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SAP TechEd Japan 基調講演:SAP クラウド ERP をはじめとするSAPアプリケーションで生成 AI をどう活用できるのか、何が実現できるのかを紐解く

Two office colleagues looking at a smartphone together while busy working at the office.

2023年12月6日開催「SAP TechEd Japan」(SAPジャパン主催) の基調講演では、SAP と 生成AI が可能にする新たな世界をはじめとする、SAPの最新テクノロジーのまとめを、弊社バイスプレジデント カスタマーアドバイザリ統括本部 統括本部長の織田新一と、Business Technology Platform事業部 事業部長の岩渕聖の両名で紹介しました。「生成AI」「クリーンコア戦略」「統合戦略のアップデート」という3つのテーマを主軸として、当日実施された基調講演の要点をまとめてます。生成AIテクノロジーの詳細については、こちらの記事よりご確認ください。


◎ 登壇者
SAPジャパン株式会社
バイスプレジデント カスタマーアドバイザリ統括本部 統括本部長
織田 新一

SAPジャパン株式会社
Business Technology Platform事業部 事業部長
岩渕  聖

YouTubeにて SAP TechEd Japan(2023/12/06開催)基調講演 特別公開中

 

AI時代のビジネス成長に向けて、生成AIを活用した新機能を発表

2023年5月に開催された「SAP Sapphire」イベントでは、「SAP Business AI」というAIソリューションの組み込みが発表されました。その後、10月には新しい生成AIアシスタント「Joule」が発表され、現在利用可能になっています。そして、11月にインドで開催された「SAP TechEd」では、時流を感じさせるようなSAPと生成AIを活用する戦略が明らかにされました。

SAP Business AIのアプローチには、「AIエコシステムとのパートナーシップと投資」が含まれています。世界的には多くの投資が行われ、効果的な機械学習やAIエンジンが存在しています。そのため、自社だけでなくさまざまなパートナーと協力してSAPのサービスを提供することが、今後の重要なポイントとなると考えています。

SAP Business AIで重要なのが、「AI foundation on SAP Business Technology Platform」です。これは、データサイエンティストやIT関係者、場合によってはユーザーが使用する基盤のことを指します。ここには、ドキュメント処理、レコメンデーション、機械翻訳などのが提供されます。

また、AI Services の下の層には、生成AIのツールセットやAIワークロード管理のトレーニングなど、AIエンジン開発のための基盤があります。さらにその下には、第2階層には「Business data and context」があり、ERPやアプリケーションからのデータをAIにインプットするための事前処理が行われます。ここでは、テキストや音声、画像、地理情報などの多種多様なデータを、高次元の点として保存および取得する機能をもつ、「ベクトルエンジン」という新しい技術が利用され、これを用いて汎用AIモデルに各お客様のデータを取り入れ、独自のモデルを作成することが可能です。

最下層は「Foundation Models」が位置し、アプリケーションに組み込んで運用するための各種ツールが用意されています。

SAPのようなエンタープライズアプリケーションにAIを埋め込むことは重要ですが、生成AIが誤ったデータや古いデータに基づいて分析結果を出すと、ビジネスの世界では通用しなくなります。そのため、SAPに格納されている最新データを使用し、モデルを洗練させて最適化することが必要です。これを実現するためにSAP Business AIでは、3つのR=Relevant(関連性)、Reliable(信頼性)、Responsible(責任)の原則に基づいて、お客様に対してインテリジェントシステムを提供するという方針で進めています。

織田は「まずは、SAPの主要なアプリケーションとテクノロジーソリューションに生成AIを組み込み、お客さまの業務に最も『関連性』の高いAIエクスペリエンスが得られるようにすること。次に、SAPが持つ様々な業種・業界の知見をベースとする学習を行い、ビジネスにすぐ利用できる『信頼性』の高い生成AIとすること。さらに、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンス、倫理の面で最高レベルの『責任』ある生成AIを提供すること。この3つの組み合わせによって、お客様のビジネスの成果を実現します」と解説しました。

2022年のSAP TechEdで発表された「SAP Build」はローコード・ノーコード開発のプラットフォームですが、この「SAP Build」を拡張するものとして、プロコード開発を支援する「SAP Build Code」の提供が発表されました。SAP Build Codeは生成AIを活用し開発生産性を向上させることができます。

2023年のSAP TechEdでは、SAP Build Code の中でSAPのAIアシスタントであるJouleを使用してユーザー登録画面を自動作成するデモンストレーションが披露されました。SAP Buildの特長について岩渕は、「データモデルのコード生成やAPI作成、アプリケーションロジックの組み込みにおいて、全ての要件を一括処理するのではなく、各コンポーネントを個別に管理・生成できる点が特長です。単にAIによる自動化だけでなく、アプリケーション全体を統合的に管理できる世界観が含まれているとご理解いただければと思います」と補足しました。

