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実務で使ってみて分かった、誰でも出来るピープルアナリティクス ~始めるための具体的な第一歩~

20 Nov 2013 --- Businesswoman preparing presentation on graphical screens --- Image by © Monty Rakusen/Corbis

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ピープルアナリティクスは難しくない

最近では“ピープルアナリティクス”と検索すれば、たくさんの記事が出てくるようになりました。また、実際に何かしらのピープルアナリティクスに取り組まれている企業人事も増加傾向にあります。

その一方で、やってみたいけど“何からやれば良いのかよくわからない”や“本当に実務に役に立つのかなぁ”と思われている企業人事もまだまだ多いのではないかと思います。

私も取り組みを始めた当時は分析のスキルや経験が無かったので、人事部員として上記のような感情を持ちながらも、なかなか始めの一歩が踏み出せなかった記憶があります。

しかし、自分なりに統計の本を読んだり、実際に簡単なデータを分析したりしてみると、思っていたほど難しいものでは無く、実務にも使える強力なツールである事がわかりました。今回はそんな経験談をお伝えすることで、皆様がピープルアナリティクスに取り組まれるきっかけになれば幸いです。

ピープルアナリティクスで現場を変える

具体的な内容に入る前に、ピープルアナリティクスの変遷について簡単に整理したいと思います(図1参照)。数年前からの人事界隈における大きな潮流として、従来の画一的な各種施策から事業や人財の多様化に伴って“個”にフォーカスする施策の重要性が高まっています。

人財データにおいても、主に人事部による管理を目的とした使用から、現場管理者に対するマネジメント支援や従業員個々人に対するモチベートへの利活用など、ユーザや活用用途の変化が起きています。

また、データ一元化や可視化など、幅広い利活用を可能とするHRテクノロジーの変化もピープルアナリティクスの普及促進を後押ししている一つの要因です。そして、データ利活用の広がりに伴って考えるべき現場のリテラシー向上など、データガバナンスへの対応も変化しています。

データ活用の主体を人事部から現場や個々人に移すことで、従来は人事部から提供される限られたデータや指示に基づいて動いていた現場や個人が、自分達でデータを見て、分析し、自発的にかつ素早く行動を起こす、そんな行動変容を起こさせる事がピープルアナリティクスの本質です。

言い方を変えれば、データの利活用により人や組織の働き方を効率化・高度化させて、本来やるべき事に時間を創出するためにピープルアナリティクスは活用されるべき、とも表現できます。

図1:ピープルアナリティクスの変遷と今後

実際にデータ分析をやってみる

さて、ここから具体的な話に入っていきます。データが十分に無く、また分析スキルもそれほど無い中で、データを活用した現場主導の意思決定(図1のSTEP3)に一足飛びに取り組もうとしてもそれは困難を伴います。

そのため、まずは在りもののデータで、かつ簡単なデータ分析から取り組まれることをお勧め致します。今回は、私自身が事前知識ゼロでやってみた、適性検査の結果からハイパフォーマーを特定した分析事例の概要をご紹介したいと思います。

まず分析に使用するデータを準備する必要があります。主なデータ項目例は以下の通りです。(表1参照)

具体的なデータレコードのイメージは以下の表の通りです。(適性診断項目を4つに簡素化し、かつダミーデータとする)

表1:分析に使用するデータ例

このようにデータを準備できたら、次はいよいよ分析です。ここでは母集団における2つの群(ハイパフォーマーフラグ:1 と0の2群)において、適性診断の各①~④に平均の差があるか否かを分析しました。

その際、単純な平均差ではなく、統計的に見ても優位な差があるか否かを分析するためにt検定という手法を使用しました。

ツールは、まずはExcelで十分かと思います。重回帰分析やt検定の機能はExcelの標準機能についており、オプションのアドオン設定で簡単に使えるようになります(設定方法は、インターネットで検索頂くとすぐにみつかります)。

Excelのタブから「データ分析」を押して分析ツールとして「t検定」を選択します。あとは分析したい2群のデータ範囲を選択して「OK」を押すのみです。例えば、適性診断の「①内向的 or 外向的」における差の分析であれば、変数1にハイパフォーマーフラグ=1に該当する①のデータをすべて選択し、変数2にハイパフォーマーフラグ=0のデータをすべて選択します(図2参照)。

図2:Excelのt検定ツールにおけるデータ選択例

分析結果を見るためには、ある程度、統計学の用語を理解する必要がありますが、さほど難しいものではありません。ここで臆せず書籍やインターネットで調べれば、すぐに意味がわかると思います。

データ分析による新たな発見

ここでは分析結果の詳細な見方に関しては省略しますが、結果としては「①内向的 or 外向的」と「③維持型 or 変革型」の項目に対して、ハイパフォーマーとそれ以外の人材とでは統計的な有意差があることが判明しました。

つまり、ハイパフォーマーほど、外向的であり、かつ変革型の適性が強いという事です。一方で、「②思索派 or 行動派」については、特に差は見られないといった結果でした。

そして興味深かったのは「④基礎能力」です。結論から言いますと、こちらもハイパフォーマーとそれ以外で、統計的な有意差は見られませんでした。

新卒時SPIなどを筆頭に、より基礎能力(≒地頭、偏差値)が高い人材を獲得しようとする企業は多いかと思いますが、基礎能力とハイパフォーマーに相関は無いという事がわかりました。

企業の中では、このような基礎能力を昇格時に勘案している、あるいは昇格調整会議などで使用する個人プロファイルに表示しているため、この点数が高い人はおそらく優秀であろうとバイアスが掛かっているケースは多いかと思います。

しかしながら、この分析によって、それは正しいとは言えないという事がデータで示されました(表2参照)。

表2:分析結果イメージ

ハイパフォーマーの定義は企業や職種(営業、技術など)ごとに異なるため、分析結果もそれぞれ差異が出るものと思われます。自社の実際のデータを分析してみると、意外、かつおもしろい発見があるかもしれません。

ぜひ、手を動かしてやってみて頂ければと思います。

ピープルアナリティクスを人事の武器とする

もちろん、日々の人事業務運用においては、分析結果のみに頼って昇格決定や人選を行うわけではありません。しかしながら、客観データとして可視化することは人材育成の議論を活発にし、先述の基礎能力に対して発生していたようなバイアスを除去する事にも繋がります。

ピープルアナリティクスと聞くとハードルが高いように感じられますが、Excelと簡易なデータさえあれば第一歩を踏み出して頂けることが理解して頂けたかと思います。

ピープルアナリティクスは、人事業務の効率化・高度化を支援する強力なツールであるだけでなく、分析者本人にとっても強力なスキルになります。

SAPでは、組み合わせてご利用いただくことで、人事データの一元管理から高度なデータ分析、可視化を一気通貫でご活用いただく事ができるSAP SuccessFactors(人事統合ソリューション)とSAP Analytics Cloud(可視化、分析基盤)を提供しております。

ピープルアナリティクスは決して専門家だけのツールではありません。ぜひ、みなさま活用の第一歩を踏み出しましょう。


 

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