SAP Japan プレスルーム

2024年版 世界の人事トレンド

SAP SuccessFactorsは、組織心理学者や HR テクノロジーのエキスパートから構成される Growth and Insights チームを擁しています。このチームは定期的に世界の人事のトレンドを分析し、「メタトレンド」レポートを発表しています。本稿ではその中から2024年におけるグローバルの人事トレンドをご紹介させていただきます。
本レポート全編はこちらから確認いただけます。


はじめに – 従業員エクスペリエンスが人事のトレンドと戦略を浸透させ続けている

2023 年の人事トレンド分析では、従業員エクスペリエンス (EX) を一時的なトレンドというよりも普遍的な人事戦略のテーマとして捉えることが重要であることを明らかにしました。従業員エクスペリエンスは2024年も引き続き重要なテーマとなります。今年のトレンドでは、2024年に直面する予測不能な環境を乗り越えていくためにも、EXを真に優先し、信頼とオープンな対話を特徴とする、従業員とのより強固な関係の構築に取り組む必要があると予想しています。

24 年のグローバル人事メタトレンド 9 項目

SAP SuccessFactorsのGrowth and Insightsチームがまとめた今年のメタトレンドは、以下の9つです。

1 AIが変える仕事の世界
2 スキル管理の重要性
3 ハイブリッドワークへの振り戻し
4 ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン & ビロンギング(DEI&B) の勢い
5 メンタルヘルスの重要性
6 リーダーシップへの信頼低下
7 人事部門自身の変革
8 競争力のある給与体系の構築
9 サステナビリティ戦略

メタトレンドの詳細は本レポートをご確認いただければと思いますが、ここではその一部をご紹介させていただきます。

1 AIが変える仕事の世界

2020年からAIは注目を集めてきましたが、2024年においてAIが第一のトレンドとなります。AIは従業員に取って代わるものではなく支援するツールとして捉え、労働市場や生産性を変革していくためのツールとしてどう活用していくかが求められます。特にセルフサービス型AIツールにより従業員の生産性向上が期待されます。一方で、AIの利用にはガードレールやガイダンスにより従業員の使用を生産的に導くことも必要です。また、データのプライバシーや倫理、規制コンプライアンスに関する懸念もあるため、AIの活用にあたってはデータセキュリティに厳格で、透明性、説明可能性、公平性の原則でツール活用を提案するテクノロジーベンダーと進めることも重要となります。

2 スキル管理の重要性

トレンドの2つ目は、従業員のスキル管理についてです。2023年のトレンドではスキルベースの採用が第一のトレンドとしてあがりましたが、2024年は要員計画や配置、人材育成、従業員のキャリア開発と人事業務全体にスキルが影響してくると予想されます。スキルに関してはAIに関連する技術スキルよりも、戦略的思考や複雑な問題解決、創造性といったヒューマンスキルが重要となると見られ、多くの組織では特定の役割に高度に専門化・固定されたスキルを持つ従業員ではなく、俊敏かつ適応性を持った従業員を求めているようです。スキル獲得においては、組織におけるスキルギャップを把握し戦略的なスキル獲得計画を立て実行をしていくとともに、従業員自身の探索と自律性に基づいたキャリア開発への余白を残していくことも必要です。

3 ハイブリッドワークへの振り戻し

3つ目のトレンドは、リモートワークとオフィスを掛け合わせた柔軟な働き方への振り戻しに焦点が当てられています。RTO(Partial and Full Return-to-Office)ポリシーの増加に伴い、各社はオフィスでの働き方を魅力的にするための様々な方法を考えており、「通勤するに値する価値ある経験」の提供や、オフィスでのメンタリングやネットワーキング活動の提供など、従業員が職場に戻るための動機付け方法を模索しています。また働き方を再設計するにあたっては、組織とは何か、従業員は何を望んでいるのか、どのように組織を維持するのかといった組織文化の自体を再考する必要もあります。

