採用の現場でありがちなギャップ
キャリア採用担当の方にとって、採用要件定義というのは頭を悩ませる業務の一つではないでしょうか?
本稿では、採用活動に悩まれているキャリア採用担当の皆様に、成功する採用要件定義の作り方をアドバイスしたいと思います。
キャリア採用の場合、採用する配属先部署は、入社後にすぐに活躍できるであろう即戦力を求めることが多いかと思います。しかし採用要件を決めるために採用したい人材イメージを配属先部署に確認すると、あれもこれもできるスキル・経験を保有した完璧な人材を採用したい、という難易度の高い要求が上がってきたりします。
一方で、自部門でしっかり育てるから、社会人経験を持ちさえすれば誰でもよい、という何とも定義しがたい要求を上げてくる場合もあったりします。
実際に部門から上がってきた採用要件で求人募集をかけ、契約している人材エージェントに候補者の紹介を依頼すると、高度人材求人であれば「そんな人材は転職市場にはいない」「もし応募の手があがったらご紹介しますね」と言われ、半年間、音沙汰がなくなる、ということもあります。
一方で未経験可能求人であれば、すぐに多くの応募者から手が挙がってきます。ところが、いざ求人部署へ選考依頼をすると、「転職歴が多いからすぐに辞めてしまいそう」「なんとなくピンとこない」という要求時にはなかった理由で書類選考を不合格にしてきます。何とか面接に進められたとしても、今度は「当社への志望動機がなかった」「経験者だと思って期待したけど、期待するほどではなかった」と言われる始末。そうなると今度は、人材エージェントから「未経験者OKではなかったのですか?」と言われ、「採用要件が異なるようなので、当面人材のご紹介は控えておきますね」、とまたしても音沙汰がなくなってしまいます。
採用要件を言語化して関係者にわかりやすく伝えるということは、このようにとても難しいことなのです。
採用要件を決める3つのポイント
採用要件を決めるにあたっては、①採用背景 ②採用要件の分解 ③採用市場との需給 という3つのポイントがあります。
採用要件 イコール 「採用したい人」の要件と考えられますが、実際のところは「採用できる人」にどう落ち着かせられるか、が採用確度を高めるポイントになります。
ここからは、そのポイントを順を追ってお伝えします。
① 採用背景
前提として大事なのが、採用背景・採用目的です。
なぜキャリア採用で人員を補強したいのか、今年の業績アップのため短期観点なのか、3年後に迎えるAさんの定年退職の後継者確保のための長期観点なのか。それとも、イノベーションを起こすための組織活性化が目的なのか。そして、具体的に何の業務・役割を担っていってもらうのか。
業務内容に加えて、こうした採用の背景や目的を把握することによって、入社後の立ち位置と戦力化に際して期待される時間軸がわかるため、採用要件における各要素の優先度が決まっていきます。
② 採用要件の分解
次に必要なのが「採用したい人」の要件を細かく要素分解していくことです。
- 高度人材であれば、専門分野、開発工程、プロジェクトマネジメントなどの専門的スキル・経験
- 周りを巻き込みながらチームをリードしていくキャプテンシーなどのソフトスキル
- 個人で黙々と業務に向き合うのか、チームでの達成を目指すのか、などのワークスタイル
- 同領域を突き詰めて欲しいのか、いろんな分野にチャレンジして欲しいのか、などの業務志向
- 将来的にも現場で実務に関わり続けて欲しいのか、マネジメントにステップアップさせたいか、などのキャリア志向
このように分解した各要素を、採用背景で整理した具体的な業務や立ち位置、戦力化までの時間軸と照らし合わせ、要素の優先順位、Must/Wantを整理していきます。
③ 採用市場との需給
採用要件が整理できたら、採用可能性の検証作業です。
結局のところ、いくら採用したい人材が明確に整理されたとしても、転職市場に該当する人材がいなければ、アクションを起こしていくら待っても採用はできません。
よって、以下のようなマーケティングを行うことも大事な作業の一つとなります。
- 当該の候補者はどのくらいの人数がいるのか?
- 求人をしている企業にはどんなところがあるのか?(採用競合はどんなところになるのか?)
- 実際に自分たちが採用したい人は転職市場ではどのくらいの採用倍率なのか、自分たちはその中で打ち勝っていけるのか?
なお、この作業は自社では難しいので、人材エージェントに調査を依頼することになります。
(スカウトサービスを利用していれば、そのデータベースで調査することも可能です)
採用要件定義後の落とし穴
要件が整理され、採用環境もわかり、勝ち目が見え、これですぐに採用できるであろう期待を胸に求人を開始すると、新たな問題が発生します。採用プロセスが設計されていなかった、あるいは、プロセスに対する関係者との合意形成ができていなかったために採用活動がうまくいかない、というのもよくある話です。
有力な候補者から多数応募がくるものの、「もっと良い人がいるのでは?」、「他の人と比較しないと決められない」、「なぜこの人を面接通過させたのか?」と各面接官から声が挙がるのです。
- 書類選考の通過率が30%と低い
- せっかく1次面接を通過した候補者が最終面接でことごとく見送りになってしまう
- 採用活動を見直そうにも不合格の理由が具体的になっておらず分析ができない
こういったことはまさに採用プロセスにおける計画不足、合意形成不足が要因で起こります。
採用活動の進め方、プロセスの中での対応事項、依頼事項を事前に関係者へ共有しておくことも大事なポイントです。
たとえば、
- 今回の求人要件では、転職市場の状況から鑑みて、1か月で10名ぐらいの応募を妥当値と定める
- 時間をかけても追加応募者がなかなか上がってこない場合、基本的にはこの10名の候補者群の中で採用につなげる
- 1次面接は5名程度を同じタイミングで設定する(比較して選考することが可能)
- 当社が内定を出しても、その候補者は他にも2~3社からも内定をもらうことが想定されるため、当社を選んでいただくためにも、面接の中で事業の将来性や裁量の大きさに魅力に感じてもらうようにアピールする
など、必要な要件や優先順位を付けた要件に対して、どの選考ステップで、誰が、どのように見極めていくかを共有しておく必要があります。
最後に
人的資本経営が本格的に進み、事業成長に向けた人材調達に対する経営からの期待や市場からの注目度が高まる中、キャリア採用担当者への要望も高まっていると思います。採用活動に悩まれているキャリア採用担当の皆様に、本稿が少しでも参考になれば幸いです。
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