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連結決算プロセスにイノベーションを! ~SAP S/4HANA for Group Reporting 連載企画 第5弾(全5回)~

フィーチャー

※旧ブログサイトよりの転載ブログです。部分的にリンクが機能しない箇所があります。予めご了承くださいますようお願い致します。


これまで4回にわたって”SAP S/4HANA for Group Reporting(以降Group Reporting)”についてご紹介してきました。
連載企画の最終回となる第5回は、管理連結とレポーティング編です。

SAP S/4HANA for Group Reporting 連載企画(全5回アジェンダ)
第1回:製品コンセプトと特長編
第2回:内部取引照合編
第3回:データ収集編
第4回:連結処理編 ※外貨換算、内部取引消去、資本連結など
第5回:管理連結とレポーティング編 ※複数通貨連結、計画連結、セグメント連結など ←当ブログ

企業グループにおいて、連結決算(制度連結)が必須要件として行われるようになってから長い月日が経ちました。昨今でも企業グループ全体としての競争力を上げるべく、国内外問わずM&Aによって事業規模を増大したり、あるいは事業再編したりと法人の枠を超えたビジネスが行われています。

このようなビジネス環境においては、法令要件に基づいた制度連結のみならず、管理連結についてもグループ経営管理を実践する上で力を入れる企業が増えています。

最終回となる第5回では、Group Reportingによって実現できる管理連結機能についてご紹介します。また、制度連結・管理連結問わずお使いいただけるレポーティング機能についても併せてご紹介します。

管理連結

「管理連結」と一言で表現しましたが、具体的に管理連結で実現したいことは、企業ごとのビジネス環境によって様々な要件が存在します。例えば、「報告に使用している日本円での連結のほか、管理用に使用している米ドルでも連結処理がしたい」「いまの連結対象企業のうち、ある企業の持分比率が変化したら連結の数値がどう変わるのかを知りたい」「法人の枠を超えた事業としての売上高について、内部取引消去後の金額を知りたい」、その他にも月次ベースでの連結や計画値の連結、製品別連結など、枚挙にいとまがありません。連結業務を担当されている方にとっては、こういった要件に対し、どのように対応できるのかが重要なポイントとなります。

SAPのGroup Reportingはこうした管理連結要件にも柔軟に対応することが可能です。第1回でご紹介しましたようにSAP S/4HANA(以降S/4HANA)内の個社の会計伝票をそのまま連携する仕組みになっていますので、個社伝票上にある情報項目をそのまま活用することで、二次的なデータ加工無しに管理連結要件への対応が可能になっています。

それではGroup Reportingの管理連結の各機能について、下記アジェンダに沿ってご紹介します。
・柔軟な連結グループによる連結処理
・セグメント連結(管理会計目的)
・複数通貨連結
・計画連結

柔軟な連結グループによる連結処理

Group Reportingでは、企業グループ全体での連結処理と共に、一部の企業だけを連結グループでくくった小グループでの連結処理が可能です。制度連結的には、例えば事業セグメントや地域単位で法人をグルーピングした連結処理を行うことができます。このときグループの統括会社から見た持分比率と同時に、ABC事業の統括会社から見たABC事業としての持分比率、XYZ事業の統括会社から見たXYZ事業としての持分比率を考慮して連結処理が行われます。

一方管理連結的には、この機能を活用して連結範囲の変化シミュレーションのような使い方をすることが可能です。例としては現在の連結範囲からある一社が除かれたとき、連結の数値がどうなるのかを確認したり、あるいはある企業の持分比率が変化して持分法適用から連結子会社になった場合に連結の数値がどうなるのか、その影響度合いを分析したりすることが可能です。通常このような処理は、連結グループ別に複数回の連結処理の実行が必要になりますが、Group Reportingではグループ各社の総勘定元帳から必要なデータを自動的に収集・集計し、素早く連結処理が行えます。

柔軟な連結グループによる連結処理

セグメント連結(管理会計目的)

事業ごとに法人が分かれている企業グループもありますが、法人の枠にかかわらず複数の事業を展開している企業も多いかと思います。このような場合、開示情報として公開セグメント連結をすると同時に、管理会計的な観点から事業部など、より細かな粒度で業績管理をすることも重要なトピックとなります。

一般的な連結処理では企業間の内部取引を消去することによって連結処理を行っていきますが、Group Reportingでは、それよりも細かな粒度であるセグメントや利益センタ(PL/BS管理の最小ユニット)の単位で内部取引を消去することも可能になっています。これにより、セグメントや利益センタのマスタ設定によっては、公開セグメントよりも細かい事業部や製品グループ別での連結数値が確認できます。

また、これを下支えする仕組みとして、第2回で内部取引照合の機能をご紹介していますので、ご参照いただければ幸いです。

このような連結処理を行うためには、日々の仕訳データとして適切にセグメント情報(自社セグメントと相手先セグメント)や利益センタ情報(自社利益センタと相手先利益センタ)を入力できるのかが鍵になるのですが、この点がクリアできれば、連結処理の自動化率が向上し、業務の生産性向上につながります。

またGroup Reportingの内部取引消去の機能には、その消去範囲をレポートの集計階層に応じて自動判定できるという特長があります。例えば利益センタ別のレベルで連結処理を行っている場合、利益センタの階層構造を全社、事業、製品グループと設定しておけば、連結レポート上、各階層に合わせて自動的に内部取引消去を考慮したレポーティングが可能になっています。

