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パナソニック コネクトの事業拡大を支える「人材マネジメント改革」とは

パナソニック コネクト CHRO 新家氏

HR Connect Tokyo レポート

パナソニックグループの企業体制再編に伴い、事業会社となったパナソニック コネクト株式会社(パナソニック コネクト)。同社ではパーパスや 5 つのコアバリューを道しるべに、人材マネジメント改革や風土改革を積極的に進めています。2024 年 7 月 31 日に開催された「HR Connect」の事例講演、「パナソニック コネクトの人事改革」で語られた、事業を動かす “ 人材 ” に関する目標や施策についてお届けします。

〇 登壇者

パナソニック コネクト株式会社
執行役員 ヴァイス・プレジデント
CHRO (兼)人事総務本部 マネージングダイレクター、最高健康責任者
新家 伸浩 氏


事業会社制に伴いパーパスやコアバリューを制定、
事業ドメインを刷新

パナソニック コネクトは 2017 年から社内分社として活動し、2022 年 4 月からは事業会社として事業を展開しています。独立した際には、パナソニック時代の思想を受け継ぎつつも、パナソニック コネクトに適したパーパスや 5 つのコアバリューを制定し、新たなスタートを切りました。(図 1 参照)

事業体制の見直しも進め、現在は 4 事業部・2 法人からなる 6 事業部門体制で事業を展開しています。

(図 1)

3 階層での企業改革を推進

パナソニック コネクトでは、2017 年から企業改革を推し進めています。「風土改革」、「ビジネス改革」、「事業立地改革」の 3 階層に整理してそれぞれの施策を実施していきました。(図 2 参照)

(図2)

カルチャー&マインド改革

まず着手したのが「カルチャー & マインド改革」と称した風土改革です。東京への本社移転やフリーアドレス化などの「働き方改革」、DEI 研修やジェンダーギャップの解消などの「DEI」、ハラスメント防止などの「コンプライアンス」のカテゴリごとに、さまざまな施策に取り組みました。

「当社には日本企業らしいともいえる上意下達の文化が根強く残り、社員がなかなか自律できない、思うように改革が進められないという課題がありました。こうした課題の解決を阻んでいるのは組織風土やマインドではないかと考え、カルチャー & マインド改革を押し進めたのです」(新家氏)

なお、カルチャーやマインドには、変化を止めるとまた元に戻ってしまうという特徴があります。そこで、毎年何らかの施策を実行しながら「変化し続けること」を意識していました。

ビジネス改革と事業立地改革

ビジネス改革としては、現在有している人材の事業推進力の強化や、今後注力したいサプライチェーン領域への人材のシフト・投資を進めています。具体的には、SCM 業界に関する研修や、海外支社での研修を含めた、最長 1 年にわたるトレーニングの実施などです。

そして事業立地改革では、2017 年度から継続して事業の選択と集中を実行しており、現在の事業構成になっています。

人材マネジメント改革の目的は「企業価値向上」と「CONNECTer’s Success」

この 3 階層からなる改革を加速していくためには、人材マネジメントも適した形へと変えていく必要があります。変化の激しい “ VUCA ” の時代であること、キャリア意識の多様化、そしてメンバーシップ型人材マネジメントの限界といった外的要因も踏まえ、人材マネジメント改革を押し進めていきました。

人材マネジメント改革の目的

改革にあたり、まずは「なぜ人材マネジメントを改革するのか」という目的を明確にしました。検討の結果、企業価値の持続的向上と、社員である “ CONNECTer ” の成功、すなわち “ CONNECTer’s Success ” の 2 つが重要であると認識するに至りました。(図 3 参照)

「社員の成功のためにリソースを集中していき、その影響で企業価値が向上する。そこで生まれた利益を人材に還元するという好循環を作っていくことに取り組んでいます」(新家氏)

(図 3)

新人材マネジメントによるエコシステムの構築

こうした戦略のもと、2022 年 4 月から人材マネジメントを大きく変更しました。この新人材マネジメントでは、これまで人事部門が持っていた人事権を現場の組織責任者に移譲し、現場レベルでマネジメントが実施できるよう変更しています。

その背景には、人事部門が採用から人材育成までのさまざまな業務をすべて担うのが難しくなってきたこと、人事部門が採用した人材が現場に必ずしもフィットしないこと、人事部門が評価に介在する違和感などがあります。これらを解決・解消したいと考えたこともひとつの要因です。

