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間接材調達組織におけるカテゴリーマネージメントについて

Businessman Working On Gantt Chart At Office

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私たちはSAP Ariba導入後のお客様のツールの定着・展開・活用促進を支援する活動をしております。日々の顧客支援活動から、皆さまにご参考いただけそうなことを発信していきたいと思います。 今回のテーマは間接材調達組織におけるカテゴリーマネージメントについてです。

はじめに

カテゴリーマネージメントという言葉を聞いてどのような内容を思い浮かべますか?企業の支出データを分析して、購入している製品やサービスを分類することと考えることもできますが、それは表面的な部分に過ぎません。 実はカテゴリーマネージメントは調達戦略を実行するうえでとても大事なキーワードになりますので、その部分を入り口にして、2回に分けて戦略的調達組織について考えていきたいと思います。 1回目の本稿では、間接材購買のカテゴリーマネージャーの役割と購買組織の在り方についてお話しします。 2回目はTactical Sourcing(戦術的調達)とStrategic Sourcing(戦略的調達)の違いをご説明します。

情報の非対称性を打ち破るカテゴリーマネージャーの役割

特定の製品やサービスについての情報量はバイヤー企業とサプライヤー企業のどちらが広く・深く持っているかというと一般的にはサプライヤー企業になります。製品やサービスを購入する際に両者の知識量が対等でない場合には情報量が多い方が交渉が有利になります。これを情報の非対称性と言います。それに対抗するにはバイヤー企業は特に大切な製品やサービスについてはその分野の専門家を育成してサプライヤーと対等に交渉できる力を持つ必要があります。その役割を持った人たちをカテゴリーマネージャーと言います。    カテゴリーマネージャーは製品知識・市場知識を常にリサーチして、購入仕様の標準化、適正価格での購入、欠品時の代替入手手段の確保、調達リードタイムの短縮などを実現します。また、担当するカテゴリーの購買支出については、企業内を横串で掌握して支出金額のコントロールや集中化によってサプライヤーに対するBuying Power(購買力)を最大化して交渉力を高める活動をします。つまり、担当する製品やサービスについて知識を深めながらサプライヤーと社内の要求部署の両方をコントロールする重要な立場になります。コントロールできる金額を最大化(Buying Powerを最大化)することで効果が大きくなりますので、守備範囲は本社や特定の事業部だけに限定するのでなくすべての事業部や子会社を含めるようにします。M&Aで企業同士が合併する場合も人事、経理、ITシステムの統合と同様に調達機能の統合も考慮が必要になります。

カテゴリーマネージメントが重要であるからといって、全ての商材についてカテゴリーマネージャーを配置するのはコストの面で見合いません。戦略は選択と集中、「追及すること」と「捨てること」のメリハリが必要です。支出金額が大きく、企業にとってクリティカルな製品やサービスに絞って、費用削減効果やトップラインへの影響度を考慮して人材を配置するのが一般的です。

組織の壁を超えたカテゴリーマネージャーの役割

この全社横串体制を作るには調達部門が全事業部に対して統制力を発揮できることが重要です。カテゴリーマネージャーがそのような立場にないと影響範囲が限定的になります。企業の場合は「組織の壁」の問題があります。その壁の力を侮って改革が不十分に終わってしまうことがあります。調達組織を特定の事業部の配下に置いたまま「全社調達改革」と言っても掛け声だけで終わってしまうことが多いようです。調達組織が全社的に影響力の大きな事業部の配下にあったとしてもその力で事業部を超えて影響力を発揮できるかというとそうでもありません。なぜならその事業部内により高いプライオリティーの目標が発生した時に事業部自体が抵抗勢力になり、調達改革が止まってしまうからです。特定の事業部からの影響力を排除して、全事業部に影響を与えるためには一般的には調達部はCFO、COOの直下の「管理部門」に置かれることが多いようです。

