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SAPジャパン パートナー様向け ローコード・ノーコードハッカソンインタビュー ~SAPソリューション拡張部門ファイナリスト座談会編~

フィーチャー

※旧ブログサイトよりの転載ブログです。部分的にリンクが機能しない箇所があります。予めご了承くださいますようお願い致します。


はじめに

本ブログは「ローコード・ノーコードハッカソン」インタビュー記事第1弾です。「SAPジャパン パートナー様向け ローコード・ノーコードハッカソン」は、SAPパートナー(チームもしくは個人)を対象としたハッカソンイベントで、今後の企業のビジネス改革を推進する欠かせない注目技術領域であるローコード・ノーコード開発に注目した、機能並びに発想力や実現性など、SAP AppGyver(以下AppGyver)およびSAP Business Technology Platform(以下BTP)の特性を活かした課題解決力やイノベーションの推進力を競うものです。2022年6月13日(月)~ 6月17日(金)の期間中に、「『SAPソリューション拡張部門』『フリースタイル部門』のいずれかにおけるソリューション」という出題に対して、40社67チーム181名と数多くの参加をいただき、その中から一次選考を通過したファイナリスト6組が選出されました。

今回は、SAPソリューション拡張部門のファイナリストである株式会社クニエ、PwCコンサルティング合同会社、富士通株式会社より代表の方にお越しいただき、お話を伺いました。

PwCコンサルティング合同会社

大塚將司氏(右端)

Enterprise Transformation – Enterprise Solution。
普段の仕事では主にSAP S/4HANA を取り扱っている。
SAPコンサル歴はABAP合わせて15年。
BTP経歴はないが、個人のアカウントを作ってチュートリアルをやったり、SAP関連トピックを共有しあうSAP TechEdフォローアップイベントであるSAP Inside Track Tokyo 2022でAppGyverを取り上げたりした経験を持つ。

神山拓史氏(左から2番目)

Enterprise Transformation – Enterprise Solution。
普段の仕事では主にSAP S/4HANA 導入のロジスティクス周りや導入前の構想策定を担当している。モバイル用OSアプリの経験を有する。
SAPコンサルティング歴は3年。
BTP経歴はなく、個人でも触ったことがなかった。

株式会社クニエ

星裕之氏(左端)

バリューアディドサービス担当
普段の仕事では主にエンタープライズ・ソリューションやクラウド、ローコードを使ったコンサルティングをしている。
前職はエンジニアで、クニエに入社して3年目。
BTP経歴は5年。

富士通株式会社

有山優一氏(右端)

Uvance本部Business Applications SAP Technology Offering。
入社3年目。
配属直後からBTPを触っているが、モジュールの開発やABAPは未経験。

吉田陸人氏(左端)

Uvance本部Business Applications SAP Technology Offering。
入社2年目。
部署に配属されてから2か月で本ハッカソンに参加。

― ハッカソン参加経緯についてお聞かせください。

有山氏 今回はBTPのサービスを調査するという仕事の一環として参加しました。また若手だけで参加できるようなチャンスはなかなかないということで参加しました。

吉田氏 私は有山さんに誘っていただいたので参加しました。また周りがハッカソンに出ていたので聞き馴染みはありました。

星氏 もともとBTPやローコード・ノーコードの開発をしているのでチーム内で同じような案件を担当しているメンバーで参加しました。休みを合わせて福井県で合宿をしてみんなで作業しました。

大塚氏 AppGyverについて興味があり、個人的に勉強していたので参加しました。また社内外の横のつながりができることを期待していました。

神山氏 モバイル用OSアプリの開発や、AppGyverなどのノーコードツールを体験したことあったので、SAP S/4HANAとモバイルアプリを組み合わせたソリューションに興味があり、参加しました。

一 1次選考を通過した際の社内や周囲の反応についてお聞かせください。

大塚氏 社内的には大盛り上がりでした。1次選考通過の報告をきっかけにAppGyverという製品を知った人もいました。面識がなかった人から「おめでとう」との連絡をいただくこともありました。

星氏 私も社内で祝福の言葉をかけていただきました。特にチーム内でのリアクションが良く、社内勉強会を実施した際は、通常参加率は半分程度のところ、チームメンバーのほとんどが参加という結果となり、関心の高さがうかがえました。

有山氏 若手だったので正直大きな期待はされていなかったと思います。ただファイナリストに残った段階でとても盛り上がり、社内SNSでは普段連絡をいただけないような方々から連絡もいただきました。

株式会社クニエ / 倉庫でポン!

倉庫業務を簡略化できるアプリ

星氏 SAP S/4HANAと連携し、倉庫業務を簡略化できるアプリを作成しました。機能としては大きく3つあります。①QRコードでの在庫検索機能、②SAP S/4 HANA上の購買発注データ検索・更新機能、③SAP Event Meshを使ったSAP S/4HANA のリアルタイム更新通知機能です。アプリ作成にあたり、エンジニアではない方でも開発できるローコード・ノーコードの特性を生かすことを考え、できるだけプログラムコードを書かないようにしました。

大塚氏 こちらの作品は唯一過去に作られたものを置き換えて作ったものだと思いますが、所要時間やスキルセット、画面のUIといった観点で従来のものと比較してみてどうですか?

星氏 私は11年前のアプリ開発時には携わっていなかったのですが、ローコード・ノーコード開発にすることで、生産性がかなり向上しています。SAP Event Meshリアルタイム機能を試したり、少人数で開発から設計までできたという点から工数も削減されていると思います。

有山氏 設計をきちんとされてから画面を作りこまれましたか?作りながら変えていかれましたか?

