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さて、この連載企画も終盤に差し掛かってきました。今回は、連結処理編ということで、実際の連結処理の流れにあわせ、外貨換算や内部取引消去、資本連結についてご紹介させて頂こうと思います。いずれも連結処理を実行することで自動的に連結調整仕訳が作成されるというもので、やや地味なプロセスではありますが、SAP S/4HANA for Group Reporting(以降、Group Reporting)の特長的なところを中心にご案内させて頂きます。

SAP S/4HANA for Group Reporting 連載企画(全5回アジェンダ)
第1回:製品コンセプトと特長編
第2回:内部取引照合編
第3回:データ収集編
第4回:連結処理編 ※外貨換算、内部取引消去、資本連結など ← 本ブログ
第5回:管理連結とレポーティング編 ※複数通貨連結、計画連結、セグメント連結など

今回のアジェンダは下記の通りです。最後までお読み頂ければ幸いです。
1.外貨換算処理
2.内部取引消去
3.棚卸未実現損益消去
4.資本連結

1.外貨換算処理

連結データ収集及び各種データの整合性チェック後、最初に行われるのが、外貨換算処理になります。Group Reportingでは、個社からの連結データがローカル通貨でも連結通貨でも、どちらでも対応できるようになっています。単体の会計データテーブル(ACDOCA)から仕訳帳リリースする場合には、後続処理としてローカル通貨から外貨換算が行われます。SAP S/4HANA for Group Reporting Data Collection(以降、GRDC)からマニュアル入力する場合は、ローカル通貨、連結通貨のどちらでも入力することができます。基本的にはローカル通貨での入力の方が、子会社側で換算計算をしなくて良い分、入力作業を軽減することができますし、本社側にてシミュレーションレートを使った連結処理も行えるといったメリットもあります。
また、Group Reportingでは、外貨換算する際のレートタイプ(実績レートや予算レート、シミュレーションレートなど)を連結バージョンごとに指定することができるようになっています。例えば、制度連結目的では、定められたレート(PL科目なら期中平均、BS科目なら期末日など)を利用した換算処理を行う一方、管理連結では制度とは異なるレート(予算レートやシミュレーションレートなど)を使った換算処理を行うといった対応が可能になっています。また、設定の仕方によっては、複数のシミュレーションレートや通貨を利用し、1度の連結処理実行で、まとめて複数レートや複数通貨での連結結果を得ることも可能です。この機能は、パターン別に実行処理を必要とする従来型の連結システムに比べて、使いやすさが格段に上がっている点になると思います。

2.内部取引消去処理

外貨換算後、次のステップは、内部取引消去になります。連結処理の中では、グループ間取引の違算などの調査に工数が掛かることから、面倒な処理プロセスの1つとなります。この内部取引消去を効率化するための手段につきましては、第2回の内部取引照合編でご紹介しましたように、期中(月中)における内部取引照合がポイントになります。詳細につきましては、第2回ブログをご参照頂ければ幸いです。

ここでは、連結処理内で行われる内部取引消去にフォーカスしてご説明させて頂きます。まず、Group Reportingでは、大きく2種類の内部取引消去方法を提供しています。1つは、伝票上の相手先情報を売り側、買い側で照合し、消去するというものです。債権債務の消去であれば、債権データ側の相手先情報、債務データ側の相手先情報を利用して金額を照合し、消去データを作成します。この場合、グループ間取引で記帳される伝票がお互いに正しく計上されていることが重要ポイントとなります。また、Group Reporting特有の機能として、期中(月中)における内部取引照合を実施しておくことで、消去時に違算が生じた際、その内容を容易に分析することができるようになっています。例えば、売掛金と買掛金に50円の違算がある場合、この50円の内、元々計上されている取引金額の差異によるものがいくらなのか、また、外貨換算の影響によるものがいくらなのかを識別することが可能です。これは、内部取引照合時に違算内容について理由コードを付けて保存しておくことで、その内容が内部取引消去処理に自動的に引き継がれるようになっているためです。このように、生じた違算の内容を素早く確認できるため、原因調査に掛かる労力の削減に繋がります。
もう1つは、この方法を内部取引消去というべきかどうかの議論はありますが、片側消去(内部的には組替機能を利用)という方法になります。前述の消去方法とは異なり、相手先情報を持つ売上や仕入といったデータを元に、相手側の伝票起票に関わらず、自社と相手側の消去仕訳を計上するという方法です。この方法は、実際にグループ間取引が相互に正しく記帳されているかどうかを前提としないため、一般的には、管理連結など必ずしも正確なプロセスを踏む必要のない処理に利用されます。管理連結は精度よりもスピードを重視する傾向が強いため、このようなケースで片側消去の利用は有効となります。また、片側消去は、品目や品目グループの粒度で処理が行えますので、経営管理要件として頻繁に登場する製品別や製品グループ別連結といった要件の実現まで視野に入れることができます。なお、上記にてご紹介しました内部取引消去機能は、仕訳帳リリースの他、ファイルアップロードやGRDCを利用したデータ収集(残高ベースでの収集)でも、同様の処理が可能となっています。

3.棚卸未実現損益消去

次に棚卸未実現損益消去について、ご紹介したいと思います。この機能はS/4HANA OP2021(2021年リリース)にてリリースされた機能となります。こちらも制度連結のみならず、管理連結まで視野に入れた機能が実装されています。棚卸未実現損益消去は、制度連結視点で言えば、ビジネスの形態にもよりますが、会社や事業セグメントレベルにてグループ間取引の利益率や在庫金額を設定し、消去することが多いと思います。一方で管理連結視点では、もう1歩踏み込んだ機能が必要となる場合もあります。例えば、品目グループや品目レベルでの利益率や在庫金額設定による消去などです。もう少し細かな話をすれば、品目や品目グループレベルの利益率や在庫金額が設定されていれば、その値を利用し、設定されていなければ上位階層の事業セグメントや会社レベルの値を利用するといったニーズも良く聞かれます。Group Reportingでは、これらのニーズにしっかりと対応できるようにデザインされています。
 

4.資本連結

そして、最後が資本連結のご紹介です。当たり前のことかも知れませんが、資本連結は概ね制度連結要件として実装されています。資本取引の種類によって自動仕訳生成ロジックが機能化されており、細かな処理ロジックを決めるような複雑な設定をしなくても使えるようになっています。新規取得や取得後の利益按分、追加取得、増減資、合併などなど比較的頻度の多いと思われる資本取引に対応(アクティビティベース)することができます。もちろん、全ての資本取引について自動調整仕訳生成に対応できる訳ではありませんので、必要に応じてマニュアル仕訳(アップロードも可)にて対応することもできるようになっています。なお、投資データ(投資に関する金額と比率情報)は、GRDCからのマニュアル入力の他、ファイルアップロードにも対応しています。

ここまで、外貨換算、内部取引消去、棚卸未実現損益消去、資本連結についてポイントをご紹介させて頂きました。いずれの連結処理でも共通しているのは、制度連結のみならず管理連結まで、しっかりと考慮された仕組みになっているという点です。制度連結、管理連結をどのように両立させるかは、考慮すべきポイントも多く、経営管理上の課題としても取り上げられることがしばしばあります。1つのシステムで制度連結・管理連結を両立できれば、業務の効率化に寄与するだけでなく、数値の正確性の担保やシステムに掛かる費用を削減することにもなります。

最終回となります次号は、その管理連結について具体的に何ができるのか?を ご紹介させて頂きます。Group Reportingならではの仕組みをご紹介しますので、是非ご一読のほどよろしくお願いします。