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今年の3月にグローバルでサービス開始された「SAP HANA Cloud」ですが、いよいよ、日本のデータセンターでもサービスが提供開始されました。

そして、SAP HANA Cloud の 無償トライアル環境もグローバルで提供開始されました(後述)。

先だって、プレスリリースでも発表しましたが、どのような特徴をもったサービスなのか、まずは概要をご紹介します。

SAP HANAをクラウドで

おかげさまでSAP HANA は今年で10周年を迎えます。グローバルで32,400社を超えるお客様にご導入いただき(2020年5月現在)、SAP S/4HANA などのSAPアプリケーションで使用されるDB基盤だけでなく、分析、レポーティングなどの「データ活用基盤」として、SAP アプリケーション以外のシステムでもたくさんのご採用をいただきました。

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SAP は、SAP HANA を通じて「インメモリーデータベース」という最新テクノロジーを世に広めてまいりましたが、10年目を向かえる2020年、クラウド環境で「クラウドネイティブ」に使用できるSAP HANA として、「SAP HANA Cloud」を提供します。

SAPは既に「 SAP Cloud Platform (SAP CP) 」のサービスとして、「SAP HANA Service」を提供していますので、クラウド環境でSAP HANA のサービスを全く提供していなかった訳ではないのですが、今まで以上にクラウド環境で利用するための機能強化図っています。主な強化ポイントは下記の通りです。

・仮想データアクセス

・データ階層化管理

・柔軟なリソース管理

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仮想データアクセス

SAP HANA Cloud は オンプレミスのSAP HANAと同様、DB の中にデータを蓄積/保持するだけでなく、リモートのシステムに対しても「仮想データアクセス」の機能を提供します。

ユーザー/アプリケーションは、社内に分散するシステムに個別にアクセスすることなく、この「シングルポイント」である SAP HANA Cloud にアクセスすれば、企業システム内の全てのデータを活用できるので、データアクセスの利便性が大きく向上します

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具体的には、リモートのシステム、例えば、Oracle や SQL Server などの他社のDBにデータが格納されていて、それをSAP HANA 上では「仮想テーブル」という形で定義情報を保持します。

ユーザーやアプリケーションはSAP HANA Cloudに接続すると、あたかもSAP HANA Cloud 上にテーブルがあるように見えますが、アクセスしているのはあくまでも「仮想テーブル」。

この仮想テーブルを通じて、SAP HANA CloudはリモートデータソースのOracle や SQL Server に対して問い合わせを実行し、その結果をアプリケーションに返します。

ただし、この機能の注意ポイントは、リモートデータソース(のDB) の性能に大きく依存し、ネットワーク上にも毎回データが流れるので、性能面では不安もあるかと思います。

また、リモートシステムに対して予期せぬ負荷を掛けたなくない、という考えもあるかと思います。

そのような場合は「スナップショット」と呼ばれる、ある一時点でのデータをSAP HANA Cloud 上にコピーとして保持します。

SAP HANA Cloud 上に実テーブルとして保持するので、インメモリーテクノロジーを活用した高速なデータアクセスを実現します。

ただし、あくまでも「スナップショット」なので、リモートデータソースとのデータ不整合が発生する可能性がありますが、更新頻度の少ないマスターデータなどへの適用が考えられます。

データソースとのデータ不整合を極力排除し、鮮度の高いデータを高速にアクセスしたい」という場合は、「レプリカ」の機能を使用します。

このレプリカの機能を使うことによって、リモートデータソース側で発生した更新情報はニアリアルタイムでSAP HANA Cloud に反映され、「鮮度の高い」最新の状態でSAP HANA Cloud 上の実テーブルとして保持することができます。

「スナップショット」と「レプリカ」はSAP HANA Cloud 上にデータを保持するのでメモリ領域もディスク領域も必要ですがその分、アクセスは非常に高速です。

一方、「仮想テーブル」はアクセス性能はシステム環境に大きく依存しますが、SAP HANA Cloudのメモリー領域などのリソースは最低限で済みます。

各々、メリットと注意点があるので、どの機能を採用するのか悩むところですが、この切り替えがオンラインでスイッチ一つで行うことができます。システムの利用状況を鑑みて「チューニング」の範疇で最適な設定を選択していただけたらと思います。

この切り替え作業を行ってもユーザーやアプリケーションがアクセスするテーブル名には変更がありません。内部的にデータ保持の仕方を切り替えるだけなので、アプリケーションを変更することなく、設定変更ができることも嬉しいポイントです。

