西武ホールディングス 取締役専務執行役員 高橋薫氏(右)と
コンカー 代表取締役社長 三村真宗(左)
鉄道、バス、ホテル・レジャー、不動産、球団運営など多岐わたる事業を展開する株式会社西武ホールディングス。同社は2021年5月13日に「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」(以下、中期経営計画)を策定。「『アフターコロナの社会における目指す姿』を見据え、コロナショックを乗り越え、飛躍への道筋をつける。」をテーマに、グループ全体の経営改革に取り組んでいます。SAP Japan Customer Award 2021 で「SAP Concur部門」を受賞した同社がグループ一丸となって取り組む、SAP® Concur®を活用した”デジタル経営×業務改革” についてお聞きしました。
新型コロナウイルス感染拡大による価値変容に対応するため、デジタル経営を推進
2014年4月の東証一部への株式上場後、西武グループは「でかける人をほほえむ人へ。」のスローガンのもと様々な戦略・施策によりおでかけ需要・インバウンド需要を適切に捉え、順調に成長を続けてきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、生活様式や社会の価値観が激変。西武グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。同グループではアフターコロナにおいても事業環境は従前に戻ることはなく、環境変化はこれまでにも増して急激に進むと想定しています。
こうしたなか、同社グループでは、環境変化への対応力を高めていくことを重要な経営課題と捉え、いかなる事業環境下においても企業価値、株主価値の極大化を果たせるように企業体質の強化を進めています。具体的には「経営改革」「デジタル経営」「サステナビリティ」の3本の柱があります。
「経営改革」についてはアセットライトやグループ内組織再編を進め、機動的な組織のもと、高い競争力を持ち価値を提供できる事業への変容を進めています。「デジタル経営」については“守りのDX”に加え、グループマーケティング基盤の構築など、“攻めのDX”も推進しています。西武ホールディングス取締役専務執行役員の高橋薫氏は次のように説明します。
「デジタルの活用による価値創造は固定費削減や働き方改革の推進だけでなく、データの活用によるサービス改革による顧客価値創造など、社内外の両面にわたるため、“攻め”と“守り”の両面で推進しています」
「サステナビリティ」については、グループ全社において持続的な成長を遂げるために、社会課題・当社の事業環境等を踏まえて、当社が特に取り組むべき4領域(安全、環境、社会、会社文化)、12アジェンダ(重要テーマ)を設定し、アジェンダに沿った取り組みを「サステナビリティアクション」として、積極的に推進しています。
「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」のテーマ・取り組み
コンカーの標準機能を活かしてゼロベースで経費精算業務を抜本的に改革する
西武グループは中期経営計画の取り組みに含まれる経営基盤強化の一環で、経理全体の業務改革プロジェクトを推進しています。こうしたなか、“守りのDX”のはじめの一手として、経費精算のデジタル化に伴うプロジェクトが2020年1月に始まりました。なぜ経費精算だったのでしょうか。西武ホールディングス経理部ゼネラルマネージャーの石田尚子氏がその理由を話します。
「経費精算は全従業員に関わる身近な業務だからです。DXやデジタル化は、お題目として唱えているだけではなかなかピンときません。スピード感を持ってかつ全社員に身近に体験してもらうことでDXの一旦を感覚として掴んでもらえるのではないか、さらに、従業員の意識改革につなげられるのではとの願いからです。従業員の意識が変わることで、グループ業務全般の抜本的な改革、国内グループ会社の業務標準化へ歩みを加速することができるのではないかと考えています」
プロジェクト推進では信頼できるパートナーの選定が必要です。こうしたなか、複数のベンダーにRFP(提案依頼書)を提出し、検討を重ねた結果、SAP Concurを選択します。
「コンカー社の提唱する間接費改革と西武グループの改革の方向性が一致したからです。SAP Concurというツールの使い方ではなく、バリューアップに向けたソリューションとして提案してくださり、グループ各社への導入においては複数拠点という高いハードルに対して、豊富な実績を持っていらっしゃることも選択の後押しになりました」(石田氏)
しかし、経費精算のデジタル化には大きな壁が立ちはだかっていました。それはグループ各社が、それぞれの業務ルールや業務システムの使い方で業務を行っていたことです。出張承認だけでも、その業務プロセスは会社ごとに大きく異なっていました。そのような状況を打破するため、「業務にシステムを合わせるのではなく、システムに業務を合わせていく」ことを選びました。
