SAPジャパン Talent Discoveryチームによる本企画では、SAPでの仕事内容や印象深いエピソードなどを幅広くお届けします。活躍する社内メンバーの話から、SAPで働く魅力をお伝えできればと考えています。
第31回のインタビュイーは、SAP Japan Spend Management事業本部ソリューション部、ディレクターの川崎雅弘さん。ERPだけにとどまらないSAP製品の価値や、仕事の魅力についてお伺います。
川崎さんがヘッドを務める”Spend Management“チームの考え方、またそのミッションを教えてください。
ERPを超えるネットワークを広め強固なビジネス基盤を提供したい
「SAPはERPを基盤としたビジネスを展開してきましたが、ERPだけではカバーできない業務領域があります。例えば、間接材の購入や、従業員の経費精算。或いは、外部人材の調達に関連するコストの管理です。これらの資材購買やサプライヤーのマネジメントを司るシステムを世の中へ広く提供することが、私たちSpend Managementチームのミッションです。
具体的には、購買管理についてはSAP Ariba、経費精算はSAP Concur。外部人材の調達関連はSAP Fieldglassといったプロダクト群があります。これらは、中核であるERPというデジタルコアを補完するため、買収によってSAPのプロダクト群の仲間入りを果たしてきました。
SAPが提供するこの間接材購買システムの最大の特徴は、バイヤーだけではなくサプライヤー側の機能も提供し、Peer to Peerではなく、N対Nでバイヤーとサプライヤーが複雑に連携できる点です。これをSAP Business Networkと呼び、対外コミュニケーションを司るビジネスプラットフォームの位置付けとしてマーケットに提供しています。
また、従来のBusiness Networkをさらに拡張し、現在はERPで取り扱われる直接材取引のサプライヤーとのコラボレーションまでを包含しています。
このBusiness Networkと調達購買機能を総合して、Intelligent Spend and Business Network(以下、ISBN)と総称し、企業におけるすべての支出をマネジメントしていくことをIntelligent Spend Managementと呼んでいます。
内部の取引オペレーションシステムに留まらず、外部環境との接点を強化しネットワークの幅を広げていくことがSAPの戦略であり、SAPはまさにそれを提供することができる唯一の企業なのです。」
Spend Management事業本部ソリューション部 ディレクター 川崎 雅弘さん
属人的なスキルを会社の武器に変える ― 調達管理のデジタル化
「調達管理では、『出銭をできるだけ抑るべき』という業務命題があります。しかし、この根本的な命題を満たすためには、まず『いま何を買っているのか?』を可視化することが必要です。
マーベリック・スペンド(調達ルールを無視した支出)が無いかをきちんと把握した上で、すでに契約済のサプライヤーとの取引にできる限り収れんしていく。また、事前約定に基づくカタログ化を推進し、購買・監査プロセスの標準化、さらに記録されるデータの標準化を目指すべきです。個々のサプライヤーとのネゴシエーションも、それまでの取引情報が蓄積され、精査されたデータに基づいて行われることが理想です。
多くの企業において、購買担当者によるサプライヤーとの交渉というのは、ノウハウの塊です。どのような情報を得て、どう質問をすべきかなど、長年の経験を持つ調達担当者の頭の中にスキルが蓄積されています。
システムが目指す究極の目標とは、その属人的なノウハウをできるだけ形式値化し、誰もが同じ考え方に基づいて交渉や調達行為が行われることです」
新時代を支える調達システムが社会課題の克服に寄与する
「実は、ネゴシエーションツール自体も、SAP Aribaに搭載されています。デジタルで交渉ができたり、適切なサプライヤーを検索して情報収集したりすることが可能です。今後はAI機能を搭載し、サプライヤーのレコメンデーションを促す機能やサプライヤーとの取引リスクを自動的に検知する機能も展開される予定です。
特に年配の購買担当者が近い将来退職してしまうと、知識やノウハウの継承は大きな課題となります。だからこそ、誰もが使えるデジタルツールを持つことが重要なのです。そしてさらに、AIが担当者にインサイトを与えてくれる機能は非常に強力なツールとなります。
私たちが提案するソリューションは、企業が直面している人材枯渇やスキル継承の課題に対抗できるひとつの措置であると考えています」
ISBNを世の中に展開する中で、課題となることを教えてください。
日本の古きビジネスカルチャーから見える改善余地の大きさ
「私たちがこのIntelligent Spend and Business Networkを日本の事業会社へ提案をする上での課題は、そもそも企業の中で間接材調達購買を企画し制御する主管部門が組織の中にまだまだ少ないことです。従って、どの部署の誰に訴求すべきかを特定することがまず難しい分野であるといえます。
これらの間接材調達マネジメントに関しては、日本よりも海外の方が、圧倒的に事例は豊富です。海外では、社内で使用するパソコンや携帯電話、活用する外部人材のソース先など、すべての調達ソースが標準化されている企業が多いです。『どういう資材を社員に与えることが最適なのか』が考慮され、調達の標準化が非常に進んでいます。それらを司るCPO(Chief Procurement Officer=最高調達責任者)が存在し、その下にカテゴリーごとに管理部門が存在します。
