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前回“SAP S/4HANA for Group Reporting(以降 Group Reporting)“の第2号として、内部取引照合についてご紹介しました。今回の第3号はデータ収集編です!
連載企画として、Group Reportingのコンセプトやメリット、機能などをより深く知って頂けるよう全5回に渡ってご紹介しております。是非、ご一読頂ければと思います。

SAP S/4HANA for Group Reporting 連載企画(全5回アジェンダ)
1.製品コンセプトと特長編
2.内部取引照合編
3.データ収集編 ※当ブログ
4.連結処理編 ※外貨換算、内部取引消去、資本連結など
5.管理連結とレポーティング編 ※複数通貨連結、計画連結、セグメント連結など

連結決算において、データ収集業務が課題になっていませんか?

昨今、企業のグローバル展開や事業の拡大に伴い、連結グループ会社の数は年々増加しています。そのような環境下で、グループ会社の事業規模に合わせた会計システムを選定、もしくは買収した企業の既存システムを継続利用せざるを得ないケースも多々あるかと思います。その結果、グループ内の会計システムがバラバラになり、連結決算において各グループ会社からのデータ収集に課題を感じられている経営企画・経理のご担当者も多いのではないでしょうか?
データ収集は、グループ個社の単体決算が締まった後、連結パッケージやデータ連携ツールにて親会社の連結決算システムにデータを収集します。昨今のトレンドとして、制度連結だけでなく管理連結の高度化に取り組む企業が増える中、グループ会社における連結パッケージ入力項目数の増加、IT部門ご担当者によるデータ連携ツールの連携項目に関する継続改修、また、親会社経理・経営企画では、収集したデータの整合性チェックに苦労されているケースをよく伺います。従来は制度連結目的でグループ会社財務諸表の勘定残高を中心にデータ収集していましたが、昨今ではグループ経営において意思決定に必須となる管理連結にも対応が求められています。これには、より細かな分析項目を持ったデータを如何に効率的に不整合なく収集できるかが、連結決算の鍵となります。SAPの連結ソリューションでは、制度連結だけでなく、管理連結の高度化を実現する為、グループ会社の規模や使用している会計システムに応じたデータ収集方法と収集したデータの整合性を自動チェックする仕組みを提供しています。

SAP S/4HANA for Group Reportingのデータ収集方法とその特長

それでは、Group Reportingでご提供している4種類のデータ収集方法の仕組みとメリットをご紹介します。もちろん、①~③(財務系)と④(非財務系)を組み合わせてご利用いただくことも可能となっています。

➀S/4HANA仕訳帳リリース

第1号でご紹介させて頂きましたが、Group Reportingは単体会計の環境に連結会計が同居する仕組みになっています。このように、同一システムで単体及び連結機能を利用する場合のデータ収集方法として、仕訳帳リリースを提供しています。仕訳帳リリースでは、単体会計データテーブル(テーブル名:ACDOCA)の会計伝票明細データを連結会計データテーブル(テーブル名:ACDOCU)に対して、制度連結・管理連結で必要な粒度にデータを集計し、連携することが可能です。従って、サマリーされたデータではなく、制度連結・管理連結に必要な分析項目(セグメント、利益センタ、品目等)を保持した会計伝票明細をボタン1つで瞬時に収集します。このように収集された精度の高いデータを用いて、連結処理の高度化と連結決算業務の効率化が可能となっています。
また、グループ会社が他の会計システムを利用している場合には、SAP S/4HANA for Central Finance(以降、Central Finance)を活用する事で、グループ会社の会計システムから親会社のSAP S/4HANA(以降、S/4HANA)へ会計伝票明細を収集し、グループ総勘定元帳(テーブル名:ACDOCA)として一元管理する事が可能です。一元管理された会計伝票明細は、Group Reportingの仕訳帳リリースにて後続の連結処理が可能となります。

このように、S/4HANAにグループ会社の会計伝票明細が一元管理されている場合、連結パッケージの入力項目やデータ連携ツールの改修を気にする事なく、連結に必要なデータをスピーディかつ不整合なく収集可能です。

②API経由のデータ連携

Group Reportingではグループ会社の会計システム(SAP, Non-SAP問わず)とのインターフェースを開発する為のAPIも提供しています。前述のCentral FinanceではGroup Reportingへのデータ活用以外にも、期中からの内部取引照合や不正取引管理といった要件にも対応可能です。ここまでの要件がない場合には、APIによってグループ会社の会計システムとGroup Reportingを直接接続する事も可能になっています。API接続においても、管理連結に必要な分析項目まで含めたデータ収集が可能です。