バージョンアップのメリットを享受できるクリーンコア戦略

急激なビジネス環境の変化に対応するには、自社で次々とアドオンを開発するよりも、継続的に改善されているSAP S/4HANA Cloudの標準機能を最大限活用することが重要です。標準パッケージ(コア)部分への直接的な修正は最小限に抑え、疎結合の方式で拡張やカスタマイズを行うことを、SAPでは「クリーンコア戦略」と定義し、推進しています。クリーンコア戦略により、業務の効率化やSAP ERPの最新アップデートによるメリットを享受することで、安定性の高いERP基盤を構築することができます。

SAPでは、これらを推進するために、拡張開発の仕組みやデータモデルプロセス、オペレーション、ツール、サービスを提供しています。

織田は「SAP S/4HANA Cloud をクリーンな状態に保ち、競争力を保つための拡張開発についてはAPIを介して行うコンセプトに基づいて、システムを構築いただきたいです」と話しました。

今回の基調講演では、株式会社日立ハイテクのクリーンコア戦略の成功事例も紹介されました。同社は20年前にSAP ERPを導入し、複雑化したシステムをSAP S/4HANA Cloudの導入に合わせてクリーンコア化を進めました。それまであったアドオンを9,000本から8に削減し、SAP Build Process Automationなどを用いてプロセスの自動化を実現しています。今後は、生成AIを活用したデータドリブン経営を目指しています。

岩渕は「クリーンコアを即座に100%実現することは難しいです。その考え方を前提に、システム設計、開発、デザインについてディスカッションできればと思います」とコメントしました。

SAP クラウドサービスを含む、多様なアプリケーションを統合して、エンドツーエンドの自動化を

続いてのテーマは「統合戦略のアップデート」です。SAPでは、SAP S/4HANA Cloudだけでなく、SAP SuccessFactors、SAP Fieldglass、SAP Concurなど複数のSAPクラウドサービスをはじめ、お客様がご利用のSAPアプリケーション以外の複数のクラウドサービスを統合する仕組みを提供する戦略のことです。ユーザー企業はこれらのクラウドソリューションを組み合わせることで、効率的なビジネスプロセスを実現しています。

お客様視点、従業員視点、社会視点など様々な視点からプロセスを統合し、エンドツーエンドプロセスを実現することが競争力やレジリエンスの向上につながります。しかし、複数のシステムを利用していると、異なるUIやデータモデル、セキュリティ課題など多くの困難も生じます。SAPでは、これらの課題を解決するため、複数のクラウドアプリケーションを統合するための基盤を提供し、機能を年々拡張しています。

統合戦略では単一のインボックス (SAP Task Center) が SAPのクラウドサービス以外のアプリケーションにも対応し、その活用性が向上。そして、共通のドメインモデルの領域として、90以上のマスターデータ項目を抽象化し、APIを介して容易に使用できるようにしました。さらに、システム間の連携やビジネスプロセスの実行後のワークフローに関するテンプレートを多数提供しています。

岩渕は「開発要件が生じた際に、ゼロから作るか既存のプレビルドコンテンツを活用するかという選択肢になります。新たな要件が出たときにすぐに作るのではなく、提供されているものを探して使用する視点が重要です」と述べました。

SAP TechEd(グローバル)では、Jouleを活用したタレントマッチングのデモンストレーションが披露されました。SAPの統合戦略を基に、社内外の人材についてトータルワークフォースマネジメントを通じてマッチングし、必要なプロジェクトスタッフを SAP S/4HANA Cloud で管理するシームレスなプロセスが紹介されました。SAP SuccessFactors、SAP Fieldglass、SAP S/4HANA Cloudなどの異なるアプリケーションのUIやマスターデータを、SAP Startを用いたユーザー体験で効果的に統一する方法が示されたのです。

パートナーやユーザーと共に新しい世界を探求していく

生成AIの登場はインパクトが大きく、今後どのように利用していくかが重要な議論になります。特に、エンドツーエンドのビジネスプロセスの連携が1つの重要なポイントとなると考えています。

SAPの方針について岩渕は、「AIの機能は効率化や高度化を実現するものですが、ERPや他のシステム、人が担う部分をどのように統合していくかに焦点を当てています。また、ITプロジェクトとして気軽に取り組め、多様なアプローチの考え方が重要です。これは新しいチャレンジとして、パートナーやお客様と共に新しい世界を探求し、共有していきたいと考えています」と語りました。

織田も「弊社はお客様やパートナー様に対して、具体的なAI活用のユースケースをしっかりお届けし、ビジネス成果を迅速に提供したいと考えています。また、クリーンコア戦略を強力に推進し、プロジェクト期間の短縮を目指します。究極的には、エンドツーエンドプロセスの構築による競争力の強化をサポートしたいと思っています」と述べ、セッションを締めくくりました。

さらに詳しいテクノロジー詳細を

SAP TechEd Japan」SAP Japan YouTube にて公開しております。。基調講演以外にも、最新テクノロジーのロードマップやパートナー様による最新テクノロジーの活用をテーマにしたセッション等29のセッションをお届けしています。ぜひご覧ください。

SAP TechEdのようなイベントによる情報提供だけでなく、パートナーやユーザー企業が参加するコミュニティ構築も行なっています。SAP関連トピックを共有しあうコミュニティイベント「SAP Inside Track Tokyo」は、2024年2月15日〜3月14日の間の毎週木曜に開催しますので、ぜひご参加ください。

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