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SAP Contract and Lease Management for SAP S/4HANA~リース会計基準におけるIFRSコンバージェンスへの備え~

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はじめに

本ブログでは、SAPが提供するリース管理ソリューションをご紹介させて頂きます。一旦は、2027年以降へ先送りとなった新リース会計基準の日本基準への適用ですが、既に企業会計基準委員会(ASBJ)より公開草案も提示されており、会計基準変更は遅かれ早かれ実施されることになりそうです。ついては、企業側の業務プロセスやシステム対応が急がれるところとなっています。

 

新リース会計基準に関して2023年5月に提示された公開草案には、以下の記載があります。

 

“本会計基準では、借手のリースの費用配分の方法について、次のことを考慮し、IFRS 第 16 号と同様に、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを金融の提供と捉え使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルによることとした。”

 

平たく言えば従来のオペレーティングリースについてもファイナンスリースとして処理することが必要になるということです。

現状では不動産の賃貸借契約や社用車のリース契約(借手側)は、オペレーティングリースとして処理しているケースが多いのではないかと推察しますが、これらのリース取引を原則ファイナンスリース取引として会計処理することになります。ファイナンスリースは、使用権資産やリース負債の計上、割引現在価値計算、利息相当額計上に減価償却計算など、オペレーティングリースの会計処理と比較するとかなり面倒で複雑な処理が必要になります。また、IFRS第16号と公開草案の間でも会計基準差があり、IFRS適用会社(グループ会社含め)では、複数会計基準での会計処理を考慮する必要があります。

 

SAPではSAP S/4HANAの1機能(Cloud/On Premiseいずれにも対応)として、SAP Contract and Lease Management for SAP S/4HANA (以降SAP CLMと表記)を提供しており、リース取引における契約管理やリース料の支払い、複数会計基準に対応する仕訳処理といった会計プロセスの自動化・効率化を図ることができるようになっています。SAP CLMは、今後の新リース会計基準変更やIFRS第16号対応に向けて強力なソリューションになります。

 

 

SAP Contract and Lease Management for SAP S/4HANAの特徴

1.幅広いリース取引に対応

SAP CLMは、IFRS第16号の会計処理要件に対応できるよう汎用性高く開発されており、日本においても大手の事業会社様にて利用されている実績のあるソリューションです。

動産、不動産問わず主に借手側のソリューションとなります。不動産リースにつきましては、貸手側の処理にも対応可能(下図)です。また、リース契約におけるフリーレント(一定期間無償リース)や中途解約や条件変更などリース契約管理で発生するイレギュラーな業務にも対応可能となっています。

2.SAP S/4HANAのコアモジュールとして統合

SAP CLMは、SAP S/4HANAの1機能として、総勘定元帳、債権債務管理、固定資産管理などのコアモジュールと統合されています。リース契約情報の管理から、使用権資産およびリース負債の計上、割引現在価値計算、償却費計算、リース料支払など、リース取引に関連する一連の会計処理を首尾一貫して行い、関連モジュールに不整合なくその結果が自動反映される仕組みとなっています。

SAP Contract and Lease Management for SAP S/4HANAのリース借手処理プロセス

下記は、SAP CLMにおけるリース契約締結から各種会計処理を行う借手側処理のプロセスです。

各プロセスの主な処理内容は下記の通りです。

①リース契約締結(日次処理)

リース契約の締結時、SAP CLMに契約内容の登録を行います。その際、契約開始・終了日付、契約した取引先、リース物件、フリーレントやリース料、利率等の契約条件、IFRSやJGAAPといった評価対象となる会計基準等を指定します。中途解約や条件変更など契約内容の変更も可能となっています。登録・変更前にシミュレーションを行い、月々の減価償却額、支払額、利息額などを確認することが可能です。また、契約登録は、マニュアル登録の他、APIを利用した外部データ連携も可能になっています。

 

②使用権資産及びリース負債の計上(日次処理)

リース契約内容の登録後、使用権資産およびリース負債の仕訳計上を行います。もちろん、リース料と利率から現在価値に割引いた金額を自動計上します。処理対象となる契約を個別や範囲指定して実行することも可能です。

 

③リース料支払(定期処理)

次に毎月や四半期毎など契約に基づいてリース料の支払処理を行います。支払データは、債務管理モジュールに自動連携され支払処理が行われます。支払は前払、後払を指定可能となっています。

 

 

④リース資産の償却、リース負債の取崩し、支払利息の計上(定期処理)

ファイナンスリースに関連する仕訳処理を行うプロセスです。これらの仕訳処理については、複数会計基準での評価を行う場合でも、それぞれの会計基準に応じた会計処理を同時に実行することが可能です。例えば、下図の例のようにIFRS(ファイナンスリース)とJGAAP(オペレーティングリース)それぞれの会計基準に基づいて会計仕訳を自動転記することができます。IFRS基準では使用権資産の償却を行いつつ、JGAAPでは費用計上のみが行われるような会計処理が可能となっています。

⑤リース契約満了(随時処理)

リース期間が満了した際に行うプロセスです。このプロセスの実行後は、契約内容の変更などはできないようにステータスがロックされます。また、再リース契約を行う際には、①のプロセスにて契約の継続処理が行えるようになっています。

 

⑥レポーティング(随時処理)

リース資産の評価計算結果は個別のリース契約毎もしくは、複数のリース契約をまとめて確認することができます。下記のレポートは、借手リース取引の例ですが、月々の使用権資産の価額、減価償却額、リース会社に対して支払う金額を照会可能です。各期間の減価償却額や消込金額をクリックすると、それぞれの処理を行った際に計上された伝票を参照可能となっており、既に実行された関連の会計仕訳を参照することができます。(仕訳転記が未実行の期間は予定情報として表示)

 

まとめ

SAP CLMを利用することで、IFRS第16号や日本を含む各国の会計要件に則り、複数会計基準での処理を行うことができます。また、SAP S/4HANAのコアモジュールとの統合により、リース料の支払や必要な会計仕訳を自動的に連携し、業務的、システム的に不整合なく処理することが可能になっています。このようにSAP CLMは、リースに関連する業務プロセスの効率化を図れる強力なソリューションであることをご理解頂けたかと思います。

さらに 詳しく知りたい方は

ここまでSAP CLMについて基本的な内容をお伝えさせて頂きましたが、より詳細を確認したい方は、2024年5月から7月にかけ3回に分けてセミナー(概要編、詳細編その1、詳細編その2)を実施しますので、是非ご参加頂ければ幸いです。セミナーの詳細につきましては、こちらのウェブサイトをご参照ください。

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