SAP Japan プレスルーム

Future of Work ~SAPが追求するHR Transformationと新しい働き方~ 第1回

はじめに

日本でも特にパンデミック以降、会社と個人、働く場所・働き方について大きな課題を突き付けられています。数年前に「働き方改革」というキーワードが日本市場でブームとなりましたが、これからの社会において、今後の働き方と改めて向き合わないといけないのではないでしょうか?

2013-14年にSAPジャパンCHROを務めたあと、SAP全社の人事変革をリードしてきたDr. Christian Schmeichel (クリスチャン・シュマイシェル)が2022年11月に来日したのに併せて、SAPの提唱するFuture of Workを紹介したいと思います。

彼の役職は、SVP and Chief Future of Work Officerです。Chief HR OfficerやChief People Officerとは異なるこの職務、欧米では既に数社が同様の職務を設置し、それぞれの会社の変革をリードしているそうです。

SAPが提唱する「Future of Work」コンセプトに準じて、下記全6回で「Future of Work ~SAPが追求するHR Transformationと新しい働き方~」と題して連載致します。SAPは10年以上の長い時間と労力をかけて、人事と組織の変革に取り組んできました。SAPの経験をこの連載で紹介することで、皆様の人事変革のヒントになれば幸いです。

  1. Future of Workとは
  2. Future of Workを構成する、ワークフォースの未来、人材施策の未来について
  3. Future of Workを構成する、人事組織の未来について
  4. Future of Workを支えるデジタル基盤について
  5. 会社と個人、オンサイトとリモートを考える柔軟な働き方について
  6. Future of workのアクティビティとSuccess Measurement(成功の測定)

SAPがFuture of Workを考えるきっかけとなった3つの背景

今、日本でも多くの企業が人事変革に取り組んでいますが、SAPがFuture of Work、次世代の働き方の検討に着手したことには、大きく3点の背景がありました。

1つ目は、マクロ環境の急激な変化です。

パンデミックや紛争などにより、先行きが益々不透明かつ予測が困難な今、私たちの生活や働き方にも急激な変化がもたらされています。併せてテクノロジーの革新により、あらゆるビジネスを取り巻く環境が複雑さを増し、新たなビジネスモデルも次々に生まれています。また、地球温暖化に伴う気候変動や異常気象、台風や地震といった自然災害など、予測が困難な事象が次々と起こっています。

人事の面では、20代から60代まで多世代による要員構成の多様化が挙げられます。また日本や先進国では、少子高齢化が深刻な問題です。Z世代とよばれるデジタルに精通した世代は、自分たちの価値観や期待を職場に持ち込みます。優秀な人材の争奪戦も激しく、経済やビジネス、個人のキャリアに至るまで、ありとあらゆるものが複雑さを増し、将来の予測が困難な状態にあります。

さらにこの数年、パンデミックや紛争などによって働き方や経済が影響を受けています。今後、これらの事象が世界や日本社会、個人にどう影響を及ぼしていくか、全てを見通すことは難しいでしょう。事業の継続性、生産性、効率性を確保することは、とても難しくなっています。

日本国内の働き方に目を向けてみても、従来の日本の企業では当たり前だった終身雇用や年功序列といった制度は崩れつつあり、人材の流動性が高まるという変化が起きています。

2つ目は、パンデミックをきっかけとしたダイナミックな変革です。

日本市場では、「働き方改革」というキーワードと共に以前から改善活動が始まっていましたが、世界的にもCOVID-19のパンデミックにより、いわば強制的に働き方を変更させられ、企業は事業継続性を求められました。さらに今ダイナミックに加速しているのが、「未来に向けた今後の働き方」を考えることです。企業にとって、選ばれる雇用主としての競争力を維持するのは、本当に重要なことです。

SAPでは、「Future of Work」というトピックをさまざまな要素に分類し、それを持続的に運用できるように、未来の働き方について以下のような活動をしています。

5年後、10年後の事業ポートフォリオを予想した際に、貴社の最適な要員構成はどのようになるのでしょうか?適切な従業員数は何人?AI/ロボティクスによる省力化はどのくらい?どのようなスキルを持った人が、どのような場所で働くのか?もし、企業が5年後、10年後に備えたいのであれば、今から計画する必要があります。戦略的な人的資本投資・要員計画を行うことで、人的資源の全体像を計画する必要があります。

また、新しい労働力をどのように採用するか、オンボーディング、学習、報酬、福利厚生をどのように行うかも考える必要があります。今行っていることが将来にわたって有効であるかどうか、もう一度、検証する必要があります。

 

3つ目は、SAPが事業変革とそれを支える人事変革を行ってきた事です。

SAPは2022年で創業50周年、140以上の国・地域でビジネスを展開して います。従業員数はグローバルで11万人超。日本では約1,700人が働いています。現在は、ドイツ株式市場で時価総額1位の企業となっています。

企業の基幹業務を担うERPといわれるソフトウェアで成長してきましたが、2010年より従来のオンプレミス事業から、買収戦略を伴うクラウド事業へのシフトとサービスの拡充を実行してきました。自らビジネスモデルを変革するうえで、HRの変革も必然だったのです。既存の人材が変化に自ら適応し、会社と一緒に未来を目指して成長するモデルを実現することが求められたのです。

当社が既存の従業員を重視している事は、ドイツに本社を置く企業であることが関係しているかもしれません。日本と似て、ドイツの労働法では人員整理などは安易にできません。そこで当社がチャレンジしているのが、従業員の成長意欲に火を付ける、新しいリーダーシップモデルを導入する、働き方を変える、より多様化した組織をつくる、リスキリングを進める、といった数々の試みです。それらを通して、変化に対応できる柔軟で有機的な組織をつくりあげようとしています。

 

Future of Work の検討に際し考慮した時間軸

私たちは、ポスト・パンデミックなビジネスの世界では新しい考え方が必要だと認識しています。従業員が生き生きと働くことができるように、私たちは、SAPのFuture of Workを実現するために、包括的なアプローチを取りました。

私たちのアジェンダを検討し、設計するために、様々なステークホルダーの要件を3つの時間軸で整理しました。それはパンデミック、ポスト・パンデミック、ニューノーマル(新常識)の3つです。

SAPにおける人事モデルの進化

SAPは自分たちの人事モデルを進化させてきました。興味深いのは、多くのお客様や他の企業でも、私たちの変革と同じような段階を経ていることが多いということです。ここで、我々の取り組みをご紹介します。

SAPの持続的な成功のために、SAPのHR自身も変革を推進し続けてきました。現在SAPにおけるFuture of Workの形成は、最先端の環境で柔軟な働き方を可能にすることをはるかに超えるものです。その最終的な目的は、あらゆる企業をインテリジェントで持続可能な企業にし、グローバルなビジネスネットワークに統合する、SAPのビジョンを実現することです。人事部門が全社戦略を支えることで、お客様と共に築く持続可能な世界を実現するのです。

次回は、「Future of Work」を構成する、ワークフォースの未来、人材施策の未来について具体的に紹介致します。

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