前回までのブログではIntelligent Enterpriseが目指す姿と期待価値、それと全体像の中における業務アプリケーション層について見てきた。今回のブログではプラットフォーム層とビジネスネットワーク層についてのSAPの取り組みを見ていく。

ビジネスを支えるプラットフォーム

設計図を公開し「つなぐ」と「つくる」をより迅速に

SAPは提供するアプリケーションのデータの形や連携する標準業務プロセスを公開している。
この公開された設計図をもとに、他のシステムと「つなぐ」道具と、連携した新たなアプリケーションを「つくる」道具を提供している。

これらの道具は、作り手のIT専門性に応じて①コーディングなく作成できる簡易ツール、②少量のコーディングで作成できる効率ツール、③詳細までコーディング作り込める専門ツールの3種類を用意している。

新しい技術を業務に埋め込む

AIやIoTやRPAなど新技術は続々と登場する。多くの企業がPoC(実証実験)を通じて、本当に使えるのか、や、どの分野で使えるのか、の実験を進めている。
SAPは、多くの既存顧客とともに、どの業務分野でどのような最新技術が実際に役に立つのかを検証し、標準機能として提供している。この新しい技術はIT的な技術だけでなく、Sustainabilityの分野や顧客経験管理 Experience Managementの分野も含めて提供される。
SAPアプリケーションを使うことで、企業は新しい技術の使い方を含め便益を享受できる。

Hyper Scalerと共に

Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureのクラウドサービスを利用している企業は多いだろう。複数のクラウドサービスを組み合わせて利用するマルチクラウドの状態になっている企業もすでに多く、クラウドサービス間の連携性について課題の認識も一般化してきた。
SAPはこれらInfrastructure as a Services (IaaS)のベンダーと協業し、SAPのプラットフォームはこれらHyper Scalerの上で動く形で提供もしている。
餅は餅屋。普段皆さまがお付き合いしているHyper ScalerのIaaS上でSAPを利用して欲しい。

他社との協業を促進するビジネスネットワーク

電子商取引市場

Amazonの年間の電子商取引は凡そ15兆円。SAP Aribaは300兆円。380万社が電子商取引市場に参加している。そこでは一般的に売られている商品だけでなく、特別仕様や個別仕様のものも仕様策定場面から含めて取引きされている。B2Cビジネスが印象的である電子商取引市場であるがB2Bビジネスのほうが遥かにその規模が大きい。
昨今、電子申請や電子署名も急速に普及してきた。他社との商取引を電子化する余地は大きい。

ビジネスにおける他企業との協業。データを共有する価値

ビジネスにおいてはモノの商取引だけではない。
より柔軟な勤務体系を得るために派遣会社やフリーランス社員など他社と契約する外部社員管理や、買った設備の状況を把握し他社に修理を依頼する設備管理、他社と協力して製品設計を進める設計管理、他社との共同物流管理など、企業が他企業と協業する場面は多い。
これらの分野まで電子化することで、業務の効率化だけでなく、スピードの向上や、新たな協業先の開拓などの効果が期待できる。
「ネットワーク外部性」に言われるように、集まることにまた価値がある。すでに380万社が集まる市場があれば、そこに参加する価値は高い。

ベンチマークという価値

LinkedInを使っているとSocial Selling Indexというものを使って自分のSNSの使い方の改善点が分かる。自分のプロとしてのブランドを確立するべきか、正しい人とのコネクションを作るべきか、示唆や洞察に富む情報発信をするべきか、など。

同様にSAP Aribaを使っていると、競争入札で物を買うときに2社での競争ではなく4社で競争させるべきなど、他社との比較(ベンチマーク)に
よって、業務をどのように変えることで、より高い効果や生産性を得られるかが示される。

ビジネスネットワークが電子化され集約化されることで、他社の良いやり方から学ぶことができるようになる。

これだけ発達してきたビジネスネットワーク、多くの企業では活用の余地が多くあるのではないだろうか。

Intelligent Enterprise 概論

ここまで3回に渡りIntelligent Enterpriseの目指す姿やその中身について紐解いてきた。
SAPの50年の集大成的であり広範でそれぞれ深い内容のため、すぐにご理解いただくことは難しいと思う。そこで改めてIntelligent Enterpriseとはどのようなものかを冒頭で述べた概説を振り返り、この概論のブログを終わりたい。

 

Intelligent Enterpriseは、企業が、最新の技術を使いこなしつつ、より機敏に、そして社内や社外との連携を高めることで、収益性だけでなく、有事の際の回復性や、社会への貢献を高めるものである。

SAPは、企業がIntelligent Enterpriseを実現するために、企業の業務遂行を支える、統合された業務アプリケーションと、それを支えるプラットフォーム、社外との連携性を高めるビジネスネットワークを提供し、それらは連携性、革新性、機敏性を備える。

まとめ図