現在は、ジョブディスクリプション(以下、JD)の導入による「ポジション定義」、対話を重視する制度に基づく「評価」や、JD を基本とした等級・体系に基づく「報酬」、そして人材の「育成」といったサイクルを現場レベルで回し、ラーニングカルチャーの醸成やはたらきやすい環境作り、キャリアオーナーシップの浸透などに関する施策も、現場レベルで実行するようにしています。(図 4 参照)

(図 4)

新人材マネジメントでの多様な取り組み

では、新人材マネジメントではどのような取り組みを行っているのかについて説明します。

対話重視の評価制度

新人材マネジメントでは、従来の評価記号と一律支給テーブル方式を廃止し、上司が部下の報酬を決定する形に変更しました。これにより「上司が A 評価をつけたけれど、全体で調整したら B 評価になった」などの事象が発生しなくなり、上司自身が部下に「なぜこの評価をつけたのか」を説明できるようになりました。

期初に JD を参考に一人ひとりの目標を設定し、期中には 1 on 1 を続けて目標と現状の取り組みをすり合わせ、期末にその成果を報酬に読み替えて評価していきます。(図 5 参照)

(図 5)

「当社ではこの取り組みに、SAP SuccessFactors にあるコンペンセーションのモジュールを使い、上司一人ひとりが部下の報酬を決められるようにしています。昨年から使用を始めたばかりでまだ 1 回しか実施していませんが、今後も継続して活用するつもりです。SAP の担当者には機能面に関するサポートを受けており、時にはこちらから機能改善の提案をお伝えすることもあります」(新家氏)

仕事に応じた報酬水準の策定

報酬水準についても改め、全職種共通だった報酬カテゴリを変更しました。現在は、市場における職種ごとの報酬の違いを反映し、大きく 3 つの報酬カテゴリに区分しています。

社員それぞれがスキルやパフォーマンスの向上などを行った結果を反映し、報酬カテゴリのなかで昇給していく形へと変えました。(図 6 参照)

(図 6)

ラーニングカルチャー、キャリアオーナーシップの醸成

もっとも注力しているのが、ラーニングカルチャーやキャリアオーナーシップの醸成に関する取り組みです。社員一人ひとりが自主的に学べる環境を用意し、文化として定着するまで施策を連打しようと考えています。具体的には、e-ラーニング教材の自由利用や各種研修の実施、人事部門によるイベント開催などを行っています。

「特に力を入れているのが、キャリアと学びの月間『CONNECTer’s Success Month』です。キャリアと学びの気づきの場として年 2 回開催しています。著名人を講師に招いたセミナープログラムだけでなく、スキルアップに励んでいる社員同士の座談会、越境学習のプログラムに参加した社員の座談会など、社員を巻き込んでのプログラム作りにも取り組んでいます」(新家氏)(図 7 参照)

(図 7)

新人材マネジメントを定着させ、よりグローバルな企業へ

新人材マネジメントを導入した1 年間の結果について、浸透状況に関するアンケート調査を実施しました。すると、制度に対するマネージャーの理解度は 96 %、マネージャーの実践度は 86 %と、当初の目標を大きく超える結果となりました。(図 8 参照)

しかし初年度は、人事部門から配布したガイドブックを見ながら、何とか実行してきた印象を受けています。そのため、次年度からはマネージャーが制度について真に理解し、自分の言葉で部下に働きかけられるようにするなど、自律的な行動を後押ししていく方針です。

(図 8)

■ SAP の企業学習管理システム(LMS)導入による学びのカルチャーの定着

学びのカルチャーの醸成に関して、社員が研修や学習に費やした総時間を SAP SuccessFactors Learning によって可視化しています。これは経営会議で総学習時間を報告し、継続的な学びを促すのが狙いです。すでに職場によっては、特定の曜日にメンバー全員で学ぶ時間を作るなど、独自の取り組みを行っています。(図 9 参照)

(図 9)

キャリアオーナーシップの促進

キャリアオーナーシップの促進については、キャリア相談が可能な「キャリアステーション」の開設や、社内公募の実施を推進しています。

また、通常の社内異動に関しても本人の同意の上で異動する形にするなど、こうした取り組みによって、会社が社員のキャリアオーナーシップを尊重しながら、社員と対等な関係性を築いていくような仕組みづくりを目指しています。

「今後も新人材マネジメントを進めつつ、カルチャー & マインド改革 や業務プロセス改革なども継続して、よりグローバルかつデータドリブンな取り組みを実施していきたいと考えています。そのなかで SAP のシステムをより一層活用していきたいです。そしてゆくゆくはグローバルから人材が集うような強い会社となるよう、改革を押し進めていきたいと思います」(新家氏)

 

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