SAP Japan プレスルーム

ニトリが変化への迅速な対応のために推進した、経費精算・管理プロセスの“超シンプル化改革”

SAP Concur部門 株式会社ニトリホールディングス 上席執行役員CIO 兼ニトリデジタルベース代表取締役社長 佐藤 昌久氏(右) 株式会社コンカー常務執行役員 ディストリビューション統括本部 統括本部長 下野 裕久(左)
SAP Concur部門
株式会社ニトリホールディングス 上席執行役員CIO 兼ニトリデジタルベース代表取締役社長 佐藤 昌久氏(右)
株式会社コンカー常務執行役員 ディストリビューション統括本部 統括本部長
下野 裕久(左)

株式会社ニトリホールディングス(以下、ニトリホールディングス)は、家具・インテリアの小売業を展開する株式会社ニトリや、ホームセンターを運営する株式会社島忠などを子会社に持つ、日本を代表する大手小売会社です。事業規模の拡大等に伴い経費精算作業が煩雑さを増す中、ニトリホールディングスはConcur Expenseの導入を決定。約8,000名の社員の経費精算にかかる作業時間の大幅削減に成功したことから、SAP Japan Customer Award 2022の「Cloud Adoption – SAP Concur部門」を受賞。同社がConcur Expenseを活用した経費精算・管理の超シンプル化改革を、どのように実現していったのか、お話を伺いました。


バリューチェーンの効率化の一環として、経費精算プロセスのシンプル化を実行

ニトリホールディングスでは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマンを実現するための中長期ビジョンにおいて「2022年1,000店舗、2032年3,000店舗」という目標を設定しています。目標を達成するための2013~2022年の10ヵ年のテーマは「グローバル化と事業領域の拡大」。積極的に海外出店やM&Aに取り組んできました。

同社は、2021年4月に経費精算・管理クラウドConcur Expenseの導入準備を開始。同年11月にはグループ6社で本格稼働させました。さらには2022年4月にグループ企業の一つである島忠で、2023年1月にニトリパブリックでも運用を開始しました。新システム導入の背景についてCIO(最高情報責任者)の佐藤昌久氏は次のように語ります。

「ニトリグループの事業規模は、2032年までに現在の約4倍まで拡大していきます。環境変化への迅速な対応が求められるなか、IT部門としては、事業規模の拡大を支える基盤づくりのために、新技術の導入によるバリューチェーンの効率化を図る必要があります。経費精算のような業務管理もバリューチェーンの一つにあたりますから、既存システムの見直しは必須でした」

これまで同社では、2014年に導入した経費精算システムを使用してきました。このシステムでは、申請者が経費精算を手入力し、上長や経理部門が申請を全件目検でチェックする必要がありました。
また申請やチェックの過程には、不正や違反防止、平等性の観点からさまざまなルールが課せられ作業が複雑化。手入力による精算エラーの多発から、差戻し率は10%を超えていました。また2020年に新たにグループに加わった島忠に、システムを横展開できないことも課題となっていました。このように事業規模の拡大によって経費精算件数が増加する中で、現行のシステムに対して限界を感じるようになったことが、Concur Expenseの導入を決めた背景です。

新たなシステムにConcur Expenseを選定した理由を、財務経理部ゼネラルマネジャーの善治正臣氏は次のように語ります。

「最大のメリットは、交通系ICカードのSuicaやコーポレートカードのほか、さまざまなアプリとも連携できることです。これにより交通費や経費の精算を自動で管理できます。またユーザーフレンドリーである点も魅力でした。入力に至るまでの画面遷移が少なく、スマートフォンと同様に、慣れないユーザーでも直感的に操作できます。現場に展開しやすいと判断しました」

さらには、海外を含むグループ企業の共同利用を前提としているため、今後M&A等によって、新たな企業がニトリグループの一員になった際の導入・展開が容易な汎用性の高さも決め手の一つになったといいます。

Concur Expenseの導入と同時に、社内ルールの大幅なシンプル化を行う必要があった

ただし同社では、Concur Expenseの導入を前に、着手しなければならないことがありました。それはあまりに複雑化した経費精算の社内ルールを大幅にシンプル化することです。従来のルールは多重目検を前提としており、これに手を付けないままConcur Expenseを稼働させても、その効果は限定的なものになると考えました。

特に複雑で、差戻し理由の1位となっていたのが、出張時の日当のルールでした。役職や出張の目的等によって日当の設定が細分化され、その数は2,800パターン以上にのぼっていたのです。まずは「日当の種類を2,800パターンから19パターンに絞り込む」了承を役員会で得たうえで、Concur Expenseの導入を決めたといいます。

「日当のルールをシンプル化することで、支給される手当てが減少する社員も出ましたが、経費精算にかかる作業時間の削減効果を部署ごとに具体的数値で示しました。その結果、最初は反対していた社員からも徐々に賛同を得ることができました」(善治氏)

