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個性×経験学習=成長と自己実現。社員一人ひとりを輝かせ、組織も活性化させる人材戦略の秘訣

フィーチャー

求められる成長の機会

2022年12月15日の日経電子版に、「職場がホワイトすぎて辞めたい 若手、成長できず失望」という記事が出ていました。働き方改革による長時間労働の是正などにより以前に比べて職場はホワイトになっていますが、「職場がきつくてもゆるくても辞める人が増える」と記事の中で指摘しています。その理由の一つとして、特に若手社員に課される仕事の負荷が低下し、成長の機会が奪われていることを挙げています。

若手社員だけではなく中堅・シニア社員であっても、「人生100年時代」と呼ばれるように、平均寿命が延び市場環境や社会情勢の変化が激しい時代では、年齢を問わず学び続け自分自身を成長させていくことが重要です。

本稿では、成長の機会とは具体的に何なのか、個人の成長を加速させる経験学習のプロセスについてご紹介します。

成長の機会とは何か?能力開発の70:20:10の法則

成長の機会とは具体的に何を指すのでしょうか?

ご存知の方も多いと思いますが、人材育成の分野で主張されている能力開発のモデルに「70:20:10の法則」というものがあります。出典はMichael M. LombardoとRobert W. Eichingerによって書かれた書籍 『The Career Architect Development Planner』 で、70%は経験から、20%は上司や先輩からの助言やフィードバックから、10%は研修や読書などから、人は学習し成長するというモデルです。

能力開発の70:20:10の法則

 

経験からの学びを加速させる経験学習モデル

能力開発の70:20:10のモデルに依ると、70%を占める経験により人は大きく成長しますが、具体的にはどのような経験とどのようなプロセスを経て人は成長するのでしょうか?

経験による学習については、デービッド・コルブによる経験学習のモデルが有名です。コルブの経験学習モデルには以下4つのプロセスがあり、これらのプロセスを循環させていくことによって、人は経験から学習し成長していくという主張です。

デービッド・コルブの経験学習モデル

 

1.具体的経験

日々繰り返される慣れた業務ではなく、現有能力を超えてこなす挑戦的な業務や職務のことを指しています。例えば、自分がやったことのない仕事やチャレンジングな業務のことです。創意工夫が求められ試行錯誤をするようなストレッチのある経験を通して、新たな知識やスキルを獲得し、今までできなかったことができるようになっていきます。

2.内省的観察

具体的経験をした後や経験の最中に、自分の行動や出来事を俯瞰的で多様な観点から振り返ることです。自分自身で内省することはもちろんですが、それだけでなく上司や同僚からのフィードバックやコーチングを受けることで、より効果的に具体的経験を振り返ることができます。このプロセスの目的は、経験を振り返り、気づきを得ることによって未来の行動や意思決定に活かすことです。ただ振り返って終わりではなく、次の行動、次の経験に活かすために振り返り、行動や出来事を掘り下げていきます。

3.抽象的概念化

具体的経験を、一般化、概念化、抽象化して他の状況でも応用可能な法則や教訓を引き出すプロセスです。経験の知覚、感情、価値観、意味づけといった具体的かつ文脈や状況に埋め込まれたものから法則や教訓を見つけ出し、他の場面に応用できるようにします。このプロセスにおいても、上司や同僚からのフィードバックやコーチングは効果的でしょう。

4.能動的実験

具体的経験、内省的観察、抽象的概念化の経験学習のプロセスで得られた法則や教訓は、次の新しい経験の中で実践されてこそ意味があります。経験して終わり、反省して終わりではなく、新たな業務や経験の場において得られた法則や教訓を試していくこと、法則や教訓を意識して自分の行動や振る舞いを変えて実験していくことが重要です。

この経験学習のプロセスを回すことによって、個人の成長を加速させることができます。さらに、この文化を組織やチームに根付かせていくことができると、相乗効果が期待できます。

能力向上やパフォーマンスに影響を与える経験学習のプロセスとは?

