楽しんで取り組める社会課題解決活動として「日本酒」と「地方創生」をテーマに本イベントが企画されました。日本酒に興味のある方々がカジュアルな環境で学び合い、繋がり、思いを共有する場所づくりを目指しました。オンライン、現地合わせて第一部は55名、第二部は35名のSAP社員に参加していただきました。


第一部 : 日本酒インスピレーショントーク(榮川酒造)

宮森 優治 氏 | 榮川酒造株式会社 名誉会長
宮森 優治 氏 | 榮川酒造株式会社 名誉会長
第一部は、榮川酒造の創業家である宮森名誉会長より日本酒製造&販売における課題について、蔵元自ら語っていただきました。

  • 過去10年で全体的にアルコール消費量が減っている中で、他のアルコール類は伸びているが、日本酒だけが1人負けしている。
  • 日本酒の消費が減少している主な原因としてライフスタイルの変化がある。炭酸飲料で育った世代が炭酸を好み、昭和の風景だった一升瓶におわんを抱えて愚痴をこぼすといった世代が高齢化してきている。
  • 小売免許が自由化されることで一般酒販売店が減り、コンビニ、スーパー、(ドラッグストア)等での販売が伸びてきている。
  • まだまだ分母は小さいが、海外への出荷が伸びている。しかし、コストが見えずどう取り組んでいいか悩んでいる。
  • 昭和の造れば売れる時代が長かったため、顧客志向、マーケティング思考が欠けている。
  • 日本酒の魅力を再定義し、ビジュアルとわかりやすい言葉で価値を伝える必要がある。


これまで、社内では「社会課題解決と自分達の現業が結びつかない」「取り組みたい気持ちはあるが、課題が身近に感じられない」という意見がありました。今回、宮森名誉会長より日本酒製造&販売における現場での率直なご意見をお伺いし、課題の要因は、消費者である私たち自身のライフスタイルの変化が大きく影響していると分かりました。我々個人が自分事として「地方創生のために何ができるか」を考え具体的な活動に繋げることで、現代の日本酒製造&販売における社会課題解決に貢献できるのではないかと考えています。


第二部 : 飲み比べ体験とデザインシンキング

第二部では、日本酒IoTディスペンサー「くらっと」を開発されたサンデンリテール上畑氏を迎え、「くらっと」の開発秘話、今後の展望などをご講演いただきつつ、日本酒の試飲を行いました。まずは自身のスマホから試飲用アプリを開いてログイン後、個人のQRコード表示し「くらっと」にかざすことで、20ccの日本酒がグラスに注がれる仕組みになっています。これにより、リアルタイムで誰が、いつ、どのお酒を、どれだけ飲んだかが、データとして収集&記録されていきます。また参加者もどの日本酒をどれだけの日本酒を飲んだのか、さらにその味や香りをデータとして登録することで、自分の好みのお酒を選んで試飲を楽しみました。

  • IoTディスペンサー「くらっと」

上畑 祐吾 氏 | サンデン・リテールシステム株式会社
上畑 祐吾 氏 | サンデン・リテールシステム株式会社

単に“日本酒が美味しかった“だけで終わらないように、試飲のあとは課題の深堀りとしてLife Centred Designのフレームを用いたデザインシンキングワークショップを実施しました。榮川酒造様のお話や試飲を体験するだけでなく、そこで感じた地方や伝統産業である日本酒の課題をフレームに落とし、各チームでアウトプットすることにより自分たちの認識を形にして整理しました。

日本酒とデジタルを結びつけた体験(Experience)をすることで、どのようにデジタルが社会課題解決に貢献できるのか、個人として日本酒の現状に対する理解を深めつつ、自分ごととして社会課題や地方創生について取り組むきっかけになったと考えています。

IoTディスペンサー「くらっと」とSAPのノーコードツールであるAppGyverで作成したQRコードを連携。味や香りの登録をQualtricsで実現しました

参加者&開催者の声

《ワークショップに参加された方からのコメント》

  • 日本酒を楽しむだけでなく、社会課題に結びつけて考えるきっかけになりました。またこのような機会があれば参加したいです!
  • 非常に有意義なイベントでした。おいしい日本酒が試飲できたことはもちろんですが、お酒を交えた気軽な雰囲気で社内の様々な部署の方と話をし、日本酒に関する社会課題についてデザインシンキングができたことがとてもよかったです。

《開催リーダーから一言》

  • 地方創生エンタメTeamの企画第一弾として、今回のイベントをTeamで企画しました。社会課題は頭で理解できますが、中々「自分事」として考える事が難しいと感じています。そんな中で、地方の良いものが凝縮した日本酒をキーにして「楽しく、体験しながら、デジタルも活用して、日本酒を盛り上げるアイディアを考える」事で、皆さんの意識が少しでも変化したとしたら大成功です。
  • 今回イベントの企画と、第二部のファシリテーターを担当させていただきました。自分は残念ながらお酒は飲めませんが、“酒は人をつなぐ”、“日本酒は日本の宝”と改めて感じました。コロナ禍で物理的なコミュニケーションの機会が減っていますが、SETメンバーの方々と、若手社員がおちょこを片手に談笑している姿が印象的でした。
  • 第一部では、榮川酒宮森名誉会長から日本酒製造および販売における課題をお伺いでき、非常に有意義な時間でした。1次情報に直接アクセスする重要さを改めて痛感しました。第二部では、若手社員からSETメンバーまで多くの社員の方に参加していただき誠にありがとうございました。今回のイベントで終わらせるのではなく、今後の具体的な活動に繋げていきたいと思います。

最後に

今回は、コロナ禍において、久しぶりに対面でのイベントでした。第一部、第二部共に多くの参加者が非常に熱心にセッションに聴き入っており、日本酒を通じて身近な視点から地方創生を考えるきっかけとなりました。限られた人のみの活動ではなく、より多くの人が身近に課題を考え実行できるよう、今後ナショナルアジェンダでは活動の幅をさらに広げていきたいと考えています。

本イベント全体の満足度は94.74%と非常に高評価でした。これからも楽しく身近に社会課題と自分達の仕事を繋げられる機会を創出していきます!


ナショナルアジェンダ編集部 村越 萌々子