また従来出張前に行っていた詳細な出張計画表の提出と細かなチェックが、作業時間や差戻しの増加につながっていたため、出張後の監査を充実させることで、これも簡略化しました。

さらにはConcur Expenseの稼働と同時に、交通費や経費の現金払いを禁止し、Suicaやコーポレートカードでの支払いを義務づけました。これらのキャッシュレス決済をシステム連携することで、正確な情報だけが登録されるためです。現金を用いると、手入力が増え、入力間違いなどの差戻し要因が増加します。以前は一部の社員のみに配布していたコーポレートカードは、その対象を全社員に広げました。

「従来使用していた経費精算システムは、当社のユーザー要件に細かく対応して構築したオンプレミス型のシステムでした。一方、Concur Expenseのようなクラウドサービスの導入にあたっては、ユーザー要件にシステムを合わせるのではなく、提供されるシステムに当社の業務とルールを合わせるかたちへと、発想を変えることが大切です。とりわけ経費精算のような領域では、システムに独自の特性を持たせたところで、それが企業価値向上に寄与するわけではありません。システムに業務を合わせることで効率化が実現されるのであれば、その方がメリットは大きいといえます」(善治氏)

また今回、システムに業務を合わせたことで社内ルールのシンプル化に一定の時間を要したものの、要件定義の作業は最低限で済みました。Concur側が提示したスケジュール通り、導入準備を順調に進めることができたといいます。  

経費精算の作業時間削減により、高付加価値業務に注力できる

同社がConcur Expenseを本格稼働させてから既に1年以上が経過しました。善治氏は「出張が多い部署ほど、新システムへの慣れが早く、作業時間が目に見えて削減された」と語ります。特に効果的なのは、Suicaやコーポレートカードの決済をシステム連携した点だといいます。申請者の入力作業が削減されただけでなく、経理部門の担当者も申請金額にミスがないかをチェックする必要がなくなりました。

元々経費精算業務は、社員の間でも生産性の低い業務という共通認識がありました。さらに海外出張から帰国した社員が経費精算のために出社し、半日近くをかけて作業を行うなど、会社から高いレベルの成果を求められている社員ほど、経費精算にかかる時間も多くなる傾向がありました。Concur Expenseの導入による大幅な時間削減が実現したことで、社員が本来の自分たちのミッションである、成果を出すための業務・活動に注力できるようになったのです。

「すべてが順調というわけではありません。現在約8,000名の社員がこのシステムを使っていますが、毎年数百名単位で新たな社員が入社するため、システム操作に不慣れな者が少なくありません。マニュアル等を整備して周知を図り、入力ミスがある場合には申請できない仕組みを設けるなど、何らかの改善策を講じる必要があります。ただし私たちの状況に合わせてシステムをカスタマイズする、従来のような対策は避けたいと考えています」(善治氏)

同社は、国内の全グループ企業におけるConcur Expense導入を通じて運用ノウハウを蓄積し、将来的にはこのシステムを海外のグループ企業にも展開していく考えです。

「グローバル化に成功する企業の特長の一つに、国内と海外のグループ企業が同一のシステムを使用していることが挙げられます。経費精算システムは、数あるシステムの一つに過ぎませんが、これをきちんと海外展開できるかどうかは、当社がグローバル化を成功させるうえでの試金石になるはずです」(善治氏)

経費精算プロセス改革に続く次のフェーズとして、請求書領域の改革に着手

Concur Expense導入の成功を受け、同社は次のフェーズとしてConcur Invoiceの導入を決定。2022年12月より請求書領域の改革に着手しています。

「ペーパレス化の推進や、インボイス制度、電子帳簿保存法への対応が、新システム導入の一番の目的です。今回Concur Expenseを導入してみて、ベンダーが提供するSaaSを活用するかたちでも、スムーズな運用が可能であることが分かりました。その中でもConcur Invoiceを選んだのは、Concur Expenseを通じて、コンカーが提供するサービスのユーザビリティの高さを実感したからです」(善治氏)

もちろん同社が改革を推進するのは、会計・経理分野だけではありません。佐藤氏は「全体の事業規模の拡大に対応するため、この数年のうちにITに関する大規模プロジェクトを20本近く立ち上げることを計画している」と話します。

「現在ニトリグループには、協力会社も含めてIT人材が約450名います。プロジェクトを遂行するためには2025年に約700名、2032年に1,000名程度のIT人材が必要になると試算しています。そこで2022年6月には、IT人材にとって魅力的な職場環境や報酬等の条件を実現するために、ニトリグループのIT戦略を推進する会社としてニトリデジタルベースを新たに設立しました」(佐藤氏)

同社が今後スタートさせるプロジェクトの中には、SAPジャパンおよびコンカーが貢献できるものもきっとあるはずです。今後もSAPジャパンおよびコンカーは、同社が掲げる「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマンの実現を全力で支援していきます。

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