③フレキシブルアップロード

他システムを利用されている小規模のグループ会社を対象として、フレキシブルアップロード(ファイルアップロード)によるグループ会社の単体会計情報を収集可能です。具体的には、グループ会社の経理ご担当者がExcelシートにデータ入力し、そのファイルをGroup Reportingにアップロードすることが可能となっています。Excelシートのテンプレートも提供していますので、ファイルフォーマット(連結パッケージ)検討にご利用可能です。

④Group Reporting Data Collection(以降、GRDC)

こちらも他システムを利用されているグループ会社が対象となりますが、パブリッククラウドソリューションであるGRDCを利用可能です。GRDCでは、2種類のデータ収集が可能です。
1つ目は、ウェブブラウザ上のフォームでのデータ収集です。下図はフォームの1例ですが、グループ会社経理ご担当者が、勘定科目別に残高や増減情報といった単体決算の情報を入力したり、注記情報をコメント情報として入力可能となっています。財務数値データだけでなく非財務データ(注記情報等)も収集可能です。他システムを利用されているグループ会社を対象と記載しましたが、非財務データの収集機能として、S/4HANAの利用有無を問わず活用可能です。S/4HANA利用中のグループ各社は、仕訳帳リリースを実行する事でフォーム上に残高や増減情報が表示されますので、関連する注記情報を入力します。このようにデータの二重入力等は、発生しない仕組みとなっています。また、フォームは縦横の項目の指定のみならず計算式を自由に定義することもできます。ご参考までですが、計算式で使用可能な関数一覧はこちらから確認できます。

2つ目は、ファイルアップロードによるデータ収集です。③(フレキシブルアップロード)との違いは、グループ会社のコード体系のままデータ収集する事が可能な点です。データ収集時に、予め設定したデータマッピング規則(グループ会社と親会社のコード体系のマッピング)に従って変換処理が行われ、連結会計データテーブルにデータを登録する事が可能です。従って、グループ会社でのデータ準備タスクの負荷が軽減されます。
このようにGRDCによるデータ収集の活用により、連結パッケージやメールを使った財務・非財務データ収集から脱却し、業務の効率化が可能です。

データ収集機能まとめ

前述の4つのデータ収集機能をご活用いただく事で、制度連結に必要なデータ(財務・非財務)だけでなく、管理連結に必要なより細かな分析項目を保持した単体会計データを収集可能です。これにより、連結パッケージの入力項目に変更が生じた場合でも、システム改修をする事なく、効率的に必要なデータを収集し連結処理に活用可能です。

Group Reportingのデータ整合性チェック機能とその特長

次のステップとして、収集したデータの整合性チェックを自動で行う2つの機能の仕組みとメリットをご紹介します。

➀仕訳帳評価

仕訳帳評価機能では、会計仕訳データを連結処理プロセス実行前に自動チェック可能です。下図の通り、単体会計の勘定コードと連結会計の勘定コードのマッピング漏れなどで、貸借残が不一致になっていないかシステムによる自動チェックします。グループ会社側で追加登録した勘定コードと連結勘定とのマッピング漏れがあった場合には、マッピング情報を修正し、再度仕訳帳リリースを実行する事が可能です。これにより、収集したデータの品質担保が可能です。

②報告データチェック

報告データチェック機能は、事前定義したチェックルールによって収集したデータ(4種類全てのデータ収集方法で)に対して整合性チェックが可能です。下図は、貸借対照表上で、資産=負債+純資産の金額が合っているか自動チェックする為のルールの設定画面です。

これら2つのデータ整合性チェック機能を活用する事により、収集したデータの整合性チェック業務を効率化し、データ品質を向上させる事が可能になります。また、制度連結と管理連結のチェックレベルを使い分ける事で、管理連結時はスピードを重視し、制度連結時はデータの正確性を重視するといった目的別のチェックルールを設定することもできます。

まとめ:SAPソリューションで実現できること

ここまで、本ブログにお付き合い頂きましてありがとうございました。最後に今回ご紹介したSAP連結ソリューションで実現するデータ収集業務の特長をまとめたいと思います。

  • 制度・管理連結に必要な粒度でのデータ収集とグループ会社による財務数値報告プロセスの排除
  • 連結要件や会計システムに応じて選択・組み合わせて利用できる、データ収集の柔軟性
  • 精度重視・スピード重視など連結要件にあわせて柔軟に定義可能な整合性チェック機能

Group Reportingの活用によってグループ会社のデータ収集プロセスをリノベーションすることで、制度連結決算の効率化・早期化を図ると共に、管理連結の高度化が可能になります。連結決算業務と経営分析(管理連結)業務に携わっている皆様への、ご参考になれば幸いです。

次号は、連結処理編として、外貨換算、内部取引消去、資本連結等をどのように実施できるのか、一歩踏み込んだご紹介を予定しています。