現在調達組織がそのような位置にない企業においては「調達組織のデザイン」から始める必要があります。調達組織の役割や組織配置をどのようにデザインするかということを考えられるポジションの役員の主導もしくは強い支援が必要になります。

ところで、欧米はトップダウン型で日本はボトムアップ型などと言われており、かつ、日本はトップダウンでは動かないという話を聞きます。社長の「鶴の一声」はお題目に留まり、実効性がないということでしょうか?実は欧米でも投げっぱなしでは何も変わらないというのは同じだと言われています。効果を出す企業はトップが現場まで下りてきて現場の人たちと直接意見交換などをしてボトムを含めた全体を動かすというやり方が主流になっているようです。ですからここではトップダウンという言葉ではなく、トップの主導という言い方をします。

トップの主導で組織の在り方と方向性が示され、コミュニケーションが行われ、障壁を取り除き、全社の調達購買規定などの文章が整い、調達改革が全社で共通言語化された後は、日本企業が得意とするボトムアップで仕組みを改善させるなど、両方向のベクトルが適切に機能する必要があります。 このようにして調達組織が全社横串で支出管理ができるようになると、カテゴリーマネージャーはその力を発揮する土台が整います。

集中化で効果が出るものと出ないもの

ここまで読んで、「全社の支出を調達で統括するとなると、調達がボトルネックになってしまって、かえって調達サイクルタイムが伸びてしまったりしないか?」という疑問を持った方がいらっしゃると思います。

集中化はなんでも一箇所に人を集めてしまうことではありません。例えば、発注オペレーションのような「作業」を考えてみます。発注オペレーションは電子調達の仕組みを導入して(SAP AribaのBuying & Invoicing、さらに進んでGuided Buyingなど)それらを使って要求者がオンラインで行うのが一般的になってきました。カタログを充実させて、要求者はその製品を選ぶだけで、調達が定めたサプライヤーから交渉した価格で購入ができ、要求者は面倒なサプライヤー探しや相見積もりなどをせずにほしいものが素早く手に入り、本来の業務に集中することができます。ですから、発注要求業務は集中させる必要はありません。その後の処理が自動化されており、発注承認ワークフローがシステムで管理されていて、スマホやタブレットを使ってリモート承認できるような体制ができていれば承認者は在宅勤務中でも外出中でもどこからでも可能になります。

一方で、サプライヤーの営業マンは発注書の送付元が集中化されようが分散されようがそれは重要ではなく、だれが調達権限を持っているのかを常に注視しています。通常、発注要求業務にはサプライヤーや購入価格の意思決定力は持たせません。

ここで要求者にサプライヤーの選択をさせないというのはとても大事な意味を持ちます。上段で書いた「誰が調達権限を持っているのか」にかかわります。カタログなどの整備が進んでいない場合、適正価格での購入をするために要求者に発注都度に相見積もりを義務付けている企業が多いと思います。これは一見必要なことのように見えますが、コスト削減効果は高くないと言われています。なぜなら上述したように情報の非対称性により要求者の製品知識・市場知識はサプライヤーの足元にも及びません。調達の素人では交渉になりませんし、しかも発注都度の交渉であれば金額も高が知れています。

それよりも悪いことは、サプライヤーに「調達権限が要求部署にある」というメッセージを送ってしまっています。これではサプライヤーは調達部のカテゴリーマネージャーの言うことなど耳を貸しません。要求部署での都度見積もりは効果が期待できないばかりか、調達部のカテゴリーマネージャーの力をそぐことになります。

まとめ

情報の非対称性を補い、調達組織の戦略性を増強させるためのカテゴリーマネージャーの重要性についてお話ししました。 次回はTactical Sourcing(戦術的調達)とStrategic Sourcing(戦略的調達)の違いを主軸に、要求者に相見積もりを取らせることの功罪と戦略的調達によってどのように支出コンプライアンスを向上させ購買ユーザーのユーザー体験が変わってくるのかについてお話ししたいと思います。

次回:戦わずして勝つための調達購買戦略

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