SAP Japan プレスルーム

ハノーバーメッセ2023にみる製造業の未来へ向けたSAPの取り組み

Modern clean research laboratory

製造業のための世界最大級の展示会であるハノーバーメッセが、2023年も4月17日~21日の日程でドイツのハノーバー国際見本市会場で開催され、盛況を博しました。 これを受けてSAPジャパンでは、5月11日に「Hannover Messe 2023 Japan Webinar by SAP ~欧州のトレンドから考える、激動の時代を日本の製造業が乗り越える道~」と題したオンラインイベントを開催。会期中の現地の様子や製造業の最新トレンドについて、現地で来場者の皆様と交流したSAPジャパンの柳浦健一郎、原尚嗣、古澤昌宏が講演を行いました。本ブログでは、その模様をお伝えしたいと思います。

登壇者:
SAPジャパン株式会社 カスタマーアドバイザリー統括本部 インダストリー・アドバイザー
柳浦 健一郎
SAPジャパン株式会社 デジタルサプライチェーン グローバルCoE ディレクター
原 尚嗣
SAPジャパン株式会社 カスタマーアドバイザリー統括本部 インダストリー・アドバイザー
古澤 昌宏

Hannover Messe日本イベントの様子
左から、柳浦健一郎、原尚嗣、古澤昌宏

SAPジャパンからは4年ぶりの現地参加 SAPとして日独経済フォーラムにも初登壇

コロナ禍を経て、SAPジャパンからは4年ぶりの現地参加となった今回のハノーバーメッセ 2023。出展企業数および来場者数は、コロナ禍前の2019年の約3分の2にまで戻り、現地の展示会場は今後も順調な回復が期待される明るい空気にあふれていました。 今回のハノーバーメッセにおけるSAPのトピックとして、初めて日独経済フォーラムに登壇したことが挙げられます。このフォーラムは毎年異なるテーマを設定して、ドイツと日本の企業が自社の取り組みについて発表し、そこからさまざまなコラボレーションが生まれる貴重な交流の場です。今回はドイツからSAPとシーメンス、日本からは三菱電機と鴻池運輸の4社が登壇し、エネルギーやサステナビリティといったテーマについての議論が行われました。 また展示会場に設けられたSAPブースは、約950㎡の大型スペースを大きく2つのエリアに分け、各業務領域のソリューション展示には、連日多くの来場者が訪れました。SAPジャパンからも3名の社員が常駐し、日本からの来場者の皆様と展示内容や最新の技術動向に関して、活発な交流が行われました 。

現地Hannover MesseのSAPブースで実施した日本語ツアー

「3つのC」のコンセプトに基づく製造業のショーケースを紹介

今回のSAPブースの展示では、

という「3つのC」がコンセプトとして掲げられました。 この背景には、自然災害や戦争など、現代の地政学的リスクによるサプライチェーンの分断に対応するための「レジリエンス」の課題。もう1つは、全世界で高まる「サステナビリティ」の要請にどう応えていくのかという課題があります。これに対して、SAPが提唱する変革を推進するためのキーワードとなるのが、これらの「3つのC」です。

会場で展示されたSAPの8つのショーケースでは、やはり製造領域に関する最新のデジタルソリューションが大きな注目を集めました。製造業においては生産パフォーマンスの向上が重要であることは言うまでもありませんが、今回のショーケースでは、SAPが提唱するD2O(Design to Operate:設計、計画、製造、物流、保守のプロセス)の中で、3つのCの実践による「垂直統合=経営的な視点でみた製造現場の透明性」「IoTによる製造現場の高度化と経営情報とのリアルタイム連携」をテーマにさまざまなデモが行われました。以下では、製造領域の3つのデモをピックアップしてご紹介します。

1. Electric CNC Injection Molding:受注から射出成形までの製造プロセスを統合・連携

このショーケースでは、射出成形のプロセスをSAPのテクノロジーでどのように統合できるかを見ていただくためのデモが紹介されました。具体的には、ファナック社から提供された射出成形機およびロボットとSAPのERP、MESを接続して、プロセスを統合するというものです。 このソリューションでは、まずERP側で受注したデータがそのまま生産指示に展開され、その指示がMESに渡され、そこからさらに射出成形機に直接指示が出されます。そして製品(プラスチックのカップ)が約20秒に1つのペースで成形され、最後にロボットが品質検査用カメラにカップを360°見せる動きをします。 ここで特徴的なのは、カップの色やロゴの有無といった個別の指示を受注のタイミングで受け取り、そのまま人手を介さずに最終の成形段階まで進むことができる、まさに垂直統合を実現できる点です。また、これらの一連の指示は製造実績としてフィードバックされ、製造状況のリアルタイムな可視化、データ分析が可能な点も大きな特徴となっています 。