一方、日本企業の多くは長い歴史の中で部門最適主義的な面が続いており、工場ごとや部門単位でバラバラにモノを買う風潮があります。特に地方の工場へ行くと、地元の業者とのお付き合いが強いため、購買の中央集権化によって長年の取引業者が淘汰されることを嫌う文化があるように見えます。
そもそも日本では、自動車製造業なら部品や材料、化学品メーカーなら溶剤など、直接材と呼ばれる製品にずっと注力してきた歴史があり、間接材の購買は軽んじられてきた背景があります。従って、CPOのような人材が育たず、調達に関わるスキルやノウハウが企業として共通化されづらい傾向にあるのです」
間接材購買の改革がもたらす経営インパクトを知るべし
「ただ、特に財務の観点において、この分野は軽視すべきではありません。例えば『売上高を50%向上する』というゴール達成には、とてつもないパワーが必要です。一方、支出そのものを抑えるほうが、損益計算書(PL=Profit and Loss Statement)上の数値は改善しやすいのです。実際にPL改善後のシミュレーションをお客様にお見せすると 『ここまでインパクトが大きいとは思わなかった!』と驚かれます。
まだまだ認識されていない領域だからこそ、私たちが重要性を広める必要があるのです。ゆくゆくは、多くの会社におけるCPO人材をSAPが育成するくらいの意識で活動をしています」
Spend Managementのチームをリードする川崎さんの視点で、お仕事の魅力を教えてください。
啓蒙が必要だからこそやりがいが大きい!日本企業を世界基準へ導く責任がある
「ERPとは、企業が財務報告義務を負っている以上、必ず必要となるものです。一方、いま扱っている間接材の支出管理や可視化、サプライヤーとのネットワーク自体は、企業に存在しなくとも法律違反になるわけではありません。それでも、このSpend Managementの重要性を伝え、お客様に『本当に必要なのだ』とご納得をいただく。このプロセスがたまらなく面白いのです。
最近の事例でいうと、当初から『ERP以外は要らない』と言われていたお客様がいらっしゃいました。ただ、このビジネスネットワークの価値をメンバーと共にずっと力説し続けてきたところ、徐々にお客様の目の色が変わり、最終的にはご採用いただきました。
私たちの熱心な説明によってお客様のマインドが変わり、『川崎さん、あなたが言うことはもっともだ』と言っていただいた瞬間は非常に印象的でした。お客様がこれまでには考えたこともない方向性について、新たな示唆をご提供できたと実感しました。
日本企業が変革し、世界に追いついていくためにはこの領域に注力することは必須です。いまの仕事を通して、世界のトレンドをより多くの企業へ伝え、この分野にイノベーションをもたらしていると実感しています」
ERP分野で長く活躍されてきた川崎さん。SAPのカルチャーについて、また入社を検討している方へのメッセージをお聞かせください。
支え合い、ともに高め合うマインドが強いSAPの文化
「これまでに私は、日本のSIerや大手外資系IT、またコンサル会社でのキャリア経験もありますが、SAPのカルチャーには正直びっくりしました。
とにかく全員が非常にサポーティブなのです。”OK! Happy to support(喜んでサポートするよ!)”と常に皆が言ってくれるし、ひとつの目標を立てたら全員が力を合わせて達成しようと取り組む姿勢があります。英語力が高くなくとも、それを理由に無視されることもないし、SAPグローバル全体でも協力してくれる方ばかりです。それが入社して最初に驚いたことです。
ただ、決められたことを決められたルールでこなしたい人は、SAPはおそらく向いていないと思います。知的好奇心が旺盛で、自らたくさんの人と話をしながら自分を高めようとする人が向いていると思います。SAPを取り巻く世界はイノベーションが加速しているので、きちんとその変化に追随し、自分を適応させることが必須だと思います。
ISBNの部署に関していうと、基本的には調達購買業務そのものに興味がある人が向いていると思います。ERPだけでなく、SAP AribaやSAP Concur, SAP Fieldglassなど、SAPのプロダクト群全体を理解しつつ、ISBNの価値を踏まえた上でストーリーを作り、お客様へうまく伝えることができるストーリーテリングの能力が求められます」
世界へ価値を生み出し続けるSAP ― 期待値が大きいからこそ成長が加速する
「SAPは、世界最大のERPべンダーです。世の中になくてはならない企業だと実感しますし、ここで働かせてもらっていることに誇りを感じます。最近は、さらに『もっと他の提案もしてくれない?』『他に何か新しいアイデアや技術やツール導入、他業界の成功事例などイノベーティブ なことはない?』という声もいただくので、多くの企業から戦略的パートナーとしての信頼を得られている自負もあります。
その分、世の中からの期待値も大きいことは確かです。だから、『その程度?』と思われないように自分を高め、プレッシャーを楽しみながら成長できるメンバーが集まってくれると良いなと思っています」
ISBNの重要性と、川崎さんの熱意が伝わってきました!これからも日本企業が世界で躍進するため、多くのイノベーションを支えてくれることを期待しています。
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■前回の記事はこちらから:LifeAtSAPJapan vol.30 SAPⓇ Signavioで世界を舞台に日本の競争力を高めたい