(本記事は、2月13日に本社で掲載されたSAP Data and Analytics 担当プレジデント兼最高製品責任者イルファン・カーン(Irfan Khan)のブログの抄訳です。)

データは、すべての企業の基盤となるものです。デジタル変革の揺るぎない礎であり、人工知能(AI)を推進する原動力でもあります。あらゆる業界でミッションクリティカルなプロセスを運用してきた50年の経験を通じ、私たちはビジネスデータがもたらす変革の力を目の当たりにしてきました。

SAP は SAP Business Data Cloud のリリースを発表しました。これは、すべての SAP データを統合・管理し、SAP以外のシステムのデータともシームレスに接続することができるフルマネージド SaaS ソリューションです。SAP の業界をリードするデータ・計画・分析ソリューションの進化形として、SAP® Business Data Cloud は、SAP® Datasphere、SAP® Analytics Cloud、SAP® Business Warehouse を統合して、統一感のある操作性を実現し、あらゆる部門に革新的なインサイトを提供します。

SAP はまた、Databricks 社との注目すべきパートナーシップについても発表しました。これにより、Databricks の高度な機能を直接 SAP Business Data Cloud に組み込めるようになります。これは、各分野をリードする2社が協力し、アプリケーションとデータプラットフォームの連携のあり方を再定義することで、企業のデータ管理における新たな時代の幕開けを意味します。

 インサイトの変革力を解き放つ

多くの組織は依然、信頼できないデータに悩まされています。この信頼の欠如という根深い課題が、データと AI における真のイノベーションを阻む壁となっています。

全世界のビジネスリーダーとテクノロジーリーダー 1,200 人を対象とした調査によると、回答者の 55% が「データ品質の低さ」を最大の課題に挙げています。また、半数近くが「エコシステム全体でのデータ統合の難しさ」をイノベーション停滞の主要因に挙げています。

SAP Business Data Cloud は、信頼性が高く調和のとれたデータ基盤を提供して、こうした課題を解決し、IT リーダーやビジネスリーダーがビジネス全体を把握した上でより効果的な意思決定を行えるよう支援します。

SAP Business Data Cloud は、あらゆるビジネスプロセスをカバーするフルマネージドの SAP データプロダクトを提供します。これら厳選されたデータプロダクトは、高度に最適化され統一された「One Domain Model」に従い、元のビジネスコンテキストとセマンティクスを保持します。ユーザーはここから信頼できる高品質なデータに即座にアクセスできます。

これらのデータプロダクトは SAP のフルマネージドで提供されるため、ユーザーはデータ抽出の再構築や維持にかかるコストを負担する必要がなくなります。SaaS を導入することで、ライフサイクル管理が簡素化され、データの整合性が確保され、データとアナリティクスのエコシステム全体でコピーを作成せずにデータを共有できるようになります。

これらのデータ製品とともに、SAP Business Data Cloud は、事前構築済みの分析アプリケーションスイートを提供し、隠れたインサイトの発見と意思決定の迅速化を支援します。このような「Insight Apps」もSAPのフルマネージドで提供され、事前定義済みの指標、AI モデル、計画機能が組み込まれ、ビジネスのあらゆる要素をつないで統合する方法を簡素化することができます。

これにより、ERP、支出管理、サプライチェーン管理、人事、カスタマーエクスペリエンス、財務など、各社重要なビジネス機能に合ったユースケースの活用が加速されます。

組織は、最も重要なリソースの動向を把握する必要があります。「Insight Apps」を活用すれば、運転資本などのビジネスデータにすでに接続されている事前設定済みダッシュボードテンプレートによって、キャッシュフローや収益性をリアルタイムで可視化し、組織の財務状況をあらゆる角度から把握することができます。

あらゆるデータをつなぐ 

SAP Business Data Cloud は、ビジネスデータファブリックの原則に基づいて全ビジネスデータを統合し、データの検索、共有、管理、モデリングを容易にします。このソリューションにはSAP® Databricks® が含まれ、Databricks の高度な機能が直接 SAP Business Data Cloud に組み込まれています。

