乗客を約束どおりに目的地へと運ぶことは、デルタ航空が顧客、従業員、株主間の「好循環」と呼ぶものにとって最低限必要なことです。
そして今、同社は、デジタル好循環を作り出すという戦略をシンプルな原則に基づいて拡大しています。それは、「パーソナライズされたシームレスなカスタマーエクスペリエンスを提供するには、従業員にも同じことを行う必要がある」という原則です。そして、人工知能 (AI) を活用して、顧客の期待と従業員のスキルおよび意欲が交差するところにトレーニングとキャリアデベロップメントを構築しています。
デルタ航空の HR イノベーションおよびワークフォーステクノロジー担当マネージングディレクターのティム・グレゴリー (Tim Gregory) 氏は次のように述べています。「テクノロジーと経験則を用いれば、お客様の利益のために求められている以上のことをしたいと従業員に思わせる、パーソナライズされた良質な従業員エクスペリエンスを提供することができます。会社が従業員に尽くせば、従業員はお客様に尽くしてくれます。これが、スキルベースの組織の土台になります」
生成 AI で顧客と従業員を支援
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グレゴリー氏は今年の SAP Sapphire & ASUG Annual Conference Orlando で講演し、デルタ航空が生成 AI の概念実証を実施中であると語りました。同社は、汎用スキル記述書を、リアルな業務要件を正確に反映した能力へと自動的に変換する生成 AI を開発しようとしています。これは、最新の従業員データと顧客データに基づいて更新されます。
さらに、グレゴリー氏は次のように語っています。「我々は、直感的な人間のフィードバックによる強化学習 (RLHF) の概念を取り入れ、単なる微調整を超えて、採用マネージャーが機械にフィードバックを提供できるようにしたいと考えています。こうすることで、従業員の時間は、お客様の利益とビジネス目標の達成のために使われるようになります」
以下、デルタ航空が顧客満足度を高め、競争優位性を得るために従業員エクスペリエンスをどのように向上させていったかについて語った、グレゴリー氏のプレゼンテーションのハイライトをご紹介します。
CX を EX に結び付けることで、カスタマーセントリックなビジネス成果を出す
グレゴリー氏によれば、スキルベースの組織は、人材を効果的に配置する可能性が 107% 高く、さらに優秀な人材を維持でき、成長および能力開発ができるすばらしい場所として評価される可能性が98%に上るという調査結果が出ています。カスタマーエクスペリエンスと従業員エクスペリエンスを結び付けるデルタ航空の戦略が高いビジネス成果をあげていることは事実です。Forbesは、デルタ航空を World’s Best Employers(世界最高の雇用主)の 6 位にランク付けしています。同社は、定刻どおりの到着と信頼できる消費者ブランドとしては 1 位です。
データは、顧客にとって最も大切なのものは何かを教えてくれるだけでなく、入社間もない社員にとっても昇進意欲のある社員にとってもポジティブな従業員エクスペリエンスをデルタ航空が創出するのに役立つインサイトも提供します。例えば、同社はマネジメント職の 25% を、顧客対応業務に従事している社員から登用するという目標をすでに達成しています。
グレゴリー氏は次のように述べています。「デルタ航空の従業員は多様性に富んでおり、教育レベル、能力などさまざまなバックグラウンドを持っています。最前線で働く従業員を経営側に引き入れることは、堅実なビジネスの立場からも理にかなっています。彼らが持つカスタマーセントリックな考え方を、マネジメント業務に取り込むことができるからです。それにより、我々は顧客重視の戦略を構築することができます。彼らの持つ知識をそのまま活用できるため、外部から人材を引っ張ってくる必要がなく、学習曲線や生産性を上げるまでの時間が短くてすみます。組織内で昇進させる方がコスト効率がよく、また、後継者計画にかなった人材を多く確保できます」
グレゴリー氏は、同社の経営層を除く管理職の 90% で、大学の学位が不要になったことも付け加えました。
SAP の HXM ソリューションには、関連性および信頼性の高い、責任ある AI が組み込まれています。
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SAP® SuccessFactors® が提供するキャリアパスインテリジェンス
顧客対応をするアルバイトから正社員になりたいと考えるスタッフを支援するために、デルタ航空は SAP SuccessFactors ソリューションの人材インテリジェンスハブを使用して、従業員の継続的学習のための、動的なスキルベースのエクスペリエンスを提供しています。また、個々の従業員向けの成長ポートフォリオを作成しました。成長ポートフォリオは、個々の現行のスキルと能力で構成されるプロファイルで、組織内外の公式/非公式の学習機会(AIベースのアルゴリズムで推奨されたものも含む)に結び付けられます。
グレゴリー氏は次のように語っています。「当社では、業界のトレンドと組み込みインテリジェンスを自動的に取り込む AI 駆動型スキルオントロジーといった革新的テクノロジーを導入しています。我々は、どのスキルがデルタ航空にとって最も重要かを示すことができます。そして、従業員はそうしたスキルを現在の自分の能力、強み、スタイル、意欲と合わせ見ることで、簡単に自分のキャリアパスを作成できます。コンテンツはすべて、デルタ固有のスキルをベースにして、各従業員のキャリア目標に合わせてパーソナライズされます」
近代的なスキルベースの組織を構築するには
デルタ航空では、従業員のプロファイルと学習やコラボレーションの機会を 1 つのインテリジェントプラットフォームに集約することで、従業員に組織のビジネス戦略を反映したキャリアデベロップメントパスを提供しています。
グレゴリー氏は次のように述べています。「当社は、カスタマーエクスペリエンスへのアプローチを従業員エクスペリエンスにも適用して、近代的なスキルベースの組織を構築しています。デジタル好循環とは、当社が従業員に尽くし、従業員が顧客に尽くし、そして顧客がデルタ航空を選択して当社に投資し、その結果、株主が当社に投資し続けることで、フライホイール全体が回り続けることを意味します」
スーザン・ガラー (Susan Galer) は SAP のコミュニケーションディレクターです。@smgaler のフォローをお願いします。
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