2. Production Control Center:リモートで製造現場をモニタリングし、進捗や機器の稼働状況を管理

このショーケースでは、SAP本社にある「Pop-up Factory」(SAPのデジタルソリューションをお客様のシナリオに基づいて体感できる設備)をハノーバーメッセの会場とリモートでつなぎ、製造現場を監視・管理するデモが紹介されました。製造現場の映像をモニタリングしながら、進捗や機器の稼働状況、各種KPIなどを遠隔から把握して指示が出せるため、物理的に離れた製造現場の稼働品質を向上させ、標準化する上で非常に有効です。 また、現在の熟練技術者の減少や人手不足という課題に対しても、高いスキルを持った人材を特定の現場に常駐させることなく、トラブル発生時などの状況に応じてリモートで指示を出せるなど、人材の有効活用のための仕組みとしても期待されています。 これまでのプロセス系産業では、大規模なプラントなどを制御するために多大な投資や特殊な技術が求められていました。しかし現在は、クラウドやMESといった汎用的な技術を用いることで、技術面でもコスト面でも改善に取り組みやすくなっているだけに、こうしたソリューションは今後、急速な需要の拡大が予想されます 。

Production Control Centerショーケース

3. Component Assembly:人とロボットの協働による製造現場の垂直統合

このショーケースでは、インテリジェントバルブと呼ばれる電子制御ユニットのコンポーネントの組み立てをライブで体感できるデモが実施されました。制御ユニットはロボットアームと人間が協働して組み立てを行い、そのリソース調整と作業指示をSAP Digital Manufacturing の機能で実現します。 具体的な組み立て作業としては、制御ユニットに蓋をかぶせる部分はロボットアームが、それをネジ止めする作業を人間が行います。この際、作業台の上には人間が行う作業指示が投影され、誤った部品を取り付けようとすると、AIカメラが発見して取り付け用のドライバーを作業台に降ろさないといった、人的ミスを防止するための仕組みが組み込まれています こうした人的ミスの防止は、従来であれば人単位、部署単位で個別に対処していたものが、この仕組みではクラウド経由でMESと連携しながら作業工程が標準化されるため、より高い精度でミスを防止することができます。また、すべての作業履歴は画像データと共に保管され、プロセス全体の透明性が向上するメリットももたらされます 。

運用保守領域のショーケースに「これこそが、まさに私たちがやりたいこと」という賛同の声

もう1つ、今回のハノーバーメッセのSAPブースでは、製造業の運用保守領域のショーケースも来場者の大きな関心を集めました。以下で、その中の2つについてご紹介します。

4. Connected Asset:分散した現場の連携による統合オペレーション

その1つである「Connected Asset」では、発電用風車が稼働している現場と、オペレーター、オペレーターを支援するフィールドサービス、メーカーがそれぞれ分散配置されている状況の中で、どのようにオペレーションの垂直統合を実現するかを見ていただきました。 この目的は、①風車の状態をオペレーターが的確に管理し、②フィールドサービスがメンテナンスを行い、③メーカーが製造者責任に基づいて顧客との取引を継続するという連携を実現することにあります。そのためには、以下のような条件が必要になります。

ショーケースでは、この3点を踏まえて共同オペレーションがなされていく仕組みを紹介しましたが、デモを見た工場向けのアセットを開発している技術者の方からは、「これこそが、まさに私たちがやりたいことです」という賛同の声が寄せられました 。

5. Digital Twin Ecosystem:複数メーカーの構成部品を一元管理するAAS活用

このショーケースでは、複数のAGV(無人搬送車)とロボットが連動するデモが紹介されました。これは、インダストリー4.0で提唱されたAAS(Asset Administration Shell:アセット管理シェル)の活用事例です。これにより、AASをインターフェースとして、物理的な設備や機器、システム、そして人をデジタルの世界とつないで稼働状況を可視化できるようになります。同時に、オープンスタンダードであるAASの規格に準拠することで、多様なメーカーの設備や機器をつないで一元的に管理することが可能になります。 今回のデモでは、AGVの構成部品のところにQRコードが貼ってあり、それをスマホやタブレットで読み取ることで、この構成部品にどんなパーツが入っているかという情報、また付随するドキュメントなどもすべて参照できるようになっています。これらの情報をもとにマルチベンダーの機器が同じ現場で連携し、進捗に合わせて同期をとりながら共同で作業を進めていくことができます。 近い将来、AASは分散型デジタルインダストリー4.0のエコシステムに組み込まれていくことが期待されており、その最初の段階として製造現場のさまざまな機器を同じフレームワーク上で扱えるようにすることが求められています。今回の展示会場では、SAP以外の多くブースでもAASのデモが行われおり、この点にもその注目度の高さが示されています 。

今回のハノーバーメッセ 2023では、このブログでご紹介した他にも、サプライヤーとバイヤーがプロセスと情報を共有しながら連携する「Business Network」や、企業・組織を横断してデータを共有する「Data Space」など、世界中から注目を集める多くの新技術がSAPブースで紹介されました。 次回のハノーバーメッセは、すでに2024年4月の開催日程が発表されています。日本からも製造業の経営者や技術者の参加が増えている中、皆様もぜひ来年は現地の会場に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

最後に今年のHannover Messeのハイライトを以下の動画よりぜひご覧ください。

【Hannover Messe 2023】ハイライト SAP ブース紹介編

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