  • ビジネスセマンティクス:SAP Datasphere を使用して、コストのかかるデータ抽出の必要なく、既存のさまざまなプラットフォーム全体で、信頼性の高い同じデータを検索、共有、モデリングできます。ビジネスメタデータとセマンティクスを維持しながら、すべてのデータの強力なナレッジグラフを構築することで、データを簡単に検索・活用できるようになります。SAP Datasphere をすでに利用されているお客様については、これまでの投資が今後も完全にサポートされ、途切れることなく、SAP Datasphere の全機能を SAP Business Data Cloud でネイティブにご利用いただけます。
  • データエンジニアリングと機械学習/AI:SAP Databricks によって、データエンジニアたちは、ビジネスデータに基づいて AI モデルや生成 AI アプリを迅速に開発できるようになります。差分共有のようなネイティブ機能により、SAP のデータ製品と既存のレイクハウスは双方向にデータ連携されます。ゼロコピーですべてのデータを統合することで、例えば、未決済の売掛金の支払期日予測といった財務ユースケースに、高度な AI モデルや機械学習モデルを適用できます。
  • SAP Business Warehouse の最新化:SAP Business Data Cloud は、オンプレミスで SAP Business Warehouse を利用されているお客様にクラウドへの柔軟な移行方法を提供します。SAP Business Warehouse へのネイティブ統合により、差分データ共有機能を介してSAP Business Warehouseのオブジェクトストアをデータプロダクトとして簡単にデータアクセスできるため、SAP Business Warehouseのモダナイズプロセスを簡素化し、SAP Business Warehouse への投資を最大限に活用することができます。
  • 分析と計画:SAP Business Data Cloud では、分析機能と計画機能が 1 つのソリューションにまとめられているため、ユーザーはインサイトを即座に行動へとつなげることができます。レポート作成を自動化し、AI で結果のシミュレーションを行い、財務、サプライチェーン、オペレーションの計画を統合して、あらゆる情報を一元的に表示できます。


「SAP Business Data Cloud は、当社のデータバリューを最大限に引き出し、イノベーションを促進してくれるでしょう。コンテキストリッチなデータプロダクトと Databricks との緊密な統合によって、当社の既存のデータプロダクトとの連携が強化され、長期にわたる適応性が確保されます。信頼性の高いビジネス対応データによってシナリオをモデル化したり、AI 生成インサイトを利用したりできるようになるので、当社のデータエコシステムにとって持続可能で柔軟な未来が来るだろうと期待しています」 

マーカス・ハルトマン(Markus Hartmann)氏、コーポレートバイスプレジデント兼ビジネステクノロジー担当責任者、Henkel

 信頼性の高い AI を育成する 

エージェント型 AI の急速な成長に伴い、組織は適切なデータ基盤を整備する必要に迫られています。SAP Business Data Cloud は、データをすべて集約し、ビジネスコンテキストに沿った正確で信頼性の高いデータに基づいてエージェント型 AI が運用される環境を提供します。

SAP の生成 AI コパイロット Joule は、SAP Business Data Cloud と緊密に統合されています。SAP Business Data Cloud のナレッジグラフは、組織のデータ、メタデータ、ビジネスプロセスを結びつけ、AI エージェントや Joule、大規模言語モデル(LLM) が、その関係性の文脈の中でデータを理解できるようにします。

こうしたマッピングにより、データ同士の関連性が明確になるため、ユーザーやアプリケーションにとってインサイトの信頼性が高まります。ビジネスナレッジとコンテキストに基づいて、AI エージェントや Joule をトレーニングすることで、生産性が向上します。例えば、ユーザーは AI を活用して、IT 部門からのサポートをそれほど要さずに、部門横断的なタスクを完了して、インサイトを獲得し、ビジネス全体にわたるクリティカルな情報をまとめて取得することができます。これにより、AI が強化され、リスク評価、予測、その他の高度なシナリオシミュレーションといった複雑な分析や計画を自動化できるようになります。

SAP Business Data Cloud のエコシステム 

SAP Business Data Cloud は、オープンであること、およびお客様が選択できることが優先される構造になっています。データ環境を簡素化するために、SAP Business Data Cloud はオープンなデータエコシステムをサポートします。Collibra 社、Confluent 社、DataRobot 社など、データおよび AI の大手パートナーとネイティブ統合し、数週間、数カ月後には、オープンなデータエコシステムのさらなる拡大につながる新たな戦略的パートナーシップを発表する予定です。

SAP Business Data Cloud は広範なパートナーエコシステムに支えられ、あらゆるデータから画期的なインサイトを容易に引き出せるようになりました。SAP は、ビジネスプロセスや各業界に関する深い専門知識を持つ企業と提携しており、彼らは SAP Business Data Cloud 上でインサイトアプリを展開しています。

データエンリッチメントからデータアクティベーションまで、パートナー企業のInsight Appsは、SAP Business Data Cloud が提供するデータプロダクトとコアサービスを基盤に構築されています。Accenture 社、DataRobot 社、Spendscape by McKinsey 社、PwC 社、EY 社、Deloitte 社、そして Capgemini 社との初のパートナーアプリを発表できることを非常に嬉しく思います。

参考資料