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Fusion 社、SAP® BTPに標準コールド・チェーン・ソリューションを構築

Laboratory technician preparing blood sample for medical testing in laboratory; Shutterstock ID 397825687; PO: N/A

 (本記事は、11月25日に本社で掲載されたものです)

患者の安全性および環境の持続可能性の追求が、ライフサイエンス業界におけるコールドチェーンの革新を行う原動力になっています。製品の品質を維持し、安全で効果的な治療を世界中で実現するには、先進技術が不可欠です。

バイオ医薬品業界は、温度管理が必要な物流に苦慮しており、コールドチェーンの失敗による損失は年間 350 億ドルに上ると推定されています。世界保健機関 (WHO) によると、物流の温度管理が適切になされていなかったため、到着時に効果がなくなってしまったワクチンは 50% もあるとのことです。これは患者の命に影響するだけでなく、環境にも影響し、資源を大きく無駄にします。無効になってしまったワクチンは、その製造、輸送、保管に費やされた原材料、エネルギー、リソースの損失を意味し、さらには廃棄物の増加による環境負荷の原因にもなります。

ワクチンや生物学的製剤のような温度に敏感な製品の有効性を維持するためには、コールドチェーン管理が極めて重要です。米国では、CGMP(最新優良医薬品製造基準) や USP (米国薬局方) 第1079章 Good Storage and Distribution Practices for Drug Products(医薬品の適正保管出荷規範)などのFDA(アメリカ食品医薬品局) 規制により、サプライチェーン全体で医薬品の安定性を確保するための温度管理が義務付けられています。同様に、EU の適正流通規範ガイドラインでは、医薬品の品質を維持するために厳格な温度監視が義務付けられており、温度に敏感な製品の取り扱いには高い基準が設けられています。

このような課題に対処するため、ライフサイエンス業界の企業は今、SAP® Business Technology Platform (SAP® BTP) の先進技術を活用し、温度変動を積極的に管理しようとしています。

SAP BTP は、システム間のシームレスな統合とデータ共有を実現し、さらに、温度を安定させるためのデータ主導の迅速な意思決定に役立つクリティカルなインサイトを提供します。これにより、サプライチェーンのレジリエンスを強化し、製品ロスを最小限に抑え、環境への影響を低減し、温度に敏感な製品を安全かつ効果的に配送することが可能になります。

Fusion社 のコールドチェーン管理ソリューション

このような状況下、Fusion Consulting 社はライフサイエンス分野の SAP プロダクトチームと密接に連携し、SAP BTP上の標準ソリューションとして Cold Chain Management Solution (CCMS) を構築しました。このソリューションは、エンド・ツー・エンドのサプライチェーンにおいて、医薬品、ワクチン、その他の生鮮品を含む、温度に敏感な製品の品質をサポートします。何らかの障害が発生すると、温度の異常や逸脱が生じ、製品の有効性が脅かされ、患者の安全性が損なわれるだけでなく、経済的損失にもつながります。

CCMS は、サプライチェーン全体を通して、温度異常や逸脱を防ぎ、温度制御下での製品管理をサポートします。一般的に、製造・供給プロセスでは、室温暴露時間 (TOR) と冷蔵時間 (TIR) を追跡します。この両者は、製造ラインからサプライチェーンの末端にいる患者までの間に、製品が異なる温度帯(例えば、低温、常温、冷凍)で過ごした時間を累積します。

Fusion CCMS 以前の TOR と TIR の追跡は、カスタムメイドの社内レガシーシステムと、ミスの起こりやすい紙ベースの手作業という組み合わせに依存していました。そのため、複雑で時間のかかる作業、高いエラー率、作業のやり直し、煩雑なお役所仕事を発生させ、最終的には患者の安全性、製品の有効性、コンプライアンスを危険にさらしていました。

CCMS は TOR と TIR の追跡をデジタル化し、サプライチェーン全体の温度状況を完全に可視化することで、異常を未然に防ぎます。自動化されたワークフローとスマートアラートにより、製品の腐敗と患者リスクを最小限に抑え、SAP システムとの統合により、RFID と IoT デバイスから自動的に取得されるデータを活用して効率性と安全性を高めます。

SAP のライフ・サイエンス・ヘルスケア製品管理担当バイスプレジデント、アンドレアス・クルムラウフ (Andreas Krummlauf) は次のように述べています。「Fusion Cold Chain Management Solution は、SAP BTP のコラボレーションとイノベーションのパワーを体現したソリューションです。温度変化に敏感なプロダクトを管理するという重要な課題に対処することで、患者の安全性を高め、法令遵守を強化し、環境への影響を低減することができます。このソリューションは、SAP のライフサイエンス向けソリューションポートフォリオを完全な形へと拡張するものであり、お客様に包括的な機能を提供するという当社の戦略に沿ったものです。私たちは、Fusion 社のようなパートナーが、ライフサイエンス分野で有意義な変化をもたらす最先端のソリューションを開発するのをサポートできることを誇りに思います」

Fusion Consulting社の 最高収益責任者であるファレス・ザイアー (Fares Zaier) 氏は、「SAP とのコラボレーションは、革新的な強みと専門知識が、CCMS のような業界を変革する。文字通り、命を救うソリューションにつながることを示す好例です」と語ります。

品質管理とバッチリリースの重要な関わり

上述の TOR 情報は、品質管理部門がチェックする必要のある重要な属性のひとつです。これは、サプライチェーンプロセスの全体を通じてバッチ決定が必要なときはいつでも必要になる情報です。バリューチェーン全体を通して、この情報を共有できることが最も重要です。

SAP BTPのプラットフォーム上に構築された SAP Batch Release Hub for Life Sciences ソリューションと Fusion CCMS は、シームレスなプロセスフローの統合を実現します。また、これによりこシステムのシームレスな統合も可能になり、データの一貫性の確保とプロセスの最適化も実現します。

これら強力なソリューションを組み合わせることで、ライフサイエンス企業は将来のイノベーションのための基盤を築くことができます。そして今、Fusion Consulting 社と SAP の緊密な協力関係が、現在の要件だけでなく、将来の要件をも満たすソリューションの開発を実現するものになりました。

将来を見据え、Fusion 社は、ライフサイエンス分野のトップクラスの顧客と協力する業界コンソーシアムを設立し、顧客からのフィードバックや要望を継続的に製品の設計や開発に反映させることを計画しています。

 


アラジン・マンディシャー (Aladdin Mandishah) は SAP のライフサイエンス部門プロダクトマーケティング担当ディレクターです。
マルコ・デ・ロレンツォ (Marco De Lorenzo) は SAP のライフサイエンス部門プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントです。
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