前述のコルブの経験学習モデルをベースに、能力向上や個人のパフォーマンスに影響を与える諸要因を詳細に検証した研究が、書籍『経営学習論 増補新装版』に紹介されています。

「職場における業務能力の向上に資する経験学習のプロセスとは何か?」経験学習モデルに関する実証的研究(木村, 2012)では、能力向上に資する経験学習のプロセスが社会人歴や職種によって異なることを示唆しています。

社会人歴

一般的に、経験学習の各プロセスは他のプロセスに循環的に正の影響があることを示しています。中でも、勤務1,2年目の社員は「具体的経験」が、勤務3~9年目以上の社員は4つのプロセス全てが、能力向上に直接的な効果があることを示しています。
このことから、勤務1,2年目の若手社員は、経験学習のプロセスを回しながらもとにかく「具体的経験」を積むこと、勤務3~9年目以上の社員は、具体的経験を積むだけではなく経験学習のプロセスを回すことが、能力向上にとって重要であることがわかります。

1年目から2年目社員の母集団: 経験学習行動が「能力向上」に資する影響

3年目から9年目社員の母集団: 経験学習行動が「能力向上」に資する影響

 

職種

職種と能力向上の関係については、研究開発職では「具体的経験」と「能動的実験」が、営業職では「具体的経験」と「内省的観察」と「抽象的概念化」が、スタッフ職では「具体的経験」と「内省的観察」が、直接的な能力向上に繋がると結論付けています。

研究開発職の母集団: 経験学習行動が「能力向上」に資する影響

営業職の母集団: 経験学習行動が「能力向上」に資する影響

スタッフ職の母集団: 経験学習行動が「能力向上」に資する影響

 

内省的観察とパフォーマンス

上記の研究から、経験学習が能力向上につながるプロセスは、社会人歴や職種など学習者ごとに異なることがわかります。
一方でどのような社会人歴や職種の社員であったとしても、能力向上のためには「具体的経験」を積むことは重要です。さらに、木村(2012)の分析では、より高い業績をあげている人は、業績をあげていない人と比べて、「具体的経験」をするだけではなく、その「具体的経験」を「内省的観察」に繋げていることを示しています。

重要なのは、「具体的経験」と「内省的観察」を合わせて社員に提供すること

本稿では、成長の機会とは何を指すのか、能力開発の70:20:10の法則と70%を占める経験と経験学習のプロセス、そして能力向上に影響する諸要因について述べてきました。

それでは人材開発を担当する人事や現場マネージャーは、社員に適切な成長の機会を与えるために、何をすればいいのでしょうか?また、経験学習プロセスの始点となる「具体的経験」をすることがまず重要ですが、「具体的経験」となる現有能力を超えてこなす挑戦的な業務や職務とはどういったものでしょうか?

その答えは、社員によって異なります。社員の持つ職務経歴、強みや興味関心、そして目指したいキャリア目標は一人ひとりそれぞれ異なるため、社員個々人によって適切な「具体的経験」も一人ひとり異なってきます。

さらに「具体的経験」だけで終わらせず、次の「内省的観察」に繋げさせることが、能力開発の観点で重要です。人事や現場マネージャーは「具体的経験」の場を社員に提供しつつ、社員が「内省的観察」に繋げられるような1on1やフィードバックの場を作ることも大切となってきます。

このように、社員に適切な成長の機会、能力開発の機会を与えるためには、非常に高度な個別対応・テーラーメードの対応が求められるのです。これを実践しようとすれば、人材開発部門とマネージャーにとっては大きな負担となることが想像できます。

個性を尊重した経験学習により、社員のキャリア実現と組織の活性化を後押し

SAP SuccessFactorsではAIを活用し、社員が求めているキャリアと70:20:10のモデルが示す成長の機会を、一人ひとりに最適化した形で提案するユニークな仕組み(Opportunity Marketplace)を提供しています。SAP は、社員の多様な個性を尊重し、社員にキャリアを考えるきっかけと経験の機会と内省の場を与え、スキルアップやリスキリングを促進させ、社員の自己実現と組織の活性化を後押しします。

Opportunity Marketplace - 全社員に新たな成長機会を提供

また、1on1、フィードバック機能、メンタリングなどの上司や同僚からの助言やフィードバックを促す仕組みや、社内のキャリアパスや職務定義(ジョブディスクリプション)を公開する仕組み、社員が目指したいキャリア目標を複数定め、目標と現状とのギャップを明らかにする仕組みといった、人的資本を最大化させる包括的なタレントマネジメント機能も提供しており、統合的な人事システムを構築していただけます。

あらゆる社員に適切な成長の機会を提供し、社員一人ひとりを輝かせ、組織も活性化させていきましょう。

参考文献

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