 

データ階層化管理

「SAP HANAと言えばインメモリーデータベース」。全てのデータをメモリ上に展開して高速アクセスを実現することが基本ですが、過去のあまりアクセスしなくなったデータをメモリー上に展開しておくのは、インフラコストの観点からもったいない、という声がありました。

そこで、SAP HANA Cloudには2つの新機能を実装し、「データ階層化管理」を実現しました。

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まず1つ目は「Native Storage Extension (NSE)」 というの機能を活用したWarmデータの管理です。

「あまりアクセスしないけど、時々使用するし、それなりにアクセス性能は担保したい」データをWarmデータと位置付けてNSEを活用します。

頻繁にアクセスされるデータはメモリー上記にキャッシュされますが、メモリーサイズを超えるようなデータアクセスが発生した時には、利用頻度の低いデータからキャッシュアウトされます。

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2つ目は「SAP HANA Cloud, Data Lake」という機能を活用したColdデータの管理です。

保持するデータはリレーショナルデータベースが中心となるため、「Relational Data Lake (RDL)」とも呼ばれます。

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ほとんどアクセスしないがデータは消すことができないし、アクセスする際には、それなりに良い性能が欲しい」、もしくは「メモリーには乗り切らないほどの大量データなので、コスト面ではインメモリーを諦めざるを得ないけど、検索性能は担保したい」というような特徴を持ったデータの管理に最適です。

このRDLは、HANA Cloud のインスタンスとは別に内部的にはインスタンスが作成されます。そして、そのインスタンスには「SAP IQ」という、カラム型のディスクベースのデータベースエンジンのテクノロジーが使用されています(SAP IQそのものではありません)。

この大量のColdデータはRDL上にテーブルとして保持し、SAP HANA Cloud 上には仮想テーブルを作成して、アプリケーションはこの仮想テーブルを通じてRDL上のデータにアクセスします。

この2つの機能を用いて、性能とコストのバランスを最適化することが可能になります。

 

柔軟なリソース管理

そして、最後の強化ポイントはSAP HANA Cloud のインスタン作成を容易にしたり、メモリーサイズやCPUの数、ストレージサイズを簡単に変更可能にすることです。「スケールアウト」と呼ばれる、サーバーを横並びにしてスケーラビリティを確保する構成も取れるようになります。

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これは、クラウドネイティブな仮想化技術である「Kubernetes(クーバネィティス)」を採用したアーキテクチャの更新によるものです。まず、結論から言いますと、DBを使用しているユーザーにとっては、この技術が使われていても使われていなくてもSAP HANA に対しての操作は全く変わりません。ただ、「運用管理が楽チンになった」だけです。

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また、上記の図にある通り、このSAP HANA Cloud は SAP Cloud Platform の一つのサービスなので、今までの「SAP HANA Service」と同様にSAP CP 上のアプリケーションと一緒に開発/運用を行うことができます。

今後はSAP HANA Cloud  をSAP HANA Service の後継サービスとしてご利用いただけたらと思います。

 

今後の情報提供、トライアル環境について

この新たなクラウドサービスの提供により、今までオンプレミス環境でSAP HANA を活用されていたお客様はSAP HANA Cloud への移行を検討されるかもしれません。

また、これを機会に SAP HANA に興味を持って、SAP HANA Cloud についてもう少し理解したい、というお客様/パートナー様もいらっしゃるかと思います。

そのようなお客様/パートナー様には、今後はSAP Blogやライブセミナー、オンデマンドコンテンツを通じて情報を提供してまいります(ご時世でもありますので…) 。

参考までに「これから初めてSAP HANA Cloudを触る方」を対象に「はじめてのSAP HANA Cloud 」のBlogをご用意しました。

前述の仮想データアクセス や RDL の機能についても紹介していますので、技術的にもっと詳しい内容についてご興味のある方は是非、参考にしていただけたらと思います。

また、SAP HANA Cloud を試してみたい! 触ってみたい ! という皆様のために、無償トライアル環境も提供開始しました。「Free Trial ではじめる、SAP HANA Cloud」のBlogも併せて参考にしていただけたらと思います。

※ SAP HANA のお客様事例などの情報はこちら

※ SAP Data Warehouse Cloud の情報(Free Trial環境の情報含む) はこちら

※ SAP HANA Cloud オンラインハンズオンのコンテンツはこちら