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データドリブン経営により企業価値向上を目指す味の素グループ、SAPのデータ&アナリティクスソリューションで経営情報分析基盤を構築

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企業が刻々と変化する社会的環境に対応していくには、客観的なデータやファクトによって変化の兆候をいち早く捉え、柔軟かつ俊敏に対策を講じる必要があります。  食品業界の味の素グループも例外ではなく、消費者の多様化や食嗜好の変化への対応に迫られていますそこでアセアン地域の主要拠点の1つ「タイ味の素社では、同グループがマネジメント変革で掲げる「ローリングフォーキャスト」事業環境の変化や実情に応じてフレキシブルかつ短サイクルで業績を予測分析し、適宜施策を講じながらレジリエンスを高めていくマネジメントへの転換に向けSAP ERPからSAP S/4HANA®へのマイグレーションを実施。さらにSAP Analytics CloudとSAP® Datasphereとのシームレスなデータ連携により、データドリブン経営を加速している同社の事例を紹介します。

左から

タイ味の素社 IT部門長 Nongrat Linlawan氏
タイ味の素社IT担当役員 竹井義博氏
タイ味の素社 IT部門 アプリケーショングループ 課長 Threeradet Thinwongin氏
味の素アセアン地域統括社 ITシニアマネージャー 小椋 靖士氏

 

データ分析に基づく臨機応変なアクションへ 

36の国と地域で事業を展開海外売上比率を63%(2022年度実績)に伸ばしている味の素グループ。事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組み「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」を経営の基本方針としています。2030年のありたい姿を目指す中期ASV経営ではマネジメント変革を打ち出し「ローリングフォーキャスト」の導入を進めています。 「ローリングフォーキャストは、グループ全体で社会環境の変化や、消費者の変化や兆候などを的確にタイムリーに分析し、業績目標を達成するために打ち手を先んじて遂行していくことを目的に導入しています。これまでは過年度の業績を積み上げ式で単年度予算を作成し、四半期ごとに業績を分析し目標や見込みを見直してきました。安定的な事業環境の元ではこの伝統的な方法でよかったのですが、不確実性が高い現在は月次での業績管理、分析が必須であり、新しい経営情報分析基盤が必要でした」と味の素アセアン地域統括社でITシニアマネージャーを務める小椋靖士氏は語ります。 

グループの総売上の10%超を占めるタイ味の素社においても、コロナ禍やウクライナ危機などによる経営への影響は大きく、業績の透明性と予測可能性を高め、ビジネス環境の変化に応じて柔軟に意思決定を行うマネジメント変革が求められていました。そこで同社は、SAP ERP(ECC6.0)サポート終了を前に、システムの刷新を決断しました。 「SAP ERPを更新するだけでなく、将来のビジネス環境の変化やそれに付随し発生しうる業務要件なども見据えながら、拡張性の高いシステムを検討し導入しました」(小椋氏) 


「Fit to Standard」を徹底
してアドオンを約50%削減 

タイ味の素社は、新経営情報分析基盤に求める業務要件の適合性やコストの観点からSAP S/4HANAへの移行を決断。 さらに、推進パートナーのアビームコンサルティングを迎え、2022年4月に新プロジェクトをキックオフし、SAP社の技術的支援も得ながら、翌年4月1日に本稼動を迎えました。本プロジェクトでは、業務をシステムに合わせる「Fit to Standard」を方針に掲げました。タイ味の素社でIT部門の部門長を務めるNongrat Linlawan氏は「Fit to Standardに向けて、ユーザーのマインドを変えていくことに苦労しました」と語り、同部門アプリケーショングループで課長を務めるThreeradet Thinwongin氏も「10数年使ってきたSAP ERPのオペレーションを変えることにより、業務への影響がどの程度出るかをユーザーと入念に検討しながら進めました」と語ります。 Fit to Standardの徹底により、アドオンの本数は50%削減されています。 「プロジェクトは現地タイ人のスタッフを中心に進めました。タイ味の素社の経営層も積極的に関与しながら、Fit to Standardの徹底を図りました。アドオンに関しては、業務要件を厳正に審査し実装しています」(小椋氏) 

 

経営情報分析基盤にSAP DatasphereとSAP Analytics Cloudを採用 

タイ味の素社はローリングフォーキャストを中心とした新経営情報分析基盤の構築に当たり、アビームコンサルティングの提案を受け、予算・業績見込み管理にSAP Analytics Cloud for Planning、業績の分析としてBIツールのSAP Analytics Cloud for business intelligence、SAP S/4HANAやSAP外のシステムのデータ管理基盤としてSAP Datasphereをそれぞれ採用しました。 

