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SAP Spend Connect Forum 2023 レポート / キヤノンマーケティングジャパンが取り組む役務調達の業務改革とデジタル化

2023年7月、SAPジャパンは調達購買のイノベーションにスポットを当てたイベント「SAP Spend Connect Forum」を東京で開催しました。ここでは、キヤノンマーケティングジャパン 常務執行役員グループIT担当兼ビジネスプロセス刷新プロジェクト担当の笹部 幸博氏による事例講演のエッセンスを紹介します。

キヤノンマーケティングジャパングループでは、クラウド型の役務調達プラットフォーム「SAP Fieldglass」を採用し、役務調達における業務プロセスの標準化とシステム刷新を推進しています。

役務調達業務の標準化を目指しSAP Fieldglassを採用

ITソリューションのプロバイダー、キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループでは、2025年度までの中期経営計画の中で「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」という「ありたい姿(ビジョン)」を掲げています。それを支えるデジタル施策の1つとして、同社では「経営基盤の再構築」を進めており、その一環として、SAPのクラウド型役務調達プラットフォーム「SAP Fieldglass」の活用による役務調達業務の改革に取り組んでいます。キヤノンMJグループでは、システムインテグレーション(SI)などのビジネス現場の要求に適宜応じるかたちで、さまざまスキルを持った要員を「派遣契約」や「業務委託契約」を通じて確保(調達)しています。

SAP Fieldglassの導入以前、こうした役務調達の業務プロセスは、部門やグループ会社ごとに異なり、「業務の属人化」も進行していたとキヤノンMJの常務執行役員でグループIT担当兼ビジネスプロセス刷新プロジェクト担当の笹部 幸博氏は振り返ります。

そこで同社では、SAP Fieldglassをグループ共通のプラットフォームとして採用することで、役務調達の業務プロセスを標準化し「業務の属人化の抑制」や「業務プロセスの見える化」、さらには「役務調達業務のインソーシング化」などにつなげることを目指したといいます。

図1:キヤノンマーケティングジャパンにおけるSAP Fieldglass導入の狙い

「また、業務プロセスの標準化と併せて、役務調達システムのEOL(End of Life)対応や会計システムとの連携強化、システムの“脱スクラッチ化(Fit to Standard化)なども、SAP Fieldglass導入の狙いとしてありました」と笹部氏は明かします。


SAP Fieldglassを選んだ4つの理由

役務調達の業務を効率化するためのITソリューションは、SAP Fieldglass以外にも存在します。その中で、キヤノンMJがSAP Fieldglassを選択した理由は大きく4つあります。

1つ目の理由は、SAP Fieldglassが「サプライヤーとデジタルでつながるプラットフォーム」であることです。理由の2つ目は「派遣と業務委託という2種類の契約形態に対応していること」であり、3つ目が「レポート機能を標準で装備し、エンドユーザーが自らレポートを作成できること」。残る4つ目は「キヤノンMJグループが新たに導入するERP『SAP S/4HANA』との親和性が高いこと」です。

これらの理由からSAP Fieldglassの採用を決めたキヤノンMJは、役務調達の業務が最も多く発生する「SI・工事」領域への適用を優先して進めました。より具体的には、グループ会社でシステムインテグレーターのキヤノンITソリューションズとキヤノンMJへの展開をそれぞれ約6カ月間と5カ月間で完了させ、2022年1月から本格運用を始動させました。

さらに、SAP Fieldglass導入によって法改正への迅速な対応が可能になると期待したと笹部氏は付け加えます。


役務発注のリードタイムを平均6日間短縮 デジタル化で業務効率もアップ

SI・工事領域へのSAP Fieldglassの導入により、キヤノンMJグループではすでに(2023年7月時点で)相応の効果を手にしています。効果の1つは、SI・工事領域の役務調達業務において発注のリードタイムが6日間短縮されたことです。

「1カ月あたりの稼働日は20.5日です。その中で6日間の短縮ですから、かなりインパクトの大きな発注リードタイムの短縮が実現できたと見ています」(笹部氏)

また、SAP Fieldglassの導入により役務調達業務におけるペーパーレス化も実現され、紙にまつわる「押印」「証憑保管業務」も廃止にできたと笹部氏は明かします。加えて、レポート作成の業務も効率化されたといいます。

「当社では、SAP Fieldglassのカスタムレポート機能を使い、このプラットフォームに記録される発注実績や検収実績のデータを予算実績管理システムと連携させました。結果として、案件ごとの予実管理業務の効率化や実績見通し精度の向上につながっています」(笹部氏)


人材発注データのさらなる活用で役務調達業務の一層の高度化へ

SAP Fieldglass導入で上述したような効果を手にしているキヤノンMJですが、そこに至るまでにはいくつかの課題を乗り越える必要があったといいます。

課題の1つは、月末に集中する膨大な処理をいかに効率的にこなすかです。周知のとおり、役務調達の業務においては「個社別の36協定の順守」をはじめ「発注額の書面交付」「当月検収分の確実な支払い」「締め処理への反映」など守るべき事項が多くあり、それらの処理が月末月初、四半期ごとに集中するという特性があります。しかも、キヤノンMJグループ(のSI・工事領域)では定常的に、毎月1000人月超の工数に相当する業務委託契約や派遣契約を締結しており、業務委託契約の場合は「検収物の検査と承認」、派遣契約の場合は派遣社員の「勤務管理承認」から「(サプライヤーによる)請求の処理」「支払処理」までの一連の業務を月末に一挙に短時間且つ安定的にこなす必要がありました。

加えて、多くのサプライヤーにSAP Fieldglassの使い方を理解してもらい、使ってもらうようにする作業も簡単ではなく、運用開始後も専用のヘルプデスクを設置するなど、サポート体制を充実させる必要があったといいます。さらに、従来からのシステム、業務に慣れ親しんだ社員にSAP Fieldglass活用のベネフィットを理解・納得してもらうのにも相応の努力が必要だったと笹部氏は振り返ります。

こうした数々の課題がありながらも、キヤノンMJでは、それらをSAPの協力を得ながら乗り越え、SAP Fieldglassの運用、活用のレベルを当初期待した効果を手にできる水準へと押し上げることに成功しています。それを踏まえ、笹部氏は今後の展望について次のように述べ、話をまとめます。

「現段階(2023年7月時点)では、SAP Fieldglassの入札機能などを使い役務調達のあり方を変革するレベルには至っていません。今後はそうした変革を積極的に推進していきます。また、SAP Fieldglassの運用を通じて日々蓄積されていくサプライヤーデータ(得意スキル、グループ内の取引部門、参画案件など)とサプライヤーネットワークを有効に活用し、個々のサプライヤーと個々の部門という閉じた関係からグループ各部門と複数サプライヤーとのマッチングの機会の拡大や、スキルに応じた技術者の適正な評価をはじめ、データドリブンな課題解決や役務調達業務の一層の高度化を実現していく考えです」

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