4 DEI&B の勢い

4つ目のトレンドとしてはDEI&Bについてです。組織のアジェンダとして重視されるDEI&Bですが、一方でそのためのリソースは限られ、エグゼクティブレベルの支援が不足していることからDEI&Bの取り組みの優先度を下げる傾向も出ています。しかし、労働力の高齢化や移民の制限による世界的な人材不足により、企業は採用においてその偏りを改めなければならず、多様な労働力の採用が進むと見られます。また、2024年はZ世代が台頭し労働力として団塊世代を上回ると予想され、ジェネレーションXやミレニアル世代と共に指導的役割を担いつつあります。このような世代間の多様性の増加は、従業員やビジネス成功に効果的なDEI&Bマネジメントとして必要となります。

5 メンタルヘルスの重要性

ウェルビーイングについてはここ数年包括的なアプローチの重要性が強調されてきましたが、2024年は従業員のメンタルヘルスに焦点を当て、具体的で総合的な支援策や柔軟な勤務形態を提供する必要性が高まっています。また、組織は従業員の経済的なウェルビーイング(報酬)をも重視し、「量より質」の個別化されたアプローチを取るべきです。そして、マネージャーの役割も強調されます。マネージャーは自身のスキルを向上させ、ウェルビーイングリスクを見極め、共感的に行動し、リーダーシップを発揮する必要があります。

6 リーダーシップへの信頼低下

6つ目のトレンドとして、従業員とリーダーの間での信頼とコミュニケーション関係の構築に対する重要性があげられます。特にリーダーの効果的なコミュニケーションの必要性は、レイオフやAIとの統合といった大規模な変化に直面する組織において必要であり、2024年はそのコミュニケーション能力が試されます。従業員が不満を共有できる環境がない場合、ソーシャルメディアや労働組合結成などの活動が増加する可能性があり、リーダーは信頼を失う可能性があります。また人材不足の中長期的な従業員維持が組織にとって重要であり、優秀な人材が尊重される環境を整えることが求められます。

7 人事部門自身の変革

トレンドの7つ目は、人事部門自身の変革です。2023年から活用機会が飛躍的に増えたAIを人事業務の質と効率の向上に活用するために、人事自身がAIスキルを身に付ける、など人事部門のスキル変革が起きるでしょう。加えて、トレンドは人事部門の役割にも変革が起きるとし、例として広報的役割への変革を挙げています。これは職場復帰やレイオフなどの情報がソーシャルメディアで拡散され、公共の場での対応が求められるためです。また、人事リーダーにおいては、戦略的ビジネスパートナーとしての役割を果たし、データ主導型の意思決定を強化することを求められています。さらに、組織の俊敏性を支援するために、人事部門は回復力と適応性の文化を育成し、要員計画に柔軟に備える必要があります。一方で、多様な変化への対応を求められる人事自身の燃え尽きへのケアも必要となります。

8 競争力のある給与体系の構築

4年前から行ってきた人事トレンド分析において、今年は初めて報酬に焦点が当たりました。経済の不確実性や組織再編、生活費やインフレ率の上昇などが要因として挙げられ、従業員と雇用者の両方にとって報酬が最優先事項となってきています。オフィスへの復帰も進む中、通勤や勤務形態の変更に伴うワークライフバランス等の個人的なコストに対応する報酬と福利厚生が求められています。ただし、専門家は、過去数年の賃金の伸びは持続不可能と見ており、2024年は報酬総額の低下が予測されています。

9 サステナビリティ戦略

最後のトレンドはサステナビリティについてであり、企業の持続可能性への取り組みが強化され、報告要件と透明性が高まっています。環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する指令や基準が導入され、気候変動情報の開示が求められます。サステナビリティはコンプライアンスを超えて、雇用者ブランドと戦略の一部として扱われるようになり、人事部門は環境配慮の人事ポリシーを取り入れ、サステナビリティスキルを持つ人材を採用し、また再教育を推進していくと考えられます。

以上、2024年のメタトレンドについて概要をお伝えさせていただきました。なお、本レポートの詳細はこちらから確認いただけます。ぜひご一読いただければと存じます。
また、2024年のメタトレンドについて日本の企業様に向けた動画も今後公開を予定しております。よろしければ合わせてご確認いただけますと幸いです。

本情報が貴社の人事活動や人事施策の一助になれば幸いです。

モバイルバージョンを終了