SAP Japan プレスルーム

LIXILが実践する従業員エンゲージメント向上と顧客志向の徹底

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LIXIL 執行役専務/CDOの金澤裕悟 氏(左)とSAPジャパン 社長執行役員 鈴木洋史(右)

LIXIL 執行役専務/CDOの金澤祐悟 氏(左)と
SAPジャパン 社長執行役員 鈴木洋史(右)

※撮影は感染対策を講じたうえで行いました

 

住宅設備機器・建材メーカーの世界的なリーディングカンパニーである株式会社LIXIL(以下、LIXIL)。同社は「よりエンドユーザーに近づくため」デジタル化を推進し、Qualtrics Experience Management Platform™によって従業員と顧客のエクスペリエンスを一元管理し、従業員エンゲージメントの向上と顧客志向の徹底を両立しています。SAP® Japan Customer Award 2020で「Experience Management」部門を受賞した同社が抱く、従業員と顧客への思いに迫ります。


エンドユーザーに“心地いい生活パートナー”としてとらえてもらうために

LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎とした世界をリードする技術やイノベーションで、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通し、人びとのより良い暮らしに貢献しています。現在約60,000人の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開。2020年3月期に1兆5,144億円の連結売上高を計上したグローバル企業です。

そのなかで、日本における同社を取り巻く環境は、大きな変化を迎えています。少子高齢化による人口減少は新築の着工戸数の減少をもたらし、住設業界に多大な影響をもたらしているのです。新築からリフォームへ、住設市場はリフォーム需要をいかにして生んでいくかが成長の鍵となっていました。

新築が中心の市場の場合、工務店やホームビルダーなどとの関係性によってビジネスが成立します。しかし、リフォームはエンドユーザー(施主)が主体。このニーズをつかまなければ、継続した成長は危ういのです。こうした変化の渦中にある日本の市場環境に、同社は危機感を覚えると同時に、変革へと舵を切ることを決断したのでした。

2019年11月、同社は国内事業の活性化に向けた人事プログラム『変わらないと、LIXIL』を打ち出し、変革に乗り出します。プログラムを構成するのは「顧客志向に変える」「キャリアを変える」「働き方を変える」という3つのテーマ。それを成し遂げる手段のひとつがデジタル変革でした。

エンドユーザーとの接点を増やし、カスタマージャーニーに寄り添う。販売後もつながり、付加価値を提供し続ける。このような仕組みづくりはデジタルが得意とするところ。執行役専務マーケティング・デジタル・IT 担当 兼 Chief Digital Officerの金澤祐悟氏は「LIXILを住宅設備のメーカー、窓のメーカーではなく、“心地いい生活パートナー”としてとらえてもらえるようにしたい」と話します。

同社とエンドユーザーの接点となるのは全国92か所に点在するショールーム。ここでエンドユーザーはショールームコーディネーターを通じて製品を知り、理想の暮らしのイメージを湧かせていくのです。エンドユーザー重視の姿勢を持つ同社が、ショールームの改革に乗り出したのは自然なことでした。取り組んだのは従業員エンゲージメントの向上です。

「接点を持っている従業員が満足していない状態で接客してもエンドユーザーは満足しないでしょう。従業員のエンゲージメントとNPS®※1,2は連動するものと考えています」

従業員のエンゲージメントは2年に1度継続的に調査をしてつかんでいたものの、これではスピード感のある経営を目指すうえでタイムリーに従業員の意識をつかむことが難しいという実態がありました。そこで同社はリアルタイムなエンゲージメントを把握し「ショールームコーディネーターのエンゲージメントとCX※3をリンクさせる」ことを目指すため、SAPソリューションの導入を決めました。

※1 NPS®= Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)。顧客ロイヤルティを測る指標のこと。ある企業や商品を他者に推奨する者の割合(%)から批判する者の割合(%)を引いて算出されるスコア。
※2 NPS®はベイン・アンド・カンパニー社、サトメトリックス・システムズ社及び フレッド・ライクヘルド氏の登録商標です。
※3 CX=顧客体験

 

Qualtrics® EmployeeXMのイメージ図(提供:Qualtrics)
Qualtrics EmployeeXMでは、従業員アンケートのヒートマップ(左図)やエンゲージメント評価のなかで優先的に着手すべき従業員(右図、赤色の点)をリアルタイムで把握できる

 

現場主導の即時的な改善によりNPS®を向上

デジタル変革のキーポイントのひとつがプラットフォームの導入です。同社が選んだのは「Qualtrics Experience Management Platform」。これは企業が「ブランド」「プロダクト」「従業員」「顧客」という4つの主要なエクスペリエンスを管理するプラットフォームです。この4つのエクスペリエンスはそれぞれ強い相関関係を持っており、統合的にマネジメントすることで高い相乗効果が得られます。

同社が導入したのはQualtrics® EmployeeXMとQualtrics® CustomerXM、そして両ソリューションによって得られた従業員と顧客のエクスペリエンスを一括管理するQualtrics Experience Management Platformです。導入の決め手は「計測した後のアクションにつなげやすいプラットフォームであること」「限られた時間のなかでもNPS®を向上させるためのインサイトを見つける作業がしやすい」こと。この2つの特性が、後に同社が直面した喫緊の問題を解決するために、大いに役立つことになりました。

2019年から東名阪ショールームでのトライアル運用が開始されて以降、導入は順次全国へと進められていきました。しかし、その矢先にコロナ禍が日本で猛威を振るいます。同社はコロナ禍に対応すべく、約1か月でオンライン新接客サービスを立ち上げ、リリースしました。いち早くショールームコーディネーターが在宅でも仕事ができる仕組みを作り上げ、エンドユーザーとの接点を保ち続けられるように対応したのです。