「予算・業績見込み管理システムとして品目・ブランド軸や販売チャネル・顧客軸での管理や予測分析を実現するためにSAP Analytics Cloud for Planning、BIツールについてはSAPコアとの連携、操作性、分析機能の高さなどを加味してSAP Analytics Cloud for business intelligenceを採用しました。また、これまでSAP外とのデータ連携・統合用にデータウェアハウスをオンプレミス環境で利用していましたが、クラウドサービスのSAP Datasphereを採用し移行しました。これによりSAPデータとのリアルタイム連携を実現し、さらに今後はマーケティングデータやSNSデータなどのSAP外のデータも取り込み、外部と内部データを組み合わせた分析も可能になります」(小椋氏)

 

アビームコンサルティングとSAPの連携でDXの加速を支援 

今回のプロジェクトでパートナーを務めたアビームコンサルティングは、SAP S/4HANAへの移行とともに行ったSAP Analytics CloudやSAP Datasphereの導入を通じて、データ活用やグループ全体のDXの加速を支援しました
「新しいソリューションを導入することで、業務、システムをシンプル化し、Dataの鮮度、粒度を含めて効率性や柔軟性を高めることを目指しました」とABeam Consulting Thailand Data Management & Analytics BUの新開広二郎氏は振り返ります。 予算・業績見込み管理としてのSAP Analytics Cloud for Planning & Business Intelligence機能とあわせてSAP S/4 HANACOPA機能を導入したことで、業績管理のPDCAサイクルをSAPプラットフォーム内で実現できるようにデザインしたのも特徴ですABeam Consulting Thailand Financial Management and Control BU 大谷俊英氏は述べています Nongrat氏は「難しいプロジェクトでしたが、アビームコンサルティングのコンサルタントに、当社のビジネスをよく理解したうえで進めていただいたことでスケジュール通りにプロジェクトを完遂できました」と語り、Threeradet氏も「ユーザーに寄り添い、親身になって対応いただきました」と評価しています。 「SAP S/4HANA化のタイミングで既存BIソリューションの再考は重要であり、クラウドサービスとして機能拡張や機能改善を短期間でリリースするSAP Datasphereのメリットを理解したプロジェクトの推進が必要だと考えます(アビームコンサルティング 新開氏 

 

味の素アセアン地域統括社 ITシニアマネージャー 小椋 靖士氏(中央)
ABeam Consulting Thailand Financial Management and Control BU 大谷俊英氏(左)
ABeam Consulting Thailand Data Management & Analytics BU 新開 広二郎氏(右)

 

 経営層がKPIダッシュボードで業績・見込みを把握 

本稼働から4カ月が経過した現在(2023年7月時点)のプロジェクトの成果について、タイ味の素社IT担当役員の竹井義博氏は次のように総括しています。 「優先順位を付けてプロジェクトを推進した結果、2023年4月から日々のオペレーションと月次決算、月次見込み(ローリングフォーキャスト)の一連のプロセスを新システムで開始できたことが一番の成果です。一部、4月の段階では残課題はありましたが、6月末までには解決し、プロジェクトの目標を達成できました。また、SAPを含めクラウド化をさらに促進したことにより従来のSAPならびに関連するシステムの運用コストも削減できました。今後は、データドリブン経営、ローリングフォーキャストプロセスを着実に浸透させるために、システムを少しずつ理想形に近づけながら、新経営情報分析基盤を活かしたデータ活用や、経営判断に資するダッシュボードや分析データの提供などを段階的に進めていきます」 

現在、タイ味の素社の経営層や経営企画部門、各関係部門の責任者がSAP Analytics Cloudに実装したKPIダッシュボードを確認していますが、今後は全部門管理者層へも拡大するなどしてSAP Analytics Cloudのユーザーを増やしていく考えです。 SAP Analytics Cloudの定期トレーニングを企画しています。まずはユーザーがSAP Analytic Cloudを使い慣れること、業務に定着させることが最優先ですが、同時にSAP Analytics Cloudの機能を理解し、積極的に取り入れ、データドリブン経営をさらに深化し追求することで、ビジネスの成長につなげていきます」(小椋氏) 

アセアン地域に横展開し、同じ分析軸で地域の経営情報を管理 

今後は、タイ味の素社に導入したシステムと構成を参考に、アセアンの他拠点にも横展開していく計画があります。 「味の素アセアン地域統括社として、2023年度中にマレーシア、フィリピン、インドネシアでSAP S/4HANAへの移行を実施し、2024年度からはアセアン地域全体でSAP Analytics Cloudを活用した経営情報分析基盤を構築したいと思います」(小椋氏) 急激なスピードで進むビジネスに対応するため、マネジメント変革やデータドリブン経営を加速する味の素グループ。SAP S/4HANAをコアとした分析基盤はこれからも進化を続けていきます。

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