オムロン:SAPの支出管理ソリューションで業務と組織の変革に挑むストーリー ~ SAP Spend Connect Innovation Day 2024報告

フィーチャー

2024年7月に催されたSAPのプライベートイベント「SAP Spend Connect Innovation Day 2024」では、SAPが提供する支出管理ソリューションの事例セッションがさまざまに展開されました。ここではその中からオムロン様の取り組みついて紹介します。


「 SAP Ariba」の米日導入により全社支出管理への道筋を拓く

オムロンでは2020年に米国拠点の間接材調達・購買の効率化に向けて「SAP Ariba」を導入し、2022年には日本でのSAP Aribaの導入を成功させています。今回のSAP Spend Connect Innovation Dayでは、オムロンでSAP Aribaのグローバル展開をリードするグローバル理財本部 理財DX推進部 間接材購買プロセス改革プロジェクト グローバルリーダー、佐々木 正男氏がSAPとの対談に臨み、SAP Ariba導入の効果と活用の展望について明かしてくれました。

(以下、スピーカーの講演風景カットを挿入)

 

オムロン株式会社
グローバル理財本部 理財DX推進部
間接材購買プロセス改革プロジェクト
グローバルリーダー
佐々木 正男 氏

 

 

オムロンは2023年年度連結で8,188億円を売り上げ、うち57%は国外での売上です。また、カンパニー制を敷いており、各カンパニーが制御機器、ヘルスケア、社会システム、電子部品、データソリューションといった事業をそれぞれ担っています。そうした同社が「SAP Ariba」の導入に乗り出した経緯について佐々木氏は、こう説明します。

「当社にはグローバルのERPを『SAP S/4HANA』に統一する計画があり、それに先立つかたちで、『SAP Ariba』と経費精算を自動化する『SAP Concur』をグローバルに導入するというプロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトのもと、パイロットケースとして2020年から米国拠点でのSAP Aribaの活用が始まり、一方の日本では2020年からSAP Concurの使用を始めました。そして2022年からSAP Ariba導入が日本で、SAP Concurの導入を米国やアジア・パシフィックで進めたかたちです」

同社では、こうした業務システムのグローバル展開を図る際、プロキュアメント、ファイナンス、ITのグローバルリーダーで構成される「チェンジコントロールボード(CCB)」と呼ばれるチームが、システムのグローバルデザインの検討・承認を行います。このチームによって、導入する新システムに業務を合わせる「フィットトゥースタンダード」と各国固有の業務要件への対応との調整が行われています。

また、同社では、SAP Aribaによる業務改善の進捗をKPIによって管理する取り組みも展開。そのKPIとして「カタログ仕入先数」「カタログ化率」「ANID仕入先数」「注文書あり発注率」「例外照合率」「ユーザー問い合わせ率」「仕入先問い合わせ率」「SAP Ariba利用率」という8項目の指標を設定しています(図1)。

図1:SAP Ariba活用でオムロンが目指す姿とKPIとの関係

資料:オムロン

これらのKPIを設定した理由について、佐々木氏は「どのようなメリットがあるかという視点で設定しています。例えば、カタログ化率の上昇は、都度見積りの必要がなくなることでユーザーの業務効率が向上することを意味し、また各拠点でのサプライヤーと担当者が癒着するリスクが減ることにもつながるとも考えています。そうした実質的なベネフィットを勘案しながらKPIを設定していきました」と説明します。

加えて、SAP Aribaの導入により、発注から支払いまでのプロセスがすべてデジタル化され、完結します。このシステムでの発注が行われていないこと、言い換えれば「注文書(PO)なし発注」が行われていることは、発注と検収・支払いが分離されていることを意味し、調達・購買のガバナンス上、問題があります。ゆえに、佐々木氏は「注文書あり発注」の発生率もKPIとして設定したといいます。さらに、SAP Aribaが社内のユーザーやサプライヤーの間で有効に活用されているかどうかを測る目的で、それぞれからの問い合わせ件数もKPIとして設定している。

佐々木氏は今回、SAP Aribaの大きな導入効果の1つとして、これまでP/L(損益計算書)ベースでグループ会社間での内部振替後の数値でしかとらえられなかった間接材への支出(費用)が、純粋な外部への支払い額カテゴリー、サプライヤーごとに分析できるようになった点を挙げています。

同社では今後、この見える化の効果を生かしながら、間接材のカテゴリーごとに規律・ルールを徹底し、そのモニタリングを行っていく構えです(図2)。

図2:カテゴリーごとの支出分析と規律・ルールの徹底

資料:オムロン

また、SAP Aribaに蓄積されていくデータを活用しながら、主要カテゴリーの間接材がどのような状況にあるかを可視化し、規律・ルールの適用を最適化していく計画です(図3)。

図3:カテゴリー毎の規律・ルールの設定と統制状況イメージ


資料:オムロン

「すでに米国と日本では、SAP Aribaを活用してカテゴリーごとの間接材の支出分析が行われています。今後、SAP S/4HANAの導入と合わせて、他の国の拠点でもSAP Aribaを導入していきます。これによって、グローバル規模での間接材支出を見える化し、規律やルールに基づいて適切に管理・統制していく考えです。」(佐々木氏)