(本リリースは、12月16日に弊社本社から発表された発表文の抄訳です)

 SAP SE(NYSE: SAP)は、企業の財務データと直接統合する、世界で最も包括的な炭素会計システムであるSAP® Green Ledger(グリーン元帳)ソリューションの一般提供開始を発表しました。

SAP® Sustainabilityソリューションの一部であるSAP Green Ledgerは、SAPのERPソリューションから抽出される経済活動や取引に炭素排出量を割り当てます。このイノベーションにより、企業は製品、サービス、組織単位におけるカーボンフットプリントを正確に計算、分析、報告できるようになります。

気候変動対策には脱炭素化が必要だというコンセンサスが高まる中、SAP Green Ledgerは、企業が以下のことを行えるよう支援します。

  • カーボンフットプリントを追跡し、その財務的な影響を含め、説明責任を果たす。
  • 排出量を削減し、財務上の最適化も行い、カーボンバジェット対策を促進する。
  • カーボンニュートラルとネットゼロ目標に向けてカーボン計画を策定する。
  • 財務と環境の両面から、各部署、事業部門、プロフィットセンターのベンチマーキングを行う。
  • サステナビリティ監査の準備をする。
  • サプライチェーンにおける炭素排出量削減を目指し、サプライヤーベースのプロセスを改善する(2025)。

SAP Green Ledgerは、世界中の何千もの企業で利用されているSAPの既存の財務/ERPソリューションを基盤としています。これらのソリューションを拡張して排出量データを統合することで、企業は環境への影響と財務パフォーマンスを関連付け、コンプライアンス、効率性、透明性を高めながら、より多くの情報に基づいた持続可能な意思決定を行うことができるようになります。

SAP SEのCFO兼エグゼクティブボードメンバーであるドミニク・アサム(Dominik Asam)は次のように述べています。「地球温暖化抑制のためにCO2を削減するには、莫大な投資が必要です。スマートで信頼性の高い管理手法に加え、サプライチェーンに沿った排出量に関する正確なデータも、必要な投資を誘発するために重要です。平均値ではなく、監査可能な合理的な保証が得られる実績値を利用することによってのみ、フリーライダーやグリーンウォッシュを回避でき、それによって貴重な投資、さらには私たちの地球を守ることができます。そして、SAP Green Ledgerであればこれを実現できるのです」

現在、SAP Green Ledgerは、財務データと環境データを統合することで、規制要件に対応する企業に最初の一歩を提供します。SAP Green Ledgerは、企業がEU CSRD*などのサステナビリティ規制に関わる複雑な世界情勢に対応しながら、EU ETS**やEU CBAM†などの進化を続ける規制や、ISSB††などの国際基準に適応するための拡張可能な基盤を提供します。このソリューションの一般提供は、炭素会計システムの新時代の幕開けを告げるものであり、脱炭素化が法的にも市場的にも必須となる中、世界中の企業に大きな影響を与えると期待されています。

SAP Green Ledgerは、Accenture社、Deloitte社、EY社、PwC社、TCS(Tata Consulting Services)社といった企業からのサポート、およびCovestro社などのパイロット顧客からの協力を受けて開発されました。Covestro社は現在、初期パイロットフェーズでSAP Green Ledgerを評価中です。サプライチェーン内での特定製品の製造中に発生する二酸化炭素の値をSAP Green Ledgerにリンクできているかテストしています。

Accenture社は、急速に進化する規制の中で、企業がネットゼロとサステナビリティ目標を達成できるよう支援しています。Accenture社のグローバル・リソース・インダストリー・プラクティス・チェア兼グローバル・サステナビリティ・サービス・リードであるステファニー・ジャミソン(Stephanie Jamison)氏は次のように述べています。「企業が事業の財務パフォーマンスと環境パフォーマンスの両方を可視化しようとする中、SAP Green Ledgerは、排出量を削減し、効率を高め、パフォーマンスを最適化するための意思決定に必要なサステナビリティ指標とインサイトを提供できます。戦略的共同イノベーションパートナーとして、AccentureはSAP Green Ledgerの開発を支援してきました。当社は、クライアントの十分な支援に役立たせることができる、SAP Green Ledgerのテクノロジーと機能に対する深い知識を持っています」