星氏 アーキテクチャデザインや技術的な調べものを1日目にして、2,3日目に画面を作りこみました。機能要件だけ決めておいて、あとは作りながら変えていきました。過去のアプリについてアーキテクチャの概要は知っていたものの、当時の画面は知らなかったため、元々の設計にのっとって作ったわけではないです。

PwCコンサルティング合同会社 / YASASHISA~“やさしいコンサル”たちが実現する、業務のあと1マイルを叶える優しさ~

工場の入庫管理をするアプリ

大塚氏 工場の入庫管理を行うアプリを作成しました。アプリケーションのタイプはモバイルですが、ウェブ画面で登録した情報を見られるようにしています。どれだけ簡単な技術で作れるか、それで業務を実現できるか、業務をよくできるのかを意識して作成しました。機能としては、①検品するもののバーコードでの読み取り、②当日入庫が予定されているものの一覧表示、③チャットボットでの製品に関するQ&A対応です。

有山氏 画像登録もノーコードで実装されましたか?

大塚氏 はい。ただし、SAP HANA Cloudではなく、別のサービスに画像をアップロードして実装しています。実装にあたっては、ハッカソン期間中のSAPさんのQ&Aサポートコーナーで他の方が質問している内容も参考にさせていただきました。

星氏 今回のハッカソンはオンライン開催だったので、他チームのQ&Aをサポートサイト上で確認できたのはオンライン特有ですよね。通常のオンサイト開催の場合はわからないですし。

星氏 チャットボットはどのように作られましたか?

大塚氏 SAP社員の方がSAP Inside Track用のデモアプリを作成されていたのを見て、ウェブ画面にSAP Conversational AIを埋め込めることを知りました。ただ、実装方法が不明であったため、私たちはSAP Blogで見かけた、「インスタントメッセージサービスにSAP Conversational AIを埋め込み、それを呼び出す」という方法で実装しました。

富士通株式会社 / Food loss Reduce Inventory Transfer Application

フードロス解消がコンセプトの在庫管理をするアプリ

有山氏 フードロス解消のために賞味期限表示の大くくり化、在庫管理ができるアプリを作成しました。機能としては、ピッキング指示をする指示者側とピッキングをする作業者側の二つがあります。指示者側については、品目検索してピッキングリストに入れるという仕組みです。作業者側はピッキングリストを選択して、QRコードで疑似的に賞味期限を年月日から年月表示へと変更した情報を読んでピッキング作業をしたり、認証情報を使ってピッキング作業を完了したことを自動的にワークフローに流すということを実現しています。アピールポイントとしては、フロントエンド側としてはできるだけ作業者側に負担がかからないようにユーザーにストレスを与えない設計にしたことです。バックエンド側としては、フロントエンド側の要請に合わせてローコードの機能を使ったことです。

星氏 最初から指示者側と作業者側の画面を分けるつもりで作られましたか?

吉田氏 最初は業務フローを考えることに注力して、開発は2日目から開始しました。そのため業務フローを考えた段階でAppGyverをより効率よく使いこなす方法を意識すると、ある程度開発を分けることが必要だと考え、画面を分けて作成しました。

大塚氏 このアプリは「すぐに欲しい」という会社がいるだろうなと思いました。しかも業界を絞っているのがとても良いですよね。

 

― AppGyverを使ってみて、イケてる点とイケてない点をお聞かせください。

大塚氏 今後期待するのは、SAP製品とのシームレスな連携という点です。またノーコードツールとはいえ、プロ開発者の支援は外せないため、この製品をお客様にどのように提案し、どのような売り方をすればいいのかの検討も必要だと思います。

神山氏 UI観点で、SAP Fioriと同氏のデザインを使うことができるので、SAP S/4HANAから連携しているモバイルアプリだということが明確に分かるのは素晴らしいと思います。

有山氏 イケてる点としては、UI的に作りやすいノーコードツールだと思いました。イケてない点としては、シームレスな連携ですが、今後実装されていくと思うので今後期待しています。将来性については市民開発者にもある程度知識があれば開発できると思いますが、このハードルを越えるために最初はIT部門の方にどうAppGyverの良さを知ってもらえるかが重要だと思います。

吉田氏 ノーコードツールを使って実プロジェクトにのせることを考えると、Gitで管理できるのかなど整理できていない点も多く、考えさせられました。

星氏 ほかの製品と比較して、カメラやGPSが初期状態で使えるようになっていたことが優れている点だと思いました。将来性や改善余地のある点は、SAP Fiori Elementsも確かにコードを書かないでWebアプリをかけますが、 ODataが前提ですので、AppGyverでほかの製品やデータを連携できるようになれば良いと思います。またよく使うようなテンプレート画面があれば良いですよね。

編集後記

本イベントのファイナリストが入社2,3年目の若手からSAPコンサル10年以上のベテランの方まで多様であったということは、ノーコードツールであるAppGyverが市民開発者向けに実装が期待できると考えられます。

一方で、SAP製品とのシームレスな連携や実際に導入するにあたっての課題など、パートナー企業様にお使いいただいた上での生の意見は今後の実装において重要な観点であり、今回お聞きできたのは貴重な経験でした。

(インタビュー&編集:加藤舞&吉川優依、アドバイザリー:梅沢尚久)

 

■関連リンク

第2弾:フリースタイル部門ファイナリスト座談会編(リンク
第3弾:SAPソリューション拡張部門最優秀賞受賞者編(リンク
第4弾:フリースタイル部門最優秀賞受賞者編(リンク