セグメント連結(管理会計目的)

このような組織観点での管理連結以外にも、第4回でご紹介した片側仕訳の機能によって製品別や製品グループ別での連結処理を実行することも可能です。

ここまで、「グループ内の企業の一部だけをくくって連結処理をする」「事業や地域といった法人よりも細かな単位で連結処理をする」といった組織の観点での管理連結についてご紹介しました。

複数通貨連結

グループ企業がグローバルに展開されている場合には、誰がその情報を使用するのかによって適切な通貨でのレポート作成が必要です。例えば日本に本社があり米国市場で上場しているといったケースでは、日本円と米ドルの両方で連結数値を確認したいという要件が考えられますが、Group Reportingでは一度の連結処理で複数通貨での連結処理を実行することができます。

これはグループ全体を連結する場合も、一部のみを連結する場合も、あるいは利益センタやセグメント単位で連結する場合も同様です。

例えば、グループ全体としては日本円と米ドルとユーロの3通貨で連結処理をしつつ、米国での連結では米ドルと日本円、ヨーロッパでの連結ではユーロと日本円といった連結処理や、複数の換算レートによる連結処理が可能となっています。

複数通貨連結

計画連結

Group Reportingでは実績値の連結処理だけでなく、計画値の連結処理も対応可能です。S/4HANA内にある個社の計画値情報を仕訳帳リリース機能によって、実績データ(会計伝票)と同じように、計画連結の元データとして使うことが可能です。

さらにSAP Analytics Cloud(以降SAC)というBI & Planningツールとの連携が可能になっており、SACからはGroup Reportingの連結データをリアルタイムで照会することができます。これにより、SAC上でリアルタイム(データ連携を必要とせず)に連結数値の予実を比較・分析することが可能です。また、Group Reporting上で作成された計画連結データをSACに連携し、計画数値の修正もできるようになっています。

なおS/4HANA OP2022(2022年秋ごろリリース予定)にてSACで修正した連結ベースの計画数値を直接Group Reporting(ACDOCU)へ書き戻す機能もサポートされる予定になっています。

計画連結

 

レポーティング

ここまでGroup Reportingの管理連結機能についてご紹介しましたが、最後に、管理連結・制度連結問わずGroup Reportingでご利用いただけるレポート機能について簡単にご紹介します。

会計明細へのドリルダウンによる連結数値の影響度分析

第1回でご紹介させていただきましたように、Group Reportingでは連結レポートから各社総勘定元帳へのドリルスルーが可能です。この機能を利用すると、どの要素が連結数値に対して大きな影響を及ぼしているのかを分析することが可能です。

以下の動画はその画面操作イメージです。連結レポート上の売上高をクリックすると、その明細一覧を直接確認しにいくことが可能です。またこの明細一覧画面では、どのような属性を持った明細がいくらあるのかを素早く確認することができます。明細へ直接アクセスすることによって、得意先や販売製品など連結数値だけでは見えない情報を把握することができ、分析効率の向上に寄与します。

SAP Analytics Cloudによる分析レポーティング

前述の計画連結のトピックではSAC(Planning)をご紹介しましたが、BI機能として連結財務諸表などをレポーティングすることも可能です。連結財務諸表のビジネスコンテンツが標準提供されていますので、常に最新のデータを連結財務諸表のフォームにあてはめて確認することができます。ご参考まで、標準ビジネスコンテンツを使用したレポート画面のイメージをいくつかご紹介します。

①連結収益・費用の予実対比

予実対比の画面では、単純に予実を比較するほか、レートによる影響度の確認が可能です。予実差分のうちレートの変化によるものがどれだけあるのかを確認したり、予算策定時のレートでの実績を予算と比較したりすることができます。

連結収益・費用の予実対比

②連結キャッシュフロー計算書(間接法)の月次推移表

連結ベースのキャッシュフロー計算書(間接法)を月次にてご確認いただけます。

連結キャッシュフロー計算書(間接法)の月次推移表

③概要画面

連結数値のKPIをまとめたダッシュボードが確認できます。

概要画面

 

まとめ

今号ではGroup Reportingで実現できる管理連結とレポーティングの機能についてご紹介しました。

・組織、製品、通貨といった視点で管理連結を柔軟に実施可能です。
・計画値についても実績値連結同様、個社の計画値をもとにした連結処理が実行できます。
・制度連結、管理連結の両方にてご利用可能な分析・レポート画面を提供しています。

最後に、「連結決算プロセスにイノベーションを!」というタイトルで進めてまいりました本連載企画も今回が最終回となります。Group Reportingは、制度連結のみならず管理連結にも柔軟に対応できるソリューションであるということがご理解いただけたかと思います。S/4HANAのご採用を機に制度連結・管理連結プロセスの刷新を図る、制度連結は既存システムを利用しつつ管理連結からスタートするなど、導入の仕方については色々なパターンが考えられます。少しセールストークとはなってしまいますが、是非、貴社にとって最適な導入案をご案内させていただければと思いますので、ご要望・ご質問などございましたら、当社営業など問い合わせ窓口までご連絡いただけましたら幸いです。全5回お付き合いいただきまして誠にありがとうございました。連結決算に携わる皆様のご参考になれば幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。