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これからの未来において、SAPジャパンはどうあるべきか?」をすべての社員が問い直し、そのビジョンの実現を目指す中期変革プログラム「SAP Japan 2023 Beyond」がスタートしてから1年以上が経過しました。今回は2回にわたってお届けする本ブログの後編(前編はこちら)として、「社会」「顧客」「人」「製品・サービス」「認知」の5つのカテゴリーにおける代表的な取り組みや具体的な成果について、このプログラムのPMO(Project Management Office)のメンバーであるトランスフォーメーションオフィス(TRO)部長の尾崎太朗さんと、同じくPMOのメンバーの西村佳保里さんに話を聞きました。(聞き手:SAP編集部)

D&Iをはじめとする広範な取り組みの成果を社会に向けて発信

ー2021年に入ってから「SAP Japan 2023 Beyond」の活動がいよいよ本格化しています。現在の状況についてお聞かせください。

尾崎:このブログの前編でもご紹介した通り、「SAP Japan 2023 Beyond」では「社会」「顧客」「人」「製品・サービス」「認知」の5つのカテゴリーを設定し、それぞれの中で具体的なテーマを持った合計12のフォーカスチームが活動しています。

これだけのチーム編成ですから活動も多岐にわたりますが、例えば「人」のカテゴリーで最大のテーマとして挙げられるのが、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」です。D&Iは、もともとSAPのグローバルの活動の中でも重視されてきたテーマですが、日本では①グローバル・カルチャー(真のグローバル人材になるために)、②ゼネレーション(さまざまな世代が生き生きと活躍できるために)、③ジェンダー(女性のさらなる活躍のために)という3つの視点で独自のマニフェストを作成し、職場のD&Iを推進してきました。さらに近年は、①~③の3つのGを包含した「ビヨンド3G」(すべての人がインクルーシブに協働できる環境のために)という4つめのマニフェストを追加し、活動を強化しています。

最近はSAPジャパンのこうした取り組みの外部発信、認知向上にも注力しています。例えば、大阪府が主催する女性の活躍推進に積極的に取り組む事業者を表彰する「大阪府男女いきいき事業者表彰制度」では、私たちの取り組みが評価され、2021年度の「男女いきいき優秀賞」を受賞することができました。さらに、任意団体の「work with Pride」が策定した職場におけるLGBTQに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」においても、2020年、2021年と2年連続で最高レベルの「ゴールド」を受賞しました。

ー組織内の取り組みを積極的に外部に発信していくことが、SAPジャパンの認知度と社員のモチベーションの向上の双方に貢献しているということですね。

西村:はい。私たちが取り組んできた活動の社会的認知や評価は着実に高まっていると思います。社員のモチベーション向上に関しては、「SAP Japan 2023 Beyond」でも力を入れている「GPTW(great place to work=働きがいのある会社)」の活動があります。世界の約60カ国で調査を実施しているGreat Place to Work Instituteという国際機関の日本支部が国内ランキングを発表していますが、ここでもSAPジャパンは2021年に11位にランクインしています。

福島の被災地を訪れる「パーパスレッド研修」に大きな反響

ー「SAP Japan 2023 Beyond」の活動の中で、参加メンバーから特に大きな反響を呼んだものなどがあればご紹介ください。

尾崎:参加メンバーからの反響や関心の高さという点では、同じく「人」のカテゴリーで実施している「パーパスレッド研修(着火・再着火プログラム)」があります。これは「個人の志=パーパスを見つめ直す」ための試みで、福島の復興に向けて人材育成などに取り組んでいる「一般社団法人 あすびと福島」のご協力のもとスタートした研修プログラムになります。

このプログラムは、日常の職場環境を離れて、東日本大震災からの復興の過程にある福島で実施されます。現場での原体験を通じて、福島の今を知り、自分を見つめ直し、改めて「自分の志」を具体的に見出してもらうことが主な目的になっています。これまで200名くらいの社員が参加して、多くの人が刺激を受けただけでなく、特に若手社員であれば、研修を通じて自分はこれからどうしていくのかというビジョンを具体的に落とし込んでいくことができます。

もともとは現地体験型のプログラムとしてスタートしましたが、多くの人から前向きなフィードバックが寄せられていることから、コロナ禍以降もオンラインを活用したハイブリッドでの提供を継続しています。

SAP Japan 2023 Beyond PMOメンバー 尾崎太朗

「アウトカムベース」のビジネスモデルを創出するアイデアコンテスト

ーこうした研修プログラム以外にも、部門の垣根を越えた全社規模のアイデアコンテストなども開催されたと聞いています。

尾崎:「製品・サービス」のカテゴリーで活動している「アウトカム ベースト ビジネスモデル」というフォーカスチームがあるのですが、このチームが中心となって実施したアイデアコンテストがあります。SAPのビジネスは多くは、基本的に価格の固定した製品やサービスで成り立っていますが、これからはこうした製品やサービスがどのような価値をもたらしたかによって、お客様から評価されるようになっていくはずです。その意味で「アウトカムベース(成果報酬型)」という考え方は、SAPの今後のビジネスの方向性を考える上で重要な意味を持っています。この課題を踏まえて、未来に向けた成長を持続するためには、どのようなビジネスモデルや新たな仕組みが必要になるのかについてのアイデアを募るコンテストを開催しました。

