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ERPだからこそ実現できるサービスパーツにおける欠品抑制と在庫削減の両立

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サブスクリプションモデルの登場やコト売り化の傾向により、自社製品を使い続けてもらうことが企業の収益に大きな影響を与えるようになった昨今では、保守業務などのアフターマーケットを充実させ、顧客満足度を高めることの重要性が高まってきています。こうした保守業務を確実に実行するための一つの要素として、保守部品などのサービスパーツが適切なタイミングで、適切な場所に、適切な数量が在庫されている必要があります。一般的にサービスパーツの配備計画は、需要予測の困難性や一人当たりの管理品目点数の多さから製品在庫の計画と比較して欠品や過剰在庫が起きやすいとされます。多くの計画担当者の方が適切な在庫配備を目指して日々奮闘されているのではないでしょうか。

こうした予測の困難なサービスパーツの欠品発生率の抑制と過剰在庫の削減を両立していくためには、需要予測の精度を高めるという取り組みに加えて、実需要や在庫状況など、現在起きている状況に合わせていかに迅速に配備計画を修正することができるかがカギとなります。

そこでSAPでは、SAP S/4HANA 2020バージョンからサービスパーツの配備計画の機能(SAP S/4HANA Supply Chain for extended service parts planning, 以下 extended service parts planning)を搭載し、基幹システムに収集されている様々な実行状況・実績データを常に参照して、そのときどきに必要な修正を即座に行いながらサービスパーツの適切な配備を実現できる仕組みをご提供しています。これにより、計画担当者は実需要に基づいて様々な方針を迅速に変更することや、在庫推移を予測してアラートから欠品や過剰在庫になるリスクを未然に防ぐことが可能となります。

図1 SAP S/4HANA Supply Chain for extended service parts planningの特長

 

ここからは基幹システムに搭載された計画機能が、実行状況のデータと連携しながらどのような修正を行うことができるのかをご紹介します。

需要傾向の変化に応じた予測手法と在庫方針の変更

製品が市場に流通してから生産打ち切り後まで、サービスパーツはライフサイクルに応じて需要のボリュームや傾向が変化するため、需要予測においては、その変化をとらえて適切に予測手法を変えていく必要があります。extended service parts planningでは基幹システムに日々収集され続ける出荷実績を直接参照して傾向分析を行うことで、需要傾向の変化をいち早くとらえた需要予測を行うことができます。

また、パーツの納入や保守サービス実施までのリードタイム削減と過剰在庫抑制を両立するために、見込まれる需要量に応じて前方倉庫に在庫するものと後方倉庫に在庫するものに分けて管理している企業様も多いかと思います。各拠点・品目ごとに自拠点で在庫する需要量の基準を設け、閾値未満の場合は後方倉庫に在庫するというルールを定義することで、需要の変動に対応した在庫の配置の素早い方針変更も行うことが可能です。

図2 需要量の変化に応じた在庫配置方針の変更

 

実需要に応じたパーツの供給計画と倉庫間の偏在解消

パーツの倉庫間転送においても、その瞬間の実績状況を加味した実行が可能です。多くの企業様では中央倉庫にパーツをまとめて発注し、各前方倉庫に供給していくかと思います。extended service parts planningでは中央倉庫をはじめとした後方倉庫からの供給について、受け取る倉庫側の在庫数量と発生している需要の根拠を加味して数量を決定していきます。つまり、保守サービスや受注による出庫要求が存在している倉庫と、予測した見込みの需要のみがある倉庫で後方倉庫からの供給数量に優先度をつけています。また、短納期の需要が発生している倉庫には輸送方法を陸輸から空輸に切り替えるなど、各拠点で発生している需要に応じて必要な輸送手段を自動で選択していくことが可能です。予測に基づいて後方倉庫で構えた在庫数量と実際の需要が異なる場合でも、実需要を加味して供給していくことで可能な限り欠品を防止することができます。

さらに、パーツの供給は後方倉庫→前方倉庫といった一方的なものだけでなく、前方倉庫間で偏在を解消することや、後方倉庫に再度在庫し直すこともできます。これにより中央倉庫での発注量を抑制し、拠点全体での在庫量を抑えることが可能となります。この際にも当然上記と同様の発生している需要に応じた分配を行います。

このように、現状の在庫と実需要を加味して供給・分配計画を行うことで、全社で持つ在庫を適切に需要から引き当て、追加発注量を抑制していくことが可能となります。

図3 パーツの供給・分配計画

 

 

 

 

 

 

 

さて、本稿では需要予測の困難なサービスパーツにおいて欠品率抑制と過剰在庫の削減を行っていくには計画を実状に応じて迅速に修正するが必要があることをお示しし、計画機能と実需要・在庫などの実績情報が一体となっているERPの活用が一つの有効打になるということをお伝えさせていただきました。貴社のサービスパーツ配備計画業務に、少しでもこちらの情報をお役立ていただければ幸いでございます。