2024年7月に催されたSAPのプライベートイベント「SAP Spend Connect Innovation Day 2024」では、SAPが提供する支出管理ソリューションの事例セッションがさまざまに展開されました。ここではその中から日鉄ソリューションズ様の取り組みついて紹介します。
日鉄ソリューションズ:「SAP Fieldglass」で役務購買のイノベーションを推進
大手のITソリューションプロバイダーである日鉄ソリューションズでは、派遣や準委任、請負の発注・支出管理を実現するSAPの「SAP Fieldglass」を採用。AI時代に求められる外部人材との連携の深化に向けて役務購買の革新に着手しています。
今回の「SAP Spend Connect Innovation Day」では、そのイノベーションを推進する日鉄ソリューションズ 管理本部 業務部長兼パートナー企画管理室長の大野 陽一氏が演壇に立ち、SAP Fieldglassを役務購買の革新にどう役立てていくかの展望を語りました。
日鉄ソリューションズ株式会社
管理本部 業務部長兼
パートナー企画管理室長
大野 陽一氏
大野氏が部長を務める業務部は、日鉄ソリューションズにおける財務・人事を除く基幹系業務のプロセスオーナーの機能を持ち、役務調達に関しては新規取引先の選定、基本契約締結、経営層レベルでの関係構築といった「パートナーリレーション」と、発注・支払などの「月次業務」の全社統括機能を担っています。その役務調達の業務を進める中で「いくつかの課題を抱えていました」と大野氏は説明します。同氏の言う課題とは以下のような事柄です。
- 紙をPDF化しただけの古いスクラッチシステムを活用しているために人手に頼った業務が多く、事業の拡大・パートナー数の拡大に比例して事務スタッフが増大している。
- 月次処理と古いシステムの改善・保守に人手がとられ、パートナーとのリレーション強化や外部人材マネジメントの高度化などの戦略的な活動に力が割けない。
こうした課題を一挙に解決する術(すべ)として、同社が採用したのが「SAP Fieldglass」です。本製品を選んだ主な理由は、バイヤーとサプライヤー双方のデジタル化を可能とするプラットフォームであることと、外部人材マネジメントの高度化が可能になることです。
「当社では、これまで培ってきた強みを生かした新しいビジネスモデルへの転換(2030ビジョン)を進めており、その一環として新技術を積極的に取り入れた次世代SIモデルの実現を推進しています(図1)。次世代SIモデルを目指すうえではこれまでとは異なるスキルを持ったパートナー会社、外部人材と連携をしていかなければなりません。それには外部人材マネジメントの高度化が不可欠と考え、その考えがSAP Fieldglassの選定へとつながりました」と大野氏は説明し、こう続けます。
「外部人材マネジメントを強化するうえでは、どのような人材が、どういった契約で、いつまで仕事をしているかの情報を全社レベルで把握できることが大切です。そのうえでパートナー会社の得意分野、人材の供給にかかるリードタイムといった情報を一元管理できるようでなければなりません。SAP Fieldglassならば、それが可能になると判断しました」
図1:日鉄ソリューションズが推進するビジネスモデルの転換
資料:日鉄ソリューションズ
Fit to Standardで導入効果を最大化へ
SAP Fieldglassを活用するに当たり、日鉄ソリューションズでは、社内の役務調達業務に合わせてシステムをカスタマイズするのではなく、SAP Fieldglassが用意するIT業界向け標準テンプレートに役務調達の業務を合わせる「Fit to Standard」の方式を採用しました。そうすることが、業界のベストプラティスを取り込むうえでも、セキュリティやコンプライアンスを確保するうえでも良策との判断があったからです。こうして同社ではSAP Fieldglassの導入プロジェクトを始動させ、2025年7月の本番運用開始を目指しています。
SAP Fieldglassの本番運用後には、先に触れた外部人材マネジメントの高度化のほか「「以下のような効果が同社にもたらされる見込みです(図2)も併せて参照)。
- 業務ピークの平準化、発注スピードUP:受注決裁前に役務調達業務の準備を並行して進めることができるようになり、月末に集中していた役務購買業務の平準化が可能になる。
- 発注件数圧縮:1つの発注に複数のプロジェクトコードを紐づけられるようになり、結果として発注件数を年間で約1万件程度減らすことが可能になる。
- 請求書レス:SAP FieldglassのEDI機能を用いて請求書レスで支払いを行い、パートナーから受け取っていた請求書(年間約6万件)を廃止することが可能になる。
- 契約状況(更新要否)の見える化:SAP Fieldglassの見積フォームを使うことで、パートナーに対する一括見積依頼、一括更新が可能になり、繰り返し発注(年間約2万件)時の手間も大幅に低減できる。
- SE派遣管理の負荷軽減:派遣SEの勤怠・就業報告をSAP Fieldglassに入力してもらうことで、派遣SEと管理者双方の業務負担の軽減が可能になる。
図2:日鉄ソリューションズがSAP Fieldglassに期待する導入効果
資料:日鉄ソリューションズ
「SAP Fieldglassは、サプライヤー選定から見積、発注、実績報告、請求、評価・継続に至るプロセスにおいて発生する当社の役務調達業務を網羅的にカバーできます。その活用によって大きなメリットが手にできると確信しています」
と、大野氏はSAP Fieldglassへの期待を述べ、話を終えました。
(/了)
関連記事:
AIで支出管理ソリューションはこう進化する~「SAP Spend Connect Innovation Day 2024」報告
オムロン:SAPの支出管理ソリューションで業務と組織の変革に挑むストーリー ~ SAP Spend Connect Innovation Day 2024報告