懸念されたのはオンラインショールームでのNPS®の低下。しかし、同社はQualtrics Experience Management Platformを活用することで、迅速に改善策を計画・実行できたといいます。

「Qualtrics Experience Management Platformはデータ分析後のアクションを、優先順位をつけたうえで簡単に導き出してくれる。それを活用してNPS®改善にインパクトのある施策を短期間で実行していきました。現在では実来館とオンラインショールームで、ほぼ同等のNPS®が得られています。むしろオンラインショールームの方がNPS®が向上したものもあるので、これからポイントを分析していきます」(金澤氏)

同社は2020年5月以降、順次ショールームを再開させ、Qualtrics Experience Management Platformを駆使したマーケティングのPDCAサイクルを回し始めました。導入後、大きく変化したのは「2つの“軸”」だといいます。ショールーム統括部 戦略企画部システム企画グループ リーダーの橋本祐未子氏が話します。

「一つ目は時間軸。以前はNPS®をはがきで調査しており、サイクルを回すのに数か月かかっていました。導入後はリアルタイムでエンドユーザーのNPS®がわかるため、サイクルを週次で回せます。2つ目は顧客軸です。今まではミステリーショッパー(覆面調査)を使い、私たちが定めた評価項目を調査してショールームにフィードバックしていました。しかし、これはあくまで私たちが定めた評価項目ができているかであって、エンドユーザーの意見ではありません。つまり、必ずしも顧客志向ではなかったというわけです。現在はコメントを通してエンドユーザーの生の声をダイレクトにいただけるようになってきた。エンドユーザーの気持ちに寄り添える体制になってきたと思います」

しかし、ショールームの再開直後は、全国的に接客時間に関する評価が急激に低下しました。感染予防への配慮から、接客時間をどのような事案でも1時間に制限したためです。

「すぐに接客時間を柔軟化しました。すると従前と同レベルにまで評価を上げることに成功。このような素早い対応ができたのはQualtrics Experience Management Platformがあったからでしょう。未だにはがきでのアンケート調査を続けていたら、改善までに3か月かかっていたかもしれません」(橋本氏)

同社がこのように現場主導の改善を行うことができるのは、IT技術に精通していなくとも運用が可能なことにあります。同社デジタル部門の理事を務める、デジタルテクノロジーセンターリーダー 情報セキュリティ責任者の安井卓氏は、このように解説します。

「Qualtrics Experience Management Platformは現場が自力でスケールさせることが可能なもの。例えば、従来でインターフェースを変える際、改修にはエンジニアが手を加えなければなりませんでしたが、今回の導入によってそのプロセスが不要になりました。当社には数万人の従業員がいて、デジタル部門で全員をサポートするのが正直難しいという面があります。また、データサイエンティストがいなくても、現場で分析が可能なことも大きいです」

Qualtrics Experience Management Platformが、現場での運用・分析が可能なツールとはいえ、さまざまな苦労があったといいます。ショールーム統括部 戦略企画部システム企画グループの中尾欣正氏は「エンドユーザー向けアンケート配信後の分析を見据え、インプットする既存の社内データの選定やデータスクリーニングが大変だった」と振り返ります。

顧客との接点を保ち、NPS®向上を図るLIXILの取り組み(提供:LIXIL)
LIXILが行うオンラインショールームの様子(左)と顧客へ配信するアンケートの画面(右)

 

「成約に至る因子」を把握し、ROIを向上させていく

Qualtrics Experience Management Platformの導入後、従業員のエンゲージメントの調査に要する期間は約3か月から約2週間に短縮され、業務効率が大幅に改善されました。2020年4月に調査を行ったところ、エンゲージメントは10ポイント以上も改善。その後もエンゲージメントの改善は続いています。

「従業員がどんなサポートを必要としているのかリアルタイムで把握し、施策を早期に展開できています」(金澤氏)

ショールームでは「成約に至る因子」をつかむための取り組みが進められています。これまで営業チームやシステムを通して受注の事実はわかるものの、肝心の“なぜ成約したのか”はつかめていませんでした。エンドユーザーに近づくにはこの「成約に至る因子」の把握が必要不可欠です。

例えば、顧客Aが給湯機能を気に入って購入に至ったとして、ショールームに同じ悩みを持つ顧客Bが来館した場合。そのときショールームコーディネーターは顧客Aの情報をもとに接客を改善することができるようになります。このように、従業員の経験をデータとしてデジタルに取り込んでいくことが、同社が掲げる「顧客志向に変える」というアクションにつながっていきます。

リアルタイムに施策を打ち出して従業員のエンゲージメントが改善し続けるなか、前出の「ショールームコーディネーターのエンゲージメントとCXをリンクさせる」ことは、着々と現実のものとなりつつあります。

同社では、いずれの部門においてもROI(投資利益率)が意識されています。

「ツールを入れて、どのようにROIを出していくのか。ツールでエンゲージメントやCX、NPS®が変わってその結果として『こういうROIが出ているんだ』ということが説明できないといけない。Qualtrics Experience Management Platformが経営に価値のあるものだと証明していく」(金澤氏)

ショールームはエンドユーザーのフィジカルな接点として今後も存在し続けるものですが、ショールームの生んでいる価値が見えにくいのも事実。それを可視化する取り組みが同社のデジタル変革といえるでしょう。

「従業員の体験データも活かして、例えばショールームに託児所を整備するなど、働きやすい環境を作っていく。ショールームコーディネーターがより活躍できれば、その結果がNPS®に反映され、LIXILのファンが増えていくでしょう。LIXILを“心地いい生活パートナー”ととらえてもらえたら最高です」(金澤氏)

LIXILが推進する従業員エンゲージメント向上と顧客志向の徹底を両立させる取り組みを、SAPジャパンは今後とも支援して参ります。

 

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