SAP Japan プレスルーム

資生堂のグローバル人事システム「MIRAI」にSAP® SuccessFactors®を活用

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SAP Japan Customer Award 2021 資生堂様

資生堂 エグゼクティブオフィサーCITO 高野篤典氏(右)と
SAPジャパン 代表取締役社長 鈴木洋史(左)

 

世界的なビューティーカンパニーとして、新しい価値を生み出し続ける株式会社資生堂(以下、資生堂)。同社はグローバル規模の人材配置の最適化、戦略的な人材育成に向け、SAP® SuccessFactors®をグローバル本社と6つの地域本社に導入。統合人事データをもとに、人材のグローバル化やダイバーシティの加速、次世代リーダーの育成、デジタル人材の採用・育成などを進め、企業価値の向上に向けたイノベーションを加速させています。SAP Japan Customer Award 2021で「Cloud Adaption部門」を受賞した同社が取り組むHR戦略のあり方、今後の展望について伺いました。


「PEOPLE FIRST」に立脚するデジタル変革のあり方とは?

資生堂は2019年11月からグローバルシステム導入によるビジネス改革プロジェクト「FOCUS(First One Connected and Unified Shiseido)」を推進しています。
こうしたなか、日本、中国、アジアパシフィック、米州、欧州、トラベルリテール(各地域の免税店)の6地域と、5つのブランド軸を掛け合わせて、各地域本社が責任と権限を持つマトリクス型経営体制で推進していた事業において、国単位でバラバラであった業務プロセスとシステムをFOCUSとSAPの活用によりグローバルレベルで標準化しようとしています。同社エグゼクティブオフィサーCITOの高野篤典氏はこう語ります。

「さらなる事業成長を実現するためには、データに基づき事業判断を早める必要があります。しかし、その前提となる製品や人事のマスタデータが統一されておらず、事業判断するための各種データもタイムリーに入手できない状況でした。そのため、標準化を進めてデータ基盤を整備することにしました」

資生堂が推進する「FOCUS」の全体像 ※1

 

こうしたなかで、同社は2023年までの中期経営計画「WIN 2023」を発表。高収益構造への転換、スキンビューティーへの注力、成長基盤の再構築に取り組んでいます。人事戦略では2021年から日本国内の管理職・総合職にジョブ型人事制度を導入。グローバルでは、グループ全体の適材適所な人材配置と、戦略的タレントを育成するためのマネジメントを加速させています。根本にあるのは経営の柱である「PEOPLE FIRST」です。

「PEOPLE FIRSTとは、最大の資産は人であるという思想のもと、すべての社員が潜在能力を発揮できる環境整備に重点投資をしていく考え方です。個人や組織の力を引き上げ、その価値を顧客に提供できる人材をフェアに評価することに意義があります」と人事部 HRビジネスサービス室 室長(取材当時)の田村浩之氏は語ります。

中期経営計画「WIN 2023」のロードマップ ※2

 

グローバル人事データベース「MIRAI」を各リージョンの状況を踏まえつつ導入

同社のこのような人事戦略には、2014年~2020年の中長期戦略「VISION 2020」が背景にあります。同社代表取締役の魚谷雅彦氏が就任した2014年を契機に、体制構築、業務改善、人材育成にかかわる以下の3つの重点課題を策定。前述のマトリクス型経営体制への移行をはじめとする経営基盤の再構築が行われたのです。

中長期戦略「VISION 2020」で策定した3つの重点課題 ※3

 

しかし、そこで問題になったのがグローバルにおける人事システムの課題です。当時の人事システムは各国法人が持ち、本社(HQ)に対して半期または四半期に1回程度、人事情報の共有を図っていました。一方で、グローバルでの人材データベースを持っておらず、人材情報が必要となると、メールやExcelなどの人海戦術でその都度対応しなければならない状況でした。データを集積しても定義が不統一で信頼性が低く、社員の経験、スキル、パフォーマンスが可視化されていないため、比較も容易ではありませんでした。

「これではグローバルで組織横断的な施策をスピーディに実行できません。当時、地域本社からもガバナンス強化に向けたシステム統合の要請が出ていたこともあり、グローバル人事システムの導入を決断。「MIRAI」と名付けたそのシステムの根幹をなすソリューションには、グローバルでの採用実績と機能別に段階導入が可能であることを評価し、SAP SuccessFactorsを採用したのです」(田村氏)

こうして始動したグローバル人事システムMIRAI導入プロジェクトですが、導入を推進するにあたり、どのような方針が立てられていたのでしょうか。プロジェクトコアメンバーを務めている人事部 HR Operations Standardization & Digitalization Group(取材当時)の三品孝太氏は語ります。

「MIRAIはグローバル1インスタンス、各地域本社に、SAP SuccessFactorsが提供しているほぼ全てのモジュール(コア人事+タレントマネジメント)を展開という大方針で導入をはじめました。目指すべきゴールとしての共通認識は、全モジュール導入という方針をもっていますが、実際にはリージョンごとの人事体制やローカルシステムの状況や必要性なども考慮して、フレキシビリティをもって導入範囲や定義・設定内容を決めており、HQだけでなく各リージョンでもしっかり活用してもらえるように導入してきました」

 

各国のベストプラクティスを取り入れながら、資生堂のあるべき姿をSAPと共有

プロジェクトを推進するうえで最も苦労したのはHQとしてあるべき姿の方針を出すことでした。

「人事の場合、欧米のほうが進んでいることもあって、強いディレクションが難しい。そこで、HQの考えを無理強いせずに各国のベストプラクティスをハーモナイズすることに注力しました。このやり方だとスピードはどうしても遅くなってしまうのですが、納得度は格段に上がったと思います」(田村氏)

さらに、データのセッティングでは細かい調整が必要であったといいます。肩書きや社員区分なども各地域で差異があったためです。こうしたデータの統一については各国からカウンタープロポーザルを得たうえで、地域本社のHR担当が集まるミーティングで方向性を決めていき、コンフリクトが生まれにくくしたといいます。プロジェクトではSAPと密に連携しながら進めていきました。コミュニケーションにおいて心がけていたのは、資生堂のあるべき姿をSAPと共有することでした。

「このような進め方であればSAPから最適な提案を常に得ることができると考えていました。ERPはいわば既製服のようなものですが、互いの意思疎通が噛み合っていなければ、上手く着こなせないものです」(田村氏)

さらに、プロジェクトの成功のポイントについて、高野氏は次のように語ります。

「ステアリングコミッティで進捗確認を適宜行えたことで、お互いがプロジェクトの成功にコミットできました。また、トラブル時はSAPの開発部隊が直接支援に来てくれ、おかげで短期間に解決、スムーズに導入できたのは本当に有り難かったですね」

 

MIRAIプロジェクトの概要

 

人事情報の統合管理を実現し、タレントマネジメントを加速化

現在、同社は6つの地域本社で約44,000名の人事情報をSAP SuccessFactorsで管理しています。必要な標準化の特定やオペレーション工数の効率化など、カットオーバー後も最適化は続いています。しかし、人事情報の統合管理により、エグゼクティブや地域本社のトップがスピーディに意思決定できる基盤が整ったことで、確かな手ごたえを感じています。

「今後は採用管理の機能を利用して、例えば日本で働きたい人材を欧州から採用するなど、多様な人材採用が加速する可能性があります。採用した人材に対しても、目標・評価管理の機能でパフォーマンス管理の最適化や、後継者管理の機能でハイパフォーマンス人材の発掘が容易になることを期待しています。パフォーマンスマネジメントは2021年1月から開始しており、フェアな比較が実現すればより適材適所が進むでしょう。タレントレビューはグローバルレベルかつファンクション軸でも行い、タレントマネジメントを加速していくことができると考えています」(田村氏)

ダッシュボード機能のSAP Analytics Cloudを導入し、経営層やマネジメント層がタイムリーにグローバル人事のKPIを可視化することも予定しています。将来的には、約44,000名分のパフォーマンスデータや就労データなどを活用して、モチベーション管理や離職防止などを実現し、全体の生産性向上につなげていく方針です。

「MIRAIはシステム刷新だけでなく働き方改革や業務プロセス変革まで含むもので、いわば“チェンジマネジメント”です。2023年末までをターゲットにコロナ禍で落ち込んだ業績のV時回復と変革を同時に成し遂げるためにはSAPの支援が必要不可欠。今後もSAPの先進的なサービスを取り入れて変革を推進していきます」(高野氏)

データ基盤整備からデータの利活用へ。データを人材力そして経営力の向上へと変換し、次なる飛躍を図る同社を、SAPジャパンは今後とも支援して参ります。

 

 

出典
※1、3 資生堂ホームページ「WIN 2023 and Beyond
※2 資生堂ホームページ 中長期経営戦略

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