SAPは、Green Ledgerの戦略的アドバイザリーグループを通じて、サステナビリティの測定と報告に関するDeloitte社の広範かつ深い知見からインサイトを得ることができました。Deloitte社のグローバル・サステナビリティ・ビジネスリーダーのジェニファー・スタインマン(Jennifer Steinmann)氏は次のように述べています。「SAP Green Ledgerは、温室効果ガス排出量を追跡、管理、報告しようとする組織に新しい精度の炭素会計を提供します。サステナビリティの取り組みに関わる全体的なコストとメリットを可視化して、ビジネスのレジリエンスを高めるデータ主導の意思決定を可能にします」

Deloitte社は、サステナビリティ開示基準を採用して保証獲得に取り組む企業を支援しています。Deloitte社のグローバルIFRSおよびコーポレート・レポーティング・リーダーであるベロニカ・プール(Veronica Poole)氏は次のように述べています。「追跡可能なボトムアップの排出量データを生成するにはテクノロジーソリューションが役立ちます。説明責任能力を強化し、合理的な保証を得られる精密さを持つ組織になるためには、エンタープライズシステムの強固なガバナンスと統制を活用することが必要です」

PwC UK社のグローバル・サステナビリティ・リーダーであるウィル・ジャクソン=ムーア( Will Jackson-Moore)氏は次のように述べています。「パイロットプログラムに参加し、炭素会計と炭素管理を戦略的な事業運営に統合するための重要なデジタルアプローチであるSAP Green Ledgerの一般提供開始を楽しみにしています。SAP Green Ledgerの導入によって、企業は財務パフォーマンスとサステナビリティの目標をシームレスに整合させることができ、同時にリアルタイムの排出量報告や資源管理に必要な透明性と精度を達成することができます。この基盤の上に、PwCはCSRDに対応したコンテンツを開発し、エンド・ツー・エンドのレポーティングとステアリングを可能にすることで、企業が規制要件を満たし、経営幹部レベルでサステナビリティを優先させ、環境説明責任において意味のある変革を推進できるよう支援しています。当社は、SAP Green Ledgerを活用して複雑なサステナビリティの課題を解決し、測定可能な脱炭素化を達成し、ネットゼロのコミットメントに向けて迅速に前進するクライアントをサポートできることを誇りに思います」

SAPのパートナーであるTCS社もSAP Green Ledgerにおける協業の中で、カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みの加速化に重点を置いています。TCS Enterprise Solutions グローバルヘッドのヴィクラム・カラコティ(Vikram Karakoti)氏は次のように述べています。「TCSはSAP Green Ledgerのパイロットプログラムに参加し、より良い未来を築くための革新的なサステナビリティソリューションを利用しています。これは、さまざまな組織が法令遵守だけでなく、サステナビリティを成長エンジンに変えるきっかけを与えるものだと思っています。炭素データを事業計画プロセスに組み込むことで、企業は成長、変革、環境再生のために、これまで未開拓だった領域を解き放つことができるのです」

*EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)は、企業に課せられる社会・環境情報開示規制であり、2023年1月5日に発効。
**EU ETS(EU排出量取引制度)は、炭素市場を通じて排出量の削減を促進する「キャップ・アンド・トレード」制度である。2005年以降、EU域内の温室効果ガス(GHG)排出量の約40%を占める発電・熱供給、工業生産、および航空部門からの排出を対象に、汚染者にGHG排出量に対する支払いを求めている。
EU CBAM(炭素国境調整メカニズム)は、EUに輸入される炭素集約的な商品の生産過程で排出される炭素に公正な価格をつけ、EU域外におけるよりクリーンな工業生産を奨励するEUの制度。2026年から本格適用される。
††ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、公益のために、投資家と金融市場のニーズに焦点を当てた、質の高い包括的かつグローバルなサステナビリティ開示のベースラインとなる基準を策定している機関。

以上

SAPについて
SAP(NYSE:SAP)は、エンタープライズアプリケーションとビジネスAIのグローバルリーダーとして、ビジネスとテクノロジーの融合を推進しています。50年以上にわたり企業と共に歩み、進化を続け、財務、調達、人事、サプライチェーン、カスタマーエクスペリエンスなどのビジネスクリティカルな業務を統合し、お客様のビジネスを成功へと導く支援をしています。詳細は、こちらからご覧ください。www.sap.com