ー社内からはどのようなアイデアが寄せられ、それをどのように評価したのでしょうか。

西村:第1回目は33件の応募があり、その中から3つのアイデアが入賞を果たしました。さまざまなアイデアが出てきましたが、たとえ斬新なアイデアであっても、その成果を客観的に評価できなければビジネスとしては成立しません。入賞したアイデアは、成果の測定方法まできちんと考えられた案が選ばれています。

また、今回のコンテストはさまざまな立場の社員が誰でも自由に参加できる形で開催できたことも大きな成果だと感じています。私自身、営業の仕事を担当する中で製品やサービスの提供方法について自分なりに考えますが、部門の壁を越えて意見を交わす機会はなかなかありません。今回のコンテストを通じて、担当業務の異なる社員同士で議論できたのは、「SAP Japan 2023 Beyond」ならではだと思います。

ーSAPジャパンの組織としてのイノベーションにもつながる可能性を感じる企画ですね。

尾崎:所属部門や担当業務にかかわらず、雑談的なところから横のつながりを作って、みんなで1つのアウトプットを生み出すことにチャレンジできた点は非常によかったと思います。もう1つの成果は、アウトカムベースのモデルを通じて、お客様に対する価値の提供方法まで踏み込んで議論できたことです。こうしたことは、本来であれば日本が独自に決められるものではないのですが、とはいえ営業担当をはじめとする現場の社員は、お客様にとっての本当の価値は何なのかについて常に考えています。現場の社員自らが従来のビジネスモデルを変革しようとした点に、今回のコンテストの大きな意義があったと感じています。

ー変革やチャレンジの機運を現場で高めていくためには、やはり日頃から部門を越えた社員間のコミュニケーションが重要だということですね。

西村::コミュニケーションの活性化に向けた取り組みの1つとして、「ファイヤーサイドチャット」の活用があります。これはフォーカスチームが2週間に一度くらいの頻度で全社員を対象に、現在の活動状況などを共有するものです。雑談も含めた気軽なコミュニケーションの機会を継続的に設けることで、大がかりなプロジェクトとなったときもチームがスムーズに動けるようになります。

SAP Japan 2023 Beyond PMOメンバー 西村佳保里

「日本発の変革ストーリー」の創造に向けたさらなる組織変革

ー「SAP Japan 2023 Beyond」の今後について、目標や課題をお聞かせください。

尾崎:やはり、このプログラムに参加するメンバーをさらに拡大して、SAPジャパンの全社的な取り組みに育てていくことですね。

現在、約1,500名の社員のうち「SAP Japan 2023 Beyond」のメンバーとして参加している人が約150名。また、何らかの形でイベントなどに参加してくれた人の数は約700名に達しています。つまり、全社員の約1割がフォーカスチームのメンバーとして参加し、その他にも約半数がイベントに参加した経験があります。プログラムの開始から約1年半の間でこれだけの数字を獲得できたのは、大きな成果だと自負しています。

これからは、全社員を巻き込んでいくために、より自分ゴトとして考えてもらえるための仕掛と仕組みづくり、全社目標のシンプルなメッセージング、現在の5つのカテゴリーに加えて、「サスティナビリティ」という6つめのカテゴリーの追加を決めています。これにより参加メンバーはさらに拡大していくはずです。

西村:私はPMOの中で一番新しいメンバーなのですが、PMOに加わる前は自分が興味のあるイベントにしか参加していませんでした。日々の営業活動の中で、お客様の取り組んでいる全社改革プロジェクトに触発されて、PMOに参加しました。

フォーカスチームに参加しているメンバーは必ず身近にいるはずですので、こうした方々からいろいろな話を聞いて新しい刺激や気づきに出会えると思います。SAPジャパンの皆がこの取り組みを社外にも発信して、成功も失敗も参考にしていただけるようになることが当面の目標です。

ーSAPジャパンのすべての社員に「SAP Japan 2023 Beyond」が目指すことを「自分ごと」として理解してもらうことが、来年以降の成果につながるということですね。

尾崎:私自身、「なぜ自分はこの活動に参加しているんだろう」と考えたことがあります。そこで気づいたのは、これまでお客様に向けて変革を呼びかけてきたのはドイツ本社が提言する変革ストーリーが中心で、SAPジャパン自身の「日本発変革ストーリー」はまだまだ発信できていないということです。

しかし、日本のお客様には日本企業ならではの課題や悩みがあって、それに応えていくことこそがSAPジャパンの使命であると同時に、「SAP Japan 2023 Beyond」が目指すところでもあります。この気づきを自分の揺るぎない立ち位置として、これからも参加者の皆さんの支援に尽力していけたらと考えています。