2023年10月に開催された人材関連テクノロジーの世界最大イベント、「HR Technology Conference and Exposition 2023」では500社近い人事関連のベンダーの出展がありましたが、そのうち採用関連が178社と領域別では最も多く、激しい人材獲得競争が続く米国での採用領域の関心の高さが伺えました。
本稿では、世界および日本企業の採用領域でのAI活用意欲の高まりを確認し、そのニーズにSAPソリューションがどのように応えていくのか、お伝えします。
海外企業の採用活動におけるテクノロジー活用意欲
2022年にSAPの人事領域のリサーチチームであるSAP SuccessFactors Growth & Insights Teamが行った人事領域におけるAI活用に対する調査(*1)では、採用領域へのAI活用意欲が最も高いという結果となりました。また2023年に発表した世界の人事トレンドに関するレポート(*2)では、人事領域における企業の最新テクノロジーの活用意向は引き続き隆盛であり、採用領域においては、スキルをベースとした採用活動を最も注目すべきトレンドとして取り上げられました。
SAP Japan HR meta-trends in 2023(*2)より
トレンドとしてあげたスキルベースの採用は、これまでのジョブディスクリプションで定義された条件を元にした採用活動よりも候補者の選択肢が広がる一方、候補者の経験から保有するスキルを採用担当が見抜いていくことも求められる難しさもあります。そこで、自社が求めるスキルを保有している候補者を漏れなく見つけるために、ソーシングやマッチングにAIを活用していこうという動きが強まっているようです。
国内企業の採用領域におけるテクノロジー活用状況
では、日本企業における利用・活用状況はいかがでしょうか?
2023年にThinkings株式会社が採用担当者200名を対象に行った「採用とAI」に関するアンケート(*3)では、56.5%が採用活動にAIを活用したことがあるとの回答結果がありました。
全く別の調査になりますが、2018年の株式会社ヒューマネージの調査では、AIを採用活動に利用していると回答した企業は、準備中も含めわずか6.6%であったことから、ここ数年で日本でのAI導入がかなり進んできていると捉えることが出来ます。
Thinkings株式会社「採用とAI」に関するアンケート」*3を元に作成
テクノロジー活用に向けた課題
企業、候補者それぞれのテクノロジーに対しての理解が進みだしていることからも、その活用は今後さらに進んでいくと考えられそうですが、では、そのための課題は何でしょうか?
1つは、ニューヨーク市で施行されたAI規制(*5)の条例にあるように、AIの判断におけるバイアスをどう排除し続けていくか、という点は課題として挙げられます。
また、SAPが2022年に行った人事領域におけるAI活用に関する調査(*1)にあったように、採用活動へのAI活用は立場によって捉え方が異なるため、利用者への配慮を伴った柔軟な活用も課題となりそうです。
SAP SuccessFactorsが提供するAIソリューション
すでにAIを組み込んだ採用ソリューションは各社から提供されていますが、SAPは、ソフトウェアでAIを使用するための指針を定義した最初の企業の1つとして、また、AI倫理諮問委員会の一員として、一流の倫理専門家と協力して、AI倫理を大切にしてAIの提供を行っています。
ビジネスプロセスの領域にAIをあらかじめ組み込み、使うデータをビジネスデータに限定して提供するため、企業外のデータを学習して不正確な回答を示すことなく、俊敏な意思決定、価値あるインサイトの獲得、タスクの自動化を実現できる点に特徴があると考えています。
採用領域における具体的なソリューションとしては、2023年以降新たな機能の登場が予定されています。
1つは生成AIによるジョブディスクリプションの作成。職種名や職務概要から具体的なジョブディスクリプションが作成されるのはもちろんですが、自社や関連企業のビジネスデータを学習していくことにより、オリジナルのジョブディスクリプション生成ができることもSAPのAIならではの機能となると考えています。
また、AIへ生成を依頼するプロンプトに対してやAIが生成した回答に対しての不適切な表現やバイアスをチェックする機能も予定されており、AIのバイアスに対する課題へも対応してまいります。
SAP SuccessFactors Recruitingモジュールより
他にも候補者との有意義で適切な面接を行うための面接質問を生成する機能、また、今後は候補者の職務データやポジションに定義されたスキル等のデータを元に、AIが候補者と応募ポジションの適切なマッチングやスクリーニングを行っていく機能のリリースも予定されています。
SAP SuccessFactorsの採用管理機能では、皆様の採用プロセス全体を管理していけることはもちろんのこと、ご紹介したAI機能を部分的に活用する、全体に活用するなど目的に応じて細かく設定していくことも可能です。
候補者の理解が進むまでは限定的に利用し、タイミングを見てAIの活用範囲を広げていく。また、採用部門側の理解に応じて利用範囲を調整していく、といった柔軟な活用も可能となります。
皆様の採用活動をより適切な活動へと支援することに加え、採用が難しくなってきているいまの状況だからこそ、SAP SuccessFactorsの採用管理機能が、新たな、そして、適切な出会いをご支援いたします。
本情報が貴社の人事活動や人事施策の一助になれば幸いです。
参照
*1 SAP Japan 参照(本文へ)
*2 SAP Japan 参照(本文へ)
*3 Thinkings株式会社 参照(本文へ)
*4 株式会社ヒューマネージ 参照(本文へ)
*5 独立行政法人労働政策研究・研修機構 参照(本文へ)