「テクノロジーが急速に進展するなかで従来の運用のままでは、時代の変化に対応できません。そこで“SAP Concur”を取り入れることを決断しました。コンカー社は継続してテクノロジーに投資し、時代の変化を先取りしているような印象を持っています。つまり、システムとともに私たちも進化していけるのではとの期待を持っています。プロジェクトはこれまでの発想を大きく転換し、今までの仕事のやり方にとらわれずに、ゼロベースで業務改革を行うことを意識しました」(石田氏)
「従業員の笑顔を作る」という大義とコンカーの支援でスピーディに推進
西武グループ全体の業務改革を行う大規模プロジェクトでは、さまざまな困難をクリアする必要がありました。西武グループにおける最大の難所は、部門最適、個社最適をいかに超えていくかということでした。
「グループ全体の改革ですから、プロジェクトを一枚岩で推進するための意思統一が最も大変でした。改革となると“反対ではないが、今は困っていない”という話が出てきてしまうものです。そのようなときに、最も重要になってくるのが『大義』です。意見の相違があっても、大義があれば対話が可能になる一方で、それがなければ話がこじれてしまう。プロジェクトの大義は“社員の笑顔を作る”。このプロジェクトは社員の笑顔を作るために行っているということを、いつも確認していました。そして、関係者全員が話し合える場をいかに作っていくかがポイントとなります。ステアリングコミッティを組成し舵取り役を担ってもらいました」(石田氏)
体制の違いによる改革効果への影響
2020年12月の本稼働に至るまでには、途中で新型コロナウイルス感染拡大への対応による中断を挟んだものの、プロジェクト自体はスムーズに進行しました。実質的には導入決定から9か月で稼働を開始させています。
「グループ各社が業務変更等の必要な準備を行う時間を設けながら、トラブルなく進めています。コンカー社にも手厚くご支援いただきました。プロジェクト開始当初に、先人の知恵を学ぶ機会として、私たちに他社への訪問をコーディネートしてくださり、利用者の生の声に触れることもできました。また、プロジェクトを進めているとどうしても保守的になりやすくなりますが、そのような場合でも専門家の方々の助言をタイムリーに提供いただき、プロジェクトを進化させながら推進することができております」(石田氏)
西武グループでは2022年2月までに、国内グループ企業45社のうち33社が稼働を予定しています。現在は導入の最中ですが、作業時間の6割削減など計画通りの効果を見込んでいます。経理の現場ではデジタル化によって効率化とスピーディな確認がなされたほか、紙による都度確認から全データをもとにした事後の俯瞰的確認へと業務が大きく変わっています。
「経理知識を必要とせずに経費精算が可能になったことや隙間時間の有効活用による付加価値創造のための時間創出のほか、紙媒体での捺印リレーの解消も効果と言えます。また、電子帳簿保存法などの法改正にスピーディに対応できる安心感も得られました」(石田氏)
令和2年度税制改正での変化
経費精算はさらなる進化へ。SAP Concurは西武グループのDX戦略推進の先駆けに
経費精算のデジタル化による従業員の意識改革。石田氏は「経費精算を通して“デジタル化ってこういうことなのか”の感覚を持ってもらえたのではないかと思います。デジタル化は仕事のあり方さえをも変えるものだと多くの従業員が感じ取ってくれているのではないか」と話し、経費精算という“閉じた”世界に留まらない、今後のさらなるデジタル化への進展に期待を寄せます。
西武グループでは、SAP Concurによる経費精算業務の工数削減、すなわち「入力レス」「承認レス」「精査レス」に向けさらに進化しようとしています。今後の課題は蓄積されたデータをどのように利活用していくか。石田氏は「データ分析のスペシャリストをこの領域の業務について自社に抱えるのは現実的ではありません。分析の仕方についてコンカーから助言をもらい、運用していくのが望ましい」と話します。
最後にSAP Concurを活用した今後の経営について、高橋氏が語ります。
「コンカーにはぜひ弊社の目指す方向に共感いただき、ともにその実現を果たすための連携をお願いしたいと考えています。また、SAP Concurを経営改革、DX戦略の先駆けとしてグループに定着させるための支援も期待したいですね。グループの目指す姿である“最良、最強の生活応援グループ”となるために、時代を先取りするためのサービスをともに生み出していきたい」
“社員の笑顔を作る”という大義のもと、西武グループ一丸で取り組む業務改革は、今後もさらなる進化を続けていきます。SAPジャパンおよびコンカーは、西武グループのDXを起点とする新たな価値創造に向けた取り組みに、これからも惜しみない支援を提供してまいります。
出典
※ 西武ホールディングス ホームページ 経営方針